女子会②(友人視点)
「あー!!!もうほんっっっと許せない!!!」
悠里が、酔いも手伝ってか、興奮が収まらなくなってきた。
悠里と華は生まれたときからの付き合いで、姉妹のように育ってきたというから、仕方がないことだろうけど。
「はーい、悠里落ち着いて~。ここ一応住宅街だからね?」
「う~……ごめん……我慢できなくなってきて……。」
「気持ちは分かるから大丈夫。」
そう、悠里ほどではないとはいえ、物心つくかつかないかの頃からの大事な親友。
私だって十分怒っているのだ。
「はい、悠里、水飲んでちょっと落ち着こうか。で、夏帆の話聞こ。夏帆だって何かしたんでしょ?」
「だって、腹立ったし。」
「うん、それは分かる。」
「だから、ちょーっと、あの女の散財っぷりを副頭取の耳に入るようにしただけだよ。なーんか、華の話と整合性がとれなかったのよね。経理なんてやってると、職員の給料が丸見えなんだけどさ、貰う金額と明らかに釣り合いとれてないからさ。
もちろん頭取なんだから、世間一般の給料を遥かに超えてるわよ?
でも、頭取のお家って、世田谷の一等地なのね?
しかも受け継いだものとかじゃなくて、自分で建てたもの。
散々自慢してたんだから、こんなの職員全員が知ってるわよ。
まあ、それでも、お家が代々の資産家とか、奥さんの実家が資産家とか、その線かなって思ってた。
でも、華の婚約者だったあのバカ男を取っていったバカ女が、頭取の娘で、ブランド物やらエステやらサロンやら、贅沢三昧してるって聞いて、違和感感じたんだよね。
頭取の給料と暮らしぶりが一致しないんだもん。
ただでさえ、バカ女が迷惑をかけた慰謝料で大変なはずなのに。
でも、だからって、一職員が頭取に何かできる訳ないじゃん?
だから、ダメ元で、頭取派と反発しあっている副頭取派の秘書に世間話で話しただけ。
「私の友達に、頭取のお嬢さんと同じ会社に勤めてる子いるんだけど、頭取のお父さんがいると、毎日エステやらサロンに通ったり、ブランド物買ったりできるんだねー。羨ましいな~。私最近二の腕が気になってさ、エステとか行きたいけど厳しいもんねー。」
ってね。
その程度の話を聞いたからって、その話が副頭取の耳に入る保証もなければ、実際に副頭取が動く保証だってほぼ0じゃん?」
「まあ、そうだよね。」
「でも、今日の新聞に載ってたってことは調べてくれたってこと?」
「……ここからは、トップシークレットだからね?あんたたちだから言うんだから。
もともと、あのバカ女の父親の不正の証拠って、かなり集まってたみたいなのよ。
ただ、細々したものばかりで、どれも逮捕や辞任に追い込むには少し足りなかったみたいなのよ。
もちろん、不正は不正だから公表すべきだし、そしたらかなりのダメージを受けるわ。
でも、そんな奴が万が一ダメージが軽すぎて銀行に居残ることになったら困るでしょ?」
「あー……何だかんだいって、力のある家って、少しぐらいのことだったら揉み消しちゃうことあるもんね。」
「でしょ?
だから、証拠集めに躍起になってたんだって。
今でもまだ足りていなかったみたいなんだけど、三日前に、政治家の献金問題あったじゃない?
あれで世論が、不正は絶対許さないムードになったから、これを機に公表したんだって。
だから、私が何かできたわけじゃないのよ。
ちょっとぐらいは情報の足しにはなったそうだけど。
でも、あのバカ女の家が報いを受けてちょっとすっきりしたわー。
もともと、不正なんてしてた頭取が悪いんだしね?
もちろん、退職金なんかも、不正働いた分と相殺で、むしろマイナスになるぐらいよ!」
「……ちょっと待ってね。頭取が悪いのは同感だけど……夏帆、何でそんな内部情報知ってるの?一行員が知ってるような情報じゃないよね?」
「えっ!?」
思いもよらぬ突っ込みに、顔が真っ赤に染まる。
「その反応は!何かあったね!」
「あったけど……」
「なーにー!…話しにくいこと?」
「……恥ずかしいけど話しにくい訳じゃない。ただ、華も一緒のときでいいかな、と思ってただけで……。あのね……婚約した!……その人って同僚なんだけど、副頭取の息子さんでね……。そこからの情報……。」
「は!?………………おめでとう!!!え!?いきなり何があった!?」
「えっと……あの秘書に話したことがもとで…あからさまだったみたいで、副頭取派に話が通ったみたいでね……最初は牽制のつもりで話しかけてきたみたいなんだけど…話をするうちにいつの間にか……。」
華が残念なことになったから、少し言いづらかったけど、二人とも祝福してくれて嬉しかった。
でも、あんまりつっこまないで~!
恋ばなは聞くのは楽しいけど、話すのは照れくさいんだから~!