再試験だとめんどくさい
「夜分遅くに申し訳ない。君の処遇が決定したのでお邪魔させて貰った」
夜遅く、宿屋にギルマスが訪れてきた。
「本当ならもっと早く伝えたかったのだがな、幹部会にやはり手間取ってな」
やれやれ。異世界でも効率の悪い会議というものはつきものらしい。こういったことの何が厄介かって、大体迷惑がかかるのはいつも他人だということだ。
「まあ過ぎたことはいい。結果はどうなった」
「結論から言うと、君のランクを決定するにあたって、もう一度試験をさせて貰いたいということになった」
またやるのか? そんな面倒くさい……
「気を悪くしないでほしい。単刀直入に聞かせて貰うが、君は今日の試験、本気を出していたのかい?」
「出していたらどうなっていたと思う?」
そう聞いてきたギルマスにそう聞き返す。
「次に私の首が飛んだか腕が飛んだか、どちらでしょうな」
ギルマスは静かに答えた。
「ここが次の試験会場ということか」
「そういうことだ」
翌日、俺が連れてこられたのは郊外の森の中だった。
「さて、ここに金属質な樹があるだろう」
「これを斬れと?」
「ああ。鉄で出来ている樹だ。それも相当な大木だぞ。当然仲が腐ってないのは確認済みだ。相手にとって不足はないだろう?」
「そうだな」
やおらに剣を抜き、斬りつけてみる。
うーむ。案外斬りやすかったな。案の定幹が二つに割れて滑り落ちた。
「……仕事が早いな」
ギルマスが呆れ果てて答える。
「嘘だろ……幅数十メートルはあろう幹を……」
「俺、枝がやっとだぞ……」
「断面見ろよ……摩擦で溶けてるぜ……」
「流石龍覇さんです……」
やっぱり同席してるリネアと幹部連中も呆れ顔だ。
「朝早くから悪かった。明朝改めて伺わせて貰おう」
ギルマスがそう言ってその日はお開きになった。
そして翌朝宣言通り訪れてきたギルマスから告げられたのは驚きの一言だった。
「八咫神龍覇君。君のランクがランク外に決定されただ」