懲りない男
懲りない男
今日も今日とて、オレはバイク屋に屯していた。
今日は誰も来ないかなぁ......と考えていると、
声:「こんにちわ〜」
と声が聞こえた。
声の方を見ると、久し振りに見る仲間がそこに立ってた。
オレ:「よぉ〜! 久し振りじゃんか!」
仲間:「ウィッス! お久し振り!」
仲間は右手を挙げながら答えた。
仲間:「やぁ......実は事故っちゃってさぁ......」
オレ:「なぬ?! 大丈夫なんか?!」
仲間:「う〜ん......まぁ、大丈夫って言えば大丈夫なんだが......
まだチョットばかり首が痛いなぁ......」
オレ:「そうか...... で、バイクは?」
仲間:「バイクはもう完全にボロボロだよ......」
オレ:「そうかぁ......」
話によると、信号待ちで停まっている所に後ろから車に突っ込まれたらしい。
運良く自分は殆ど怪我もなく済んだが、後ろから突っ込まれて、横倒しになり、
そのまま車がバイクに乗り上げた為、バイクは完全にダメなんだとか。
オレ:「......それでよく自分が大丈夫だったなぁ......
下手したら自分もバイクと倒れて轢かれてるだろ?」
仲間:「うん、そこは後ろから突っ込まれた時にハンドルから両手を離してて、
チョットオレも倒れかけたんだけれども、運良く......なんだろうなぁ......
まぁ、バイクだけ倒れてオレは突っ込んできた車のボンネットの上に......
という感じなんよ。」
オレ:「そうか......まぁ、一歩間違ってれば死んでたかもしれんし、不幸中の幸いだろうな。」
仲間:「バイクがダメになってしまったのは惜しいけれども、
そう考えるしかないよな、やっぱり......」
オレ:「うん、少なくともオレはそう思うよ。」
仲間:「で......次のバイクなんだけどさぁ......」
オレ:「もう買うんかい!!」
仲間:「だって、バイクが無いと精神的に苦痛なんだもんさ!」
オレ:「まぁ、気持ちは分からなくも無いが.......」
オレだって、1週間バイクに乗らないとイライラが募るからなぁ......
オレ:「でもさぁ......ホントに身体は大丈夫なんか?」
仲間:「うん、平気平気。」
仲間は軽く言い放った。
そのまま、仲間は店員に「次のバイクは......」と相談を始める。
......と、そこで女性がバイク屋に入ってくる。
そして、仲間の方に歩いていき、真後ろに立った所でこう言い放った。
女性:「あなたっ! 居ないと思ったらこんな所に来て〜っ!」
仲間:「かっ.....母ちゃん......」
奥さん:「まだ右肩も左足も骨折が治ってないんだから、我慢しなさいっ!」
仲間:「でもさぁ...... もう我慢の限界なんだよ〜!」
奥さん:「買ったって身体はまだ本調子じゃないんだから乗れないでしょっ!」
仲間:「やっ、あるだけでいいんだよ! あればリハビリの励みになるからさっ!」
奥さん:「......そんな事言って、あれば乗りたくなるに決まってるでしょっ!」
仲間:「うっ......」
バイク屋の店員もオレも沈黙する。
......まだ治ってなかったのか......
店員:「まだ治ってらっしゃらないなら......今はやっぱり......」
仲間:「......ちきしょ〜! あともう少しだったのに〜!」
奥さん:「そんな事言ってないで、帰るわよ! 病院に!」
オレ:「......治ってないだけじゃなく、病院から抜け出したんかいっ!」
仲間:「だってさぁ......病院の中は退屈でさぁ......」
オレ:「でもさぁ.....治るまではちゃんと治療しようぜ......」
奥さん:「もっと言ってやってくださいな〜!
私が言っても聞いてくれないんですからぁ〜!」
奥さんはオレの言葉に同意して、オレに仲間の説得を依頼してきた。
オレ:「やっ......オレもバイク乗りなんで気持ちは分からなくもないんですよ。
もうオレも中毒ですからね〜......」
オレは奥さんにそう告げた後、仲間に向かって、
オレ:「でも、ちゃんと治さないと後々辛いのは確かだぞ?」
と言った。
仲間:「まぁなぁ......ちゃんとバイクに乗れないと逆に辛いもんなぁ......」
オレ:「だな......」
そこで、オレは奥さんに向かって、
オレ:「とりあえず、折角来たんだから、もう少しここで話をしてから帰る位
は構わないですかね?
帰りはオレが送って行きますよ。」
奥さんは、渋りながらも、
奥さん:「......いえ、私も一緒にここに居ます。
30分したら帰りますからね?!」
仲間:「......おう!」
仲間は嬉しそうに奥さんにそう答えると、オレの前の椅子に並んで座わり、
バイク談義を始めた。
奥さん:「ホント.......こんな事故起こしてもまだバイクに乗りたいなんて、
私には信じられません......」
オレ:「まぁ......オレも多分旦那さんと同じですよ。
完全に中毒ですからね。」
仲間:「んだんだ!」
仲間はオレの言葉に頷きながら答えたが、奥さんは少し困り顔で
奥さん:「威張ったってしょうがないでしょ! まったく.......」
と言った。
オレ:「まぁまぁ......
元気だからバイクに乗れる。バイクが好きだから事故は気をつける。
それは旦那さんも良く分かってる事でしょうし、実際、今回の事故
は旦那さんが悪い訳じゃないでしょ?」
奥さん:「それはそうなんですが......」
オレ:「自分が悪くて事故ったならオレもチョットは説教すると思うけど、
そうじゃないものはある意味しょうがないですからねぇ......」
仲間:「そうそう! オレは自分が悪い事故なんか起こした事はないぞ?」
奥さん:「でもねぇ....... ホント、どうしたら懲りてくれるのかしら......」
奥さんの言葉を聞いた仲間は胸を張り、腰に手を当ててこう言い放った。
仲間:「多分ない!」
奥さんはその言葉にすぐさま反応し、
奥さん:「威張らないでっ!」
と仲間に言った。
奥さんも大変だぁ......
まぁ、オレも人の事は言えんけどな。




