「お前のジョブは『蟲使いだ』」
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
そう言われた次の日から、家族からは無視された。
役立たずだと口にはしないが、明らかに避けられるようになった。
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
村の人達は、陰口を叩くようになった。
最初は隠れて、そして少しずつ見えるような場所で。
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
その事実はエリックの生活に少しずつ浸透していた。
いや、それも間違い。その宣言と同時にエリックの社会的な部分に致命的な毒が盛り込まれていた。
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
ジョブとは烙印だ。
その人間がどういう仕事をするか。どういう人生を送るか。それを決定づけるものだ。文字通り、エーテルと言う形で魂に刻まれた印なのだ。
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
エリックはそこから逃げる事はできない。世界そのものがエリックと言う存在を卑下しているのだ。
ここでエリックが世界を呪って復讐しようとしたのなら、彼は稀代の人災となっただろう。『蟲の魔王』となって世界を揺るがし、勇者に討伐されるまで世界を壊す災厄となっていたかもしれない。
だが――
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
エリックはそうしなかった。
世界に役立つジョブを持つ者達を妬み、自分を苦しめる世界を恨まなかった。
世界に役立つジョブを持つ者達を称え、自分を苦しめる世界を肯定した。
自分は蟲使いだから。
だから当然なのだと下を向いた。
ああ、しょうがないか、と小さく笑った。
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
決定的だったのは、帰ってきたときに部屋のものがすべて捨てられていた時だった。
親は何も言わず、兄弟は冷ややかな目でこちらを見る。もうここはお前の家ではないのだと無言で告げていた。
エリックは怒るでもなく、抗議するのでもなく。
ああ、しょうがないか、と笑って長年住んでいた家に背を向けた。
農家である長兄の、これで食い扶持が減ったというセリフが背中に突き刺さる。
この日、エリックの姓は空白となった。
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
エリックは村を離れ、オータムの街に流れ着く。街の外壁の隙間を寝床にし、浮浪者としてそこにいつく。
皮肉なことに、エリックを助けたのは蟲使いのスキルだ。虫の感覚を駆使して水と食料を確保し、飢えを凌いでいた。他の浮浪者に奪われないようにひっそりと生き、地面を見ながら生きていた。
「お前のジョブは『蟲使いだ』」
それはエリックの人生を決定づけた言葉。
あの日の言葉が、今も耳に残って離れない――




