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「エルフの文化ってわからんちんだわ」

「『ナイルの瞳』?」


 ゾルゴの話を要約するとこういうことになる。


「青いブローチ状の青い宝石で、この街に運ばれた事は<物品探査魔術ロケーション>で確定してるんだって。おおよその位置も霊体化したミイラが街中に侵入して探ってるとか」

「そこまでわかってて、なんで持っていかなかったんだ、そのミイラ?」

「場所が天空神の神殿で、聖結界が張られてて近づけなかったんだって」

「あーね。あーしもあそこにいくとぴえんになるし」


 生まれが地獄であるクーにとって、神殿に張られている魔を退ける結界は気持ちがいいものではないようだ。


「情けねぇな、蜘蛛女。根性見せろよ」

「だったらあの日(・・・)ん時にアカチャブタのお腹肉食ってみれ! そんな感覚だから!」

「うぐ……確かにきついな……」


 クーの追及に口元を押さえるネイラ。エリックは敢えて沈黙を決め込んだ。男には分からない領域だ。


「じゃあクーは外で待機かな」

「むー」

「あの建物の中から宝石一個取ってくればいいんだろ? よゆーよゆー」

「……あの、ネイラ? 一応聞くけど、真正面から乗り込んで壁を壊して宝石を奪えばいい、とか考えてる?」


 遠慮がちに問うエリックに、鼻で笑って否定するネイラ。


「バッカだな、大将。最初に予告状を出すのを忘れてるぜ」

「……あ、その後に壁を壊すのね」

「目立つところで高笑いした後で、大声で名乗ってからな!」

「エルフの文化ってわからんちんだわ」

「そういう事はしないで、ね?」


 自信満々のネイラの態度に、エリックとクーは頭を抱えた。駄目だ、このパワーエルフ。


「ま、大将にいい策があるって言うんなら乗るぜ」

「策……まあ神殿の中に入るのは簡単なんだよね。場所も分かっているからそこまではいける。問題は、どう盗んでどうバレないように逃げるかなんだけど……。

 とにかくここで考えててもらちが明かないし、下見に行こうか」


 情報なしで動くことはできない。三人は天空神の神殿に向かって歩いていく。


「う……。こっからはきつーい」

「あ。じゃあここからは僕らだけでいくから」


 天空神の神殿入り口で眩暈を起こしたようにふらつくクー。そう言えば前も神殿に来た時にこの辺りで別れたっけ、とそんなことを思うエリック。ゾルゴの情報を思い出しながら神殿の中に入っていく。


「ゾルゴさんが言っていたのはこの上らしいけど……」


 階段の前で止まるエリックとネイラ。階段の上にある部屋。そこに『ナイルの瞳』がある。だがその階段には『関係者以外立ち入り禁止』と書かれていた。一般人が入れるのは、ここまでのようだ。


「ここからは強行突破ってわけだ! 突撃ィ! 開始っ!」

「そんなことないから。帰るよ、ネイラ」


 大声を出すネイラの背中を押すように、エリックが神殿の入り口に誘導する。周りの人間は何事かと注目するが、特に何もないことが分かるとすぐに興味を失ったかのように視線を戻していく。


「……んで、首尾は?」

「ばっちり。ネイラが周りの気を引いてくれたくれたおかげだよ」


 神殿入り口あたりで小声でやり取りするネイラとエリック。ネイラが大声を出して注目されている間に、エリックは<感覚共有シェアセンス>と<命令オーダー>した蜂を階上に飛ばしていたのだ。


「しっかし便利だよなー。こういう情報戦は大将のスキルがあれば勝ち確だぜ!」

「……おかげで、盗難とかがあると僕が真っ先に疑われるんだけどね……。見知らぬ女性からいきなり『着替えを覗かれた!』とかまで言われるし……」

「…………あー」


 ヤベェ、褒めたつもりだけど地雷踏んだ。ネイラはどうしたものかと頬をかいた。


「大将がそんなことする男じゃないって言うのは、オレの蜘蛛女も分かってるって!

 ……いや待て。それだとオレの裸に覗く価値がないってことか!? どういうことだ!」

「逆ギレされても!? いや、空気変えようとしてるのは解るけど!」

「んだよバレバレか面白くねぇ。

 でもいい機会だし聞いてみっか。オレの裸はどうだ。魅力的か?」

「少なくとも、神殿の敷地内で喋れることじゃないって言うか……」

「ってことは、意識はしてるってことか。よーし、ならOKだ」

「……まー、部屋狭いんで。その」


 ネイラとほぼ毎日添い寝状態で、意識するなと言うのが無理な話だ。

 健康的な足。弾力のある胸。エルフの名に恥じないすらりとした体系。それが薄い寝間着一枚ごしに隣にあるのだ。エリックは悶々とした気持ちを何とか振り払う。今はそういう状況じゃない。

 エリックが<命令オーダー>した蜂は神殿内を飛び、目的の部屋の前までたどり着く。採光用の窓か風通口を探すが、それらしい場所が見当たらない。人が仕事をする部屋ではなく、物品を保存する区域のようだ。


「誰かが扉を開けるのを――ねえ、ネイラ。悪魔って地獄から来たんだよね?」

「なんだ、いきなり? んなの常識だろうが」

「じゃあ、神殿の結界内に悪魔がいるって言うのはありえないよね?」


 ため息を一つついて、ネイラは呆れた口調で説明する。


「たりめぇだろうが。十二神と七欲邪神は対立しているんだ。

 十二神から加護を与えられたのが勇者ブレイブで、それに対抗するために邪神が自分自身を裂いて生み出したのが悪魔。あいつ等は現世界に関われない神と邪神のコマなんだよ。

 神の結界は悪魔とか地獄の住人を感知するか害を与えるし、邪神の結界は勇者や人族を弱らせるか欲望を増幅させるのさ。互いの領域を守るためにな」


 クーがいたら『のーきんなのになんでこういう知識あんの? 変なもん食べた?』と言いそうだな、と想像するエリック。まあそれはともかく、蜂が見た事を正確に伝えた。


「……神殿の中にエンプーサがいる」

「はあああああああああ!? うっそだろ、お前!」


 エリックの報告に、ネイラは演技ではない大声をあげていた。

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