突然の通達(SIDE 人類至上共和国)
それは唐突に人類至上共和国に「通達」の形で届いた。
親書ではなく通達を送るという事は格下と見なしているのに等しい。
いや、それ以前に国の特使でもない「一般郵便」で議会に届いているのだ。誰も突っ込まないけど。。。
郵便局で配達依頼をしたのは「氏族の女」
その郵便物を準備したのも配達の依頼後にその女の外見を変化させて「にひひ」と笑って消えたのも、もちろんタマである。
人類至上共和国は氏族の長老独裁の国だが、建前上は国家元首のいない、各都市の選挙で選ばれた政治家による議会政治で国を運営していることになっているので、「一般市民」(氏族に限る)からの郵便物を粗雑に扱うことが出来ない。
で、開いてみたら「国に対する通達」が入っていたため、議会を緊急招集(といっても普段会議場で食っちゃ寝生活をしているので招集するまでもないのだが)して会議を開催したと言うわけである。
なんの対策もせずに長老に報告などしたら無能者の烙印を押されるので、無い知恵を絞り合う会議というわけである。
その文書は建国宣言であり、この大陸にオルニダス王国と壮太精霊公国が建国することと、その建国を優一神聖帝国が認証することが書かれ、帝国皇帝と妖精王の公印が押されていた。
「優一神聖帝国??」
共和国の議会は荒れに荒れたが、帝国の名前を聞いた事のある議員は一人もいなかった。
他の大陸がある事は一応国の中枢である彼らは知っていたが、そこに国があるなど誰も思っていなかったのである。
共和国を馬鹿にしたような通達文書であるとはいえ、公印が押された公文書を破り捨てるわけにいかず、とりあえず建国したという2国をどうするかという事に議題が移った。
「壮太精霊公国が大森林内、オルニダス王国が森林を超えた南部の土地全域だと」
「馬鹿馬鹿しい、獣人風情が」
「南部人など奴隷ではないか」
「建国したばかりという事はろくな軍備もあるまい」
「すぐに軍を送って鎮圧すべきだ」
「氏族以外の国など認めない」
「当然だ」
「まずは南部人をすべて徴兵し、水神様のお告げと言って戦わせればよかろう」
水神様とは氏族が崇める神様で、タマが「子供たちのために」水に苦労しないよう水路を巡らせたのを、長老が水神という名前の竜が工作したものだと思い込んだのが始まりである。
人類至上共和国の国旗が青地に白抜きの竜の絵なのは「長老の思い込み」の結果である。
余談だが、この国旗を作る為の研究で共和国にろうけつ染めが普及したと言われている。
竜は、うん、この大陸でも探せばどこかにいるのだろう。
話しはさておき、オルニダスを暗殺して終わるはずが反乱を起こされ、鎮圧する前に他の国を巻き込んで興国されてしまった。
この国を認めるという考えは氏族にはない。
経済でどうこうというような考えも氏族にはない。
氏族にとって役に立たない者は潰すだけである。
氏族以外の人間は極端な話全滅しても痛くはない。
地方のあらゆる重要な役職まで氏族が押さえている。
氏族の会議は「長老様のお気に召すような」戦い方に話題が移って行った。




