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死んだ世界のその中で  作者: 青年A
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死人に口なし

闇に包まれた暗い夜に僕は殺された。

相手の顔は覆われていて分からなかったが目は憎しみと殺気に満ち溢れていた。誰の恨みも買ってないと思ってたのに、どこで過ちを犯してしまったんだろう、などと色々なことを考えてしまう。

人生はあっけなく終わるものだな。

月が儚くも綺麗な夜だった。


人間は死んだら終わりだとか、地獄だ、天国だとかよく言うけれどあれは嘘だ。なにもないのである。

なにもないというか真っ暗な空間にただ浮いてる状態である。

それは、僕の人生が良くも悪くも無かったから

天国へも地獄へも行けなかったということなのだろうか?


昔から、ついていない人間だった。

好きな女の子と付き合えたと思えば、メールを1ヶ月返信するのを忘れて愛想を尽かされたり

キックボクシングを3年間習っていたのに喧嘩で負けてしまうし…

言い出したらきりがないくらい最悪な人生だったが

家族だけは違う

何不自由ない暮らしをして、優しい母、厳格な父、いたずらっ子な妹に囲まれて楽しかった。

「せめて、家族だけには別れの挨拶をしたかったなぁ、死人に口なしとはまさにこの事だな…」

そんな事を思いながら高宮渉は意識を失った…


気がつくと部屋にいた。真っ白な部屋だ、

マンションの1室のようにキッチンや窓などはあるが家具などはなにもない。外を覗いてみると真っ暗だ。


その時、扉から1人の女がけだるそうに入ってきた。

童顔の顔立ちをした彼女は男物のパーカーを着て煙草を吸っていた。


こんな状況でのんびり煙草をふかしている彼女に驚いたが、人がいるという状況に少し安心した。

しかし、彼女が人であるかすら定かでなかった現に僕も死んでいるからだ。椅子に座り外を眺めてる彼女に僕は問いかけた。

「すいません。ここはどこなんですか?」

すると彼女はまるで小動物や可愛いものを見るような表情で僕を見てこう言った。

「お前は死んでいる。」

そんなことは僕にだって嫌というほどわかっている。

聞きたいのはそんな当たり前のことではない。

(こいつ、頭おかしいのか…)

そう思い彼女から離れようとすると

「お前は死んだ…がしかし」


「お前の人生は薄すぎた。これではまだ地獄か天国かすら判断することすら困難だ。よってお前にチャンスをやる」

彼女は続けて話した。

「さてその内容だが、お前を殺した犯人を見つけて殺せ。そうすればお前をいきかえらせてやろう。しかし、できなければ問答無用で地獄だ。やるか?やらないか?どっちだ」


「やる!」

僕は即答した。

「少し遅れたが自己紹介をさせてもらおう。ん〜そうだな。お姉ちゃん、とでも呼んでくれ。」

「はい!…え!?」

あまりの衝撃に僕は言葉を失った。

「冗談だ。美咲と呼んでくれ。よろしくな。」

「高宮渉です。よろしくお願いします。」

神といえば、もっとカタカナの名前だと思っていたが日本名なんだな。

「早速だが、これを付けろ」

美咲に渡されたのはiPodの様なものにイヤホンが付いたものだった。

「人間界とこっちの世界とで話せる国際電話のようなものだ。分からないことや困ったことがあればかけてこい。」

「は…はい。」

こんなものでほんとに通話できるのか不安でしょうがないが言われた通り両耳にイヤホンを付けた。

「で、美咲さん、どーやって人間界に行くんですか?」

「ハハハ、私はこの世界の神だぞ?お前1人くらいすぐにでも飛ばしてやるわ、」

「はい…えっ…えぇえええええ!!」

「なんだ、うるさいなぁ」

「うるさくなるのも当然です!神なんですか?神感0ですけど神なんですか!?」

「失礼な!!れっきとした神だぞ!!」

「は…はぁ…」

この人にはついていけない。

「よし!渉こっちに来い」

「はい。」

美咲さんに近づくと、いきなりキスをされた。

「んっ…」

「んっ…よし!飲み込め!」

状況が飲み込めないがとりあえず言われた通り飲み込んだ。

「渉、目をつぶり、行きたい場所を強く頭の中で念じてみろ」

僕の行きたい場所…か…

やっぱりあそこだな。

目を閉じ強く強く念じていると

イヤホンから「渉、目を開けろ!」という声が聞こえてきた。おそるおそる目を開けるとそこは我が家の自室だった。

「美咲さん!飛ばすってこんな簡単なんですか!?」

「ばか!お前がさっき飲み込んだ私の唾液によってお前は期限付きで神の力を少し得たんだよ。」

「…期限って何日くらいですか?」

「そうだな。人間界で表すと二週間くらいだ。」

「二週間!?少なくないですか?」

「わがままを言うな!私もできる限りサポートしてやるから」

「は…はぁ…」


こうして僕の生き返りに向けた無謀なチャレンジが始まった。

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