王の浮気は国のため
■ 西区7番通りBの375にターゲット出現
■ 王の浮気現場です。
□ 西区にお住まいの皆様は、速やかにシェルターへ移動ください。
緊急警報が入り、西区に住む住民達は、訓練通り速やかにシェルターへと移動していった。
そろそろだと覚悟していた住民は、ここ数日は持っている服の中でも気に入っているものを着るようにしていた。
移動に差し支えない程度に、持てるだけのものを身につける。
蘇生魔法で生き返ったところで、助かるのは身一つ。
何を運ぼうと、シェルターに届かないものは、全て消える。
今のこの体でシェルターにたどり着くことが重要なのだ。
「とうとう見つけたわよ! この、浮気者!」
「ま、待て、落ち着け」
「これが落ち着いていられるもんですか! 今度は酒場の踊り子ですって!」
■ あー、王様、まだ住民の移動が完了していません。
■ もう10分はお時間を稼いでください。
□ 住民の皆さんは、速やかに移動をお願いします。
□ そこ、そんな大きな荷物は置いていってください。
□ 蘇生魔法で生き返りたいですか?
□ 全裸でさらし者になりますよ。
「人に仕事をさせておいて、自分は昼間っからイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ…」
「誰、この人?」
女が夫の後ろから顔を覗かせる。
「私はこの男の妻です!」
「ええっ、奥様? こんなかわいい奥様がいるなんて、聞いてないわよ!」
■ ナイスフォローです!
■ 王妃様、まんざらでもない様子です。3分は稼げるでしょう。
「い、いや、浮気なんてもんじゃなくて、その、出来心というか」
「出来心で女心をもてあそぶ、そんな男だったの、あなたは! 見損なったわ。私だけじゃないわ、一時でも愛した女の方の心まで傷つけて。女の敵! 人類の敵! 結婚する時は私だけを一生変わらず愛するって、そう言ったくせに。」
「君への愛は変わらない!」
「じゃあ何、あなたには真実の愛が2つも3つも4つも5つも6つも7つも…いーっぱいあるってことなの!」
■ 何か、そっちは変な方向に行ってますが、…避難完了です!
「私はあなただけを思っているのに…」
「リズ…」
■ そこ、手を伸ばしちゃ駄目です。王様、我慢!
女はしなを作って、男にすり寄り、助けを求める振りをしながら、妻を名乗る乱入者をちらっと見て、にやりと笑った。
「…何、手を繋いじゃってるのよ。見せつけ? 私への愛が偽物だったってこと?」
「奥様に睨まれたぁ! 怖いわ、ルディ」
「…ルディ?」
乱入者が夫と女を睨む。
ピクピクとまぶたを痙攣させ、全身が怒りでわなわなと震える。
「私だけなのに…」
体から発せられる黄色いオーラが、炎のように燃え上がり、広がり、天へと向かう。
「ルディって呼べるのは、私だけなのにいぃ!」
放たれた核撃魔法は、西区7番通りBの375を中心に西区一帯を瞬時に破壊した。
残っているのは、中心地にいたエリザベスとルドルフ。浮気相手の踊り子は、生きてはいたが、その衝撃で目を回し、ひっくり返っていた。
西区復興計画は順調だった。
処分すべき廃材はゼロ。
地面をも揺るがす核撃魔法のおかげで、下水を通すのも楽々。
計画的に道を作り、家を建て、住人達には、元の生活に合わせた家が供給される。
国に申請済みの財産は保証される。申請は税ともつながっているので、過大な申請をすれば、その分税も取り立てられる。
不正を行った者は直ちに処罰され、強制労働に向かわされた。何せ仕事は山ほどある。
西区にあった犯罪組織のアジトも、待避中に証拠が押さえられ、あの核撃魔法で壊滅されている。
何もかも、予定通りに…
「街の復興は順調でございます」
「ああ…」
王はタイを緩めながら、ソファに寝転んだ。
「あの後、3ヶ月も口きいてくれなかったんだぞ。俺は無実だってんのに」
「これも、国の安寧のため。王は王妃に愛されておりますからな、怪我もなくすんでいるではありませんか。踊り子役のアレンなど、3日間起き上がれませんでしたぞ」
「ふん、誰がアレンが化けた女と浮気するってんだ。気色の悪い…」
「次の浮気は7年後、南区東側を予定しております。それまでの間、エリザベス様と仲良くお過ごしください」
「…ホントに浮気してやろうかな」
「王が、かように命知らずであったとは。おおお。是非、7年後こそ、自力でよろしくお願いいたしますね」
「もう、やだー」




