朝
もぞもぞと動く気配で目を覚ますと、既に空は明るくなっている。
アラームなしで目が覚めるなど引きこもり時代以来のことだ。
まあ、引きこもり時代は寝落ちが基本だったので、目覚めと言えるのかは疑問だが。
夢を見ず、よく寝たと思える感覚は新鮮だ。
空は明るいが夜明け前のようだ。
この場をそっと離れたゾフィーがくっついていた左肩が少し寒い。
体を少し右にひねると目の前にミケの顔がある。
(うーん、寝顔が可愛いすぎる)
思わずミケの頬に口付けをした。
唇を目標にするにはまだリア充レベルが足りない。
「起きてるだろ」
一瞬ではあったが表情がにやけたような気がしたのでカマをかけてみる。
「はい」
ミケはあっさりと答えて目を開ける。
「あんまりそうやって揶揄うと本当に襲うからな」
勢いで左手をミケの胸に置いてみる。アニメなんかだとビンタが飛んでくる展開だ。
「どうぞ?」
待ってましたとばかりの対応を取られると、逆に困る。
「あら」
ちょうどそこにゾフィーが戻って来た。どこへ行っていたか聞くほど野暮ではない。
「おはようございます、あ、朝食の準備しますね」
そういうとゾフィーは踵を返した。
「ふう」
ミケが起き上がりたそうにしたので手を貸すと
「大丈夫ですよ」
と耳元で囁いた
「大丈夫ですよ、少しくらい乱暴に扱ってもミケは壊れませんから」
そう言うと立ち上がらずに草の上に女の子座りで座った。
確かに女の子を触るのは初めての体験だから、昨日からずっと恐る恐る触っていたと言うのはあるかもしれない。
「昨日」
真面目な表情で伏し目がちにミケが話しかけてくる
「うん?」
「ユーイチは代官がやってる姿みて、ものすごい嫌悪感撒き散らしましたよね」
「やっぱり伝わっていたんだ」
「はい、それで本当に前とは違う人だなって・・・だって前の帝王陛下はもっと酷いことをしていたんですよ」
(おおい、どんだけ鬼畜だったんだよ・・・)
「ミケは帝王陛下にいくら遠ざけられても、気は繋がっているので意識を重ねると陛下がしていることが見えてしまうのです」
「え、待てよ、ミケは生まれた時から繋がってるんだよな」
「はい」
「じゃあ、前の奴は女性にけしからんことをしているところを幼児に見せていたと」
「はい」
「そ、それは災難だったな、ミケ」
「最近では陛下は貴族の女を抱くのに飽きていて、様々なことを奴隷の女に試してよく壊すので、陛下が立ち去った後にその部屋に行って治癒をするのが大変でした」
「そう言うことか」
「はい、ですから優しくしてくださるのはとても嬉しいんですが、生娘のように扱わなくていいんですよ」
「いや、それは結論が違うだろ」
「結論が?」
「そうだ、前帝王に酷く扱われたので、あなたには優しく扱って欲しいとか、そう言う方向に行くんじゃないか?」
ミケはしばらく目を丸くしていたが
「ユーイチはいい人」と破顔一笑した。




