名も無き猛禽の物語
あるところにおかあさんあひるがいました。おかあさんあひるは、5つのたまごをうみ、そのたまごから、5人姉妹のひよこがうまれました。しかし、1羽だけ、色のちがうひよこがいました。うつくしいきいろの毛をもつ、ほかの姉、妹たちとちがい、このひよこだけは、まっしろのうぶ毛に、いちごのように、まっかな目の色をもっていました。
白いひよこはどこへいっても、くちばしでつつかれ、「あっちへいけっ!」といわれていました。はじめはかばっていた、おかあさんあひるも「ほんとうに、みにくいねぇ。いつか遠くへいってしまえばいいのに」これをきいた白いあひるのこは、遠くへいってしまいます。しかし、どこへいっても、白いあひるのこはきらわれてしまいました。
ある日、白いあひるのこは、はるかひがしのほうからやってきた1羽のわしと出合いましたー・・・
ロシア連邦アフトゥビンスク近郊 タイガ
ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッ・・・
歩いても歩いても、風景は変わらない。それでも私はただひたすら歩いた。周囲には、真っ白な雪に覆われた針葉樹林、タイガが広がっている。そこに私の目指す場所がある。
どれほど歩いたのかな。もう、わからない。でも、確かに近づいている。
歩き続けたその先に、それは静かに佇んでいた。
「・・・遅くなって、ごめんね。」
風もなく、ただ雪が降るだけのタイガで、私の声に返事はない。相手は人間ではない。感情も、意思も存在しない。命さえ、持たないのだ。そんな相手に、私は手向けの花を供える。そうしたかったから、以上の理由はない。
「置いていったりして、ごめんね。ーでも、私はー・・・」
当然、応えてくれるわけがない。それでもいい。
それは、私にとって一番の友達だったから。
「・・・おやすみ、09。大好きだよ」
私は振り向き、その場を後にした。
Su-57、“黒の09”
1年前 ロシア空軍ベルベク空軍基地