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華視点

もしも待ってくださっている方がおりましたら、遅くなり申し訳ありません。

繁忙期に入り、しばらくゆっくりめの更新になるかもしれません。

「華!傷つけてしまってすまなかった。…俺たち、もう一度やり直せないか?」



……は?

1年前まで婚約していた、近堂隆司さんから、どうしても話さなければいけない重要なことがあると呼び出され、渋々出向いた私に掛けられたのは、そんな訳の分からない言葉でした。

なんでこんなことを聞かされなければならないのでしょう。

本当は全く会いたくなかった、というよりも、何故貴重な休日をそんなことに使わなければいけないのか納得できませんでしたが、婚約破棄したあとも、一ノ瀬と近堂の関係は続いていましたので、近堂の社長の息子である近堂隆司の誘いはものすごく断りづらかったのです。

でも、来なければよかったです。

こんなくだらない話を聞かせられるなんて、頭が痛くなってきました。


「……その言葉、嬉しく思います。ですが、私は貴方に釣り合うような人間ではありません。それに、私のような心の弱い人間は、周りの女性たちからの嫉妬に耐えきることはできないでしょう。」

「そんなの俺が守ってみせるさ!」

「……ごめんなさい。お別れしたときに、つぐつぐ思い知ったのです。人はそれぞれ、自分に合った人間と一緒にいるべきなのだと。」

「華……そうか。俺は、お前に辛い思いをさせていたんだな。分かったよ……。」

「近堂さんの幸せを祈っております。では……。」

「ああ、華も幸せに……。」



近堂隆司さんと別れて、呼び出されたホテルの喫茶室からゆったりとした足取りで離れました。


…………大分離れたから大丈夫かしら。


「悠里~!」

「華~!何あの男っっっ!!!今さら何言ってるのっっっ!!!」

「悠里悠里、まだここ外ですから。」

「でも~!じゃあカラオケ行こうよ!そこで喋り倒そう!」

「そうですね。」


そのまま、近くのカラオケに入り、飲み物も注文して席に座ります。

あまり人に聞かれたくない話をするときや大声を出したいときにはぴったりの場所ですね。


「悠里、今日は来てくれてありがとうございます。用件も分からなく、一人で会いたくなかったのです。」


そう、一人で会いたくなかった私は、幼馴染みで親友の悠里にお願いして、近くの席に座っていてもらったのです。

実際は、何事もなかったので、無駄な時間を過ごさせてしまったのですが。

あとで、悠里の好きなスイーツでも食べに行っておごらなければいけませんね。


「そんなの全然いいんだよ!華があのバカ男と会うなんて心配だもん!」

「ありがとうございます。何事もなくすんでよかったです。」

「呼び出しに応じる必要だってなかったのに!しかもやり直すって!何で華が応じると思うわけ!?しかもあの上から目線~!!!」


悠里がヒートアップしていくのを見ていると、逆に私の方が落ち着いてきてしまいました。

あの人の言うことは許しがたいことでしたが、それに対して、悠里が怒ってくれるのが嬉しくて、ほっこりした気持ちになります。


「華も思いっきりふってやればよかったのに!!」

「ん~……そうしようかとも思ったのですが、あの人って、結構な自信家で、自分のプライドを傷つけるような相手を許さないんです。そんな相手を怒らせて面倒くさいことになるのも嫌ですし。もう関わりたくないですし、これ以上面倒事に巻き込まれるのもごめんです。それならば、社交辞令で、やんわり遠回しに断るのが正解でしょう?」

「ん~……分からなくもないけど、調子にのってそうで嫌~!大地さんのこと知らせてぷぎゃーさせてやればよかったのに!」

「まあ…社交辞令を本気で受け取る方でしたので、調子にはのっているかもしれませんね。ですが、結婚前に変な事態に巻き込まれたくないですし、これからの私の人生に欠片ほどの関わりもないどうでもよい方ですもの。」

「あ~……あのバカ男だと何やらかすか分かんないもんね。華の対応が賢いのかも。来月には結婚だもんね。ブーケは私に目掛けて投げてね!」

「ええ。狙うから、上手に受け止めてね。」

「楽しみにしてる~!」



そのあと、悠里と喋り倒し、ケーキをおごり、帰ってきました。

この家に帰ってくるのも、あともう少しと思うと、少々寂しくなります。

近堂隆司さんとの婚約が白紙にもどったあとお見合いした大地さんとの結婚が来月に迫っています。

大地さんは、とても誠実ないい人で、お見合いで会った私のことを好きになってくれました。

結婚は契約だと思っていた私でしたが、それ以上に、幸せになるために結婚するのだという、悠里の主張が理解できるようになってきました。

穏やかな愛を受け止め、私も穏やかな愛を返すことの幸せを実感しています。

近堂隆司さんとの婚約破棄はショックでしたが、あのとき縁がきれてよかったのでしょう。

ましてや、今の近堂さんの状況を聞くと、とてもとても……。

まあ、正直、聞いたときは、非常にすっきりしたのですが。

でも、もうあのような人に関わるのも、思考がとらわれるのも全くごめんです。


それに……今後、私と近堂さんが全く関わらないこともそれなりの報復になるでしょうしね?

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