華の報復
こんな拙い話に、ブックマーク及び評価ありがとうございます。これからも頑張って書いていきたいと思います。
「華さん、本当に申し訳なかった。」
「いえ……。」
「本当に……あんな息子に育ててしまった私たちの責任です。華さん、申し訳ありません。」
「いえ……本当に愛する人を見つけたのですから仕方がないです。どうぞお幸せに。」
謝りにこられた、義理の両親となる予定だった方たちと別れて歩き出します。
結局、真摯に謝ってくださったのは、お二人だけでした。
隆司さんと愛先輩からは、あのふざけた謝りだけ。
お二人に各方面への謝罪も押し付けたようで、ご両親は謝り通しです。
ご両親に責任があるわけでもなし、素直に謝罪を受け入れました。
なぜこんな真っ当なご両親から、あんな息子さんができたのでしょうか。不思議でなりません。
普通は二人が謝りにくるべきなのですがね。
まあ、あんな謝罪とは言えない代物をもう一度聞かされるのも腹立たしいので、これでよしにしておきましょう。
だって、あんな口だけの謝罪で謝ったことにされるのはもっと腹立たしいですから。
もっと私の身になる形での謝罪が欲しかった私は、婚約者としての権利として、二人に慰謝料請求を行いました。
弁護士である友人が力になってくれて、相場の2倍ぐらいの慰謝料はいただけました。
もちろん結婚式場のキャンセル料は隆司さんもちです。
隆司さんも愛先輩も、貯金をするタイプではありませんので、借金からのスタートは大変でしょう。
ですが、隆司さんは結構なエリートコースを歩んでいるので、お給料もそれ相応のもの。
その上、ご実家は最近急激に力をのばしてこられた会社の経営者一族。
しばらく修行をつんだら、隆司さんもご実家の会社で相応のポストが用意されて、そちらにうつるようです。
愛先輩は一般職での採用でしたので、お給料は普通の額でしょう。
ですが、確かお父様が銀行の頭取のお嬢様。しかも一人娘の愛先輩には非常に甘いそうです。
実際、私たちのお給料では絶対買えないようなハイブランドのものを持っていたり、日常的にエステやサロンに通っていました。
こんな二人ならば、いくら相場の2倍の慰謝料といえども、あっという間に完済してしまうでしょう。
しかし、金銭面だけでなく、愛先輩の職場での立場と居心地はかなり悪くなったはずです。
上司に婚約の報告と結婚式への招待をしていたので、誰もが隆司さんと私の関係を知っていました。
そこへ、隆司さんとの婚約報告をしにきた愛先輩は、すぐに何をしたのか周りにばれてしまったのです。
もともと、男性に人気があっても女性には人気があまりなかった愛先輩ですが、人の婚約者を寝取った女、しかもそれを私の前で上司に報告したことで、かなり評判を落としました。
特に、女性にとっては許せない行為でしたし、男性にとっても幻滅する行為だったようです。
味方がいなくなり、居心地の悪くなった愛先輩は退社しました。
ですが、誰もが私の婚約破棄を知っていて、同情されてしまう環境は私にとっても辛く、私も退職してしまったのです。
その一方で隆司さんは、大したおとがめもなく過ごしていました。
もともと出世コースを歩んでいたことや、男性は女性ほど婚約破棄によるダメージを受けないことなどから、今までとほとんど変わらない待遇を受けていたのです。
もちろん周りから、特に女性からの評価は下がりましたが、会社はなんだかんだいいながらも男性社会。
大した影響は与えられませんでした。
私が払った犠牲とは釣り合わない気がして、ムカムカがまだ収まりません。
ですが、私ができるのも、していいのもここまででしょう。
あとは友人に付き合ってもらって、やけ酒とやけ食いしながら愚痴を聞いてもらって、忘れてしまうしかありません!
婚約までしたのですから、すぐには無理でしょうが、囚われすぎず、次へ進まなくては。
そうと決まれば、付き合ってくれる友人を探しましょう!
えーっと……ラインのグループトークで……
『婚約者と別れました!愚痴を聞いてくれる人募集!』
おっ!もう返信!
みんな優しいなぁ……。
よーし!たくさん飲んで食べて愚痴りまくってやります!
華からの報復はこれで終わりになりますが、まだまだ報復は続いていきます。
もうしばらくお付き合いいただけると幸いです。