表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武神彼氏  作者: wawon_novel
もういちど神様は恋に堕ちる
40/42

40*最初の神と神の最期

……もっと早く、会えばよかった。

***

 大和盆地は、昔は盆地湖。今は葦原が広がる。初瀬川が大和盆地に流れる飛鳥川、葛城川、竜田川、富雄川などと合わさって大和川となる。生駒山地と金剛山地の間を通り、河内平野を流れる。河内平野も、昔は河内湖、更に昔は河内湾であった。

 大和盆地の中央にある飛鳥の真神ノ原。

 身丈以上の葦原を分け進む2つの影が会う。たがいに頭を下げる。

『前も会いましたよね。あ、ワタクシはナモチと言います』

『ワタシはクリヒコと言います』

『クリヒコ様はどちらへ行かれるのですか』

 ナモチは周囲の葦を折り、話し合える空間を作る。クリヒコが折られた葦を踏みつける。

『ヨシノを抜け、クマノの山を登ります』

『もしかして修練ですか。ワタクシもクマノです。山は登らず、アリマですが』

 ナモチは頭を掻く。

『登らないというのは?』

『この地面の下に根ノ国があり、アリマに入口があります。スサノヲ様がいられます』

『スサノヲ様というと熊野大神様ですよね。なぜ、熊野大神様が地面の下に居られるのですか。なぜ、ナモチ様は熊野大神に修練を習うのですか』

『あ、あの、ああ、いや……色々とありまして。クリヒコ様はだれに習うのですか?』

『……ワタシは、カラス衆のカシラに習います』

『すごいじゃないですか。直々に頭に習うなんて』

 クリヒコは頭を下げる。

『かなり貢いでます。ワタシは族長の長子でありながら、神威を得られてない。病に臥せる父のため、一族のため、早く神威を得なければならないので頼みました』

『クリヒコ様……』

『ワタシも、地面の下に行けませんか。熊野大神様に修練を習えませんか』

『……たぶん難しいと思います』

『なぜ、なぜですか。がんばりますから』

『……ワ、ワタクシがクリヒコ様に教えるというのはどうでしょうか。ワタクシがスサノヲ様に習い、テグリ様に教えます』

『申しわけないです。厳しい修練の後に、ワタシに教えるなど。それに父に知られたら、ワタシは怒られます。一族が許しません』

『どうしてですか?』

『アヤ族をまとめる王の子が、神に成ってない人に習うのは王族の誇りが許しません』

『王族の誇り?』

『恥ずかしいですが、中ツ国に逃げてきたアヤ族は、王族であることを誇りに、がんばってきてます。特に長老達が許しません』

『ワタクシの兄神達もワタクシが国主と決まったら、イヅモは任せられないと言ってきました。確かにワタクシは神威も弱く、領地も小さく、兄弟の中で末座です』

『ナモチ様もたいへんですね』

『しかし国主を務めなければなりません。たがいにしがらみの中で生きてますね』

 ナモチとクリヒコは拳を合わせ、笑い合う。風が葦原を揺らす。

『クリヒコ様は修練を学びたい。神威を得たい。父上に喜ばれたい。一族をまとめたい。ならばやはりワタクシが教えます』

『なぜ、ワタシに教えてくれのですか。ワタシとナモチ様は幾度か会っただけ。そして今日、話しただけです』

『充分です。友達になりましょう。友達ならば教えることも、習うことも問題はないでしょう。クリヒコ様は頭に学び、ワタクシはスサノヲ様に学び、色々と話しながら共に修練を積む。自主修練となります。そのほうが早く神威も得られます』

 クリヒコは俯く。そして仰ぎ、ナモチを強い目で見る。

『どうすれば友達になれるのですか』

『なりたかったら、なれます。たがいに友達になりたいと思えば、なれます』


『最近のオオクニは楽しそうですね』

『そう見えますか?』

『はい。バレバレです。早く修練を終えて帰りたそうです』

『そのようなことはありません。ワタクシはタカクラジと修練を積むのが楽しいですよ』

『ということはワタシと修練を積むより楽しいことなんですね。きっと』

『実は想ってる女神がいまして……』

『……そ、そうなんですか』

『どうしのですか?』

『いえ、なんでもないです』

『タカクラジだから言ったのです。言わないでください』

『言いません。だいたいワタシはオオクニ以外に友達はいませんから』

『アヤ族に同じ年齢の男もいるでしょう』

『オオクニは嫌がるでしょうが、アヤ族は上下関係の厳しい一族です。一族にとって王族は従わなければならない。逆に王族にとって一族は守らなければならない。……父上が亡くなり、早くワタシが長にならなければ……』

『ヤマトのアヤ族となりましたね』

『はい、アヤ族はバラバラになりました』


『大丈夫か、オオクニ。傷だらけだぞ』

『大丈夫です。スサノヲ様の修練が厳しくて……』

『急に、だよね』

『戦が起きるかもしれません』

『戦?』

『はい、天ツ神が降りてきます。天ツ神と国ツ神の大戦になります。早く神威を得なければなりません。……タカクラジ、暫く会えないと思います』

『ワタシのことは構わないでくれ。あんなオオクニに修練を学んでるのに、全く神威を得られないワタシは、オオクニの修練の足を引っぱってるようで、申しわけない』

『なに言ってるのですか、友達でしょう。これまで共に教え、学び、励ましてきました。これからも、友達です。ほんの暫くです』

『……わかった……』


 使い烏を飛ばし、根ノ国から中ツ国へと還った日。共に修練を積んだ地にタカクラジは来なかった。オオクニヌシは会えなかった。

 まもなく天ツ軍が降りてくる。明日、イヅモに戻らなければならない。西の軍をコトシロに継がなければならない。アスカに行く時間はない。オオクニヌシは、再び使い烏を飛ばす。


『タクララジ。ワタクシは国ツ軍の、東の軍の軍将となり、タツタに居ます。もし、この報せが届き、まだ、アスカに居るならば会いたいです』


 オオクニヌシがタカクラジと会ったのは、大戦が終わり、国ツ軍が負け、オオクニヌシがトミビコを眠らせるために来た、三輪の国ツ軍の本陣。天ツ軍が勝鬨を上げた処。オオクニヌシは血を流し、倒れてたタカクラジに近づく。


『……もっと、は、早く、……会いたかった……』


 タカクラジがオオクニヌシと会ったのは、強い力と強い心を得るため、イヅメの鬼術で鬼神として甦った、鳥見山の等彌神社。イヅメが国ツ神の祟りを封じる呪術が行われた処。タカクラジは、オオクニヌシとわからない。ただ、惹き寄せられるように近づく。


『……もっと早く、会えばよかった』


 オオクニヌシとタカクラジがやっと会えたのは、香具山の天香山神社。オオクニヌシがタカクラジを祀った処。


『タカクラジ、やっと会えましたね』


『オオクニ、やっと会えたね』


***

「武神彼氏 もうにどと神様と恋に堕ちない」につづく。

日本神話と神社と、神様のラブコメ。謎とき、バトルもあり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ