女子会①(幼馴染み視点)
「女子会行ってくる~。」
「おー、気を付けてなー。」
お父さんに送り出され、女子会に向かう。
でも、いつもは外で食事会を兼ねた女子会なのに、今日は宅飲み。
さらに、いつも四人でしているのに、今日は華だけ声をかけていない。
ということは、そういうことなんだろう。
「やほ~、夏帆~。場所提供ありがと~。これ、揚げ物類。」
「いらっしゃい。うわ!すごい量!がっつりいくね!」
「だって、女だけで、男の目もないとなったらがっつかなきゃ。」
「ははっ、確かに!まあ、取り合えず上がってよ。友も来てるよ。山ほどお酒持ってきてる。」
「うん、おじゃましまーす。」
「さー、かんぱーい!」
「「かんぱーい!」」
がっつり食べて、がっつり飲んだ。
…そろそろだろう。
気持ちはみんな一緒だったのか、ちろりと上げた目が合う。
「ね?みんな、何かしたんだよね?」
「……まあ、ねえ?」
「悠里だってしたんでしょ?」
「え?私は、お父さんの前で大泣きしちゃっただけだよ。」
「悠里が!?」
「はい、失礼~!あいつの会社との取引って、ほとんど利益なしなの知ってたからさ。それに、華の家との付き合いの方がよっぽど長いし、利益出しあってるし。ネックはあいつの実家だったけど、あいつの両親って、かなりいい人たちで有名だし、実際にかなり激怒してるみたいだったからさ。
こんな状況だったら、もしかしたら親バカのお父さんなら……ってちょっと思っただけ。
友だって何かしたんでしょ?」
そう、泣いてしまったのは不覚だったが、それにより物凄く動揺しているお父さんに、ひょっとしたらの気持ちが沸いたのは仕方がないことだと思う。
「第一、何であの女と華を比べて、あの女をとるのか全く分からない。」
「趣味悪いんじゃない?それか、まさかあの女の評判知らなかったとか?それは流石にないか~。
はっきり言って、頭取の娘で、かつそれなりの美人だったら、28歳になってまで売れ残ってる訳ないじゃん。華みたく、優秀で大学院まで出てたとかならともかくさ。」
「流石に知らなかったはないんじゃない?だって、あんな普通なら必死になって隠すような情報が、私たちみたいなとこまで流れてくるって相当だよ?」
「だよね。まあ、美人は美人だよね。でも華だってきれい系だし。着飾る気0なのが玉に傷だけど。」
「あ~…華、自分に構わないところあるからね。」
「うん。研究さえできればって感じ?」
「そう!そんな華が、わざわざ婚約したからってあの会社に入ったっていうのに!!!大手だけど、総務課だよ!?絶対、研究したかったに決まってるのに!!!華、マサチューセッツ工科大学まで出てるのにだよ!?」
「あ~…結婚っていうことを考えたら、男って、自分より優秀な女、嫌がるのもいるもんね~。」
思い出したら、どんどん腹が立ってきた。
宅飲みなのをいいことに、口調も荒く、ヒートアップしていく。
華の思いを台無しにした男に、怒りしか湧いてこない。
華は、おじ様に似て、研究者気質なところがある。
決して成績が飛び抜けていい訳ではなかったが、好きな分野への情熱はものすごいものがあった。
受験時は流石に、受験要項に合わせて勉強していたようだったが、終わった瞬間、「全部抜け落ちた」って言っていたから。
まあ、それは私もだから余り華のことは言えないのだが。
そうやって、思いっきり好きなことにのめり込んでいた大学生活は非常に楽しそうだった。
たまにスカイプで話していたが、いつも満面の笑みを浮かべていたから。
そんな華も、博士課程まで修了してから、日本に帰ってきた。
てっきり、研究職に就くと思っていたのに、入ったのは、大手とはいえ、普通の会社だった。
婚約者がいる、というのと、一般職に慣れておいて、将来に役立てるためということだった。
中小企業だと、身内で経理だろうが営業だろうがオールマイティーにこなさなくてはいけないので、確かに賢い選択なのかもしれない。
「今まで好き勝手させてもらってたからね。」と笑って受け入れていたのに!!
あー!!!もうあの男、ほんっっっと許せない!!!