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婚約破棄

「華……お前には悪いんだが……俺と婚約を破棄して欲しいんだ!」

「ごめんなさいっっ!あなたには悪いと思うんだけど……隆司さんを愛してしまったのっっ!責めるなら私をっっ!!」

「違うんだっ!!愛は悪くない!俺が愛を愛してしまっただけなんだ!!」



……え~……なんの茶番でしょう?



何も予定がなかったので、日頃の疲れを癒そうと、ゆっくり過ごしていた日曜日。

婚約者の隆司さんにホテルのカフェに呼び出され、嬉しさ半分、面倒くささ半分で向かった私を待っていたのは、隆司さんと職場の先輩である愛さんが繰り広げる、ドラマの中でも使いふるされてしまった茶番としか思えないような光景でした。

余りのことに、驚きや悲しみの前に、呆れがきてしまったのは仕方がないことでしょう。

確かに、隆司さんとは家同士の関係からの結婚を前提にしたお見合いで知り合って、すぐに結婚を前提に付き合いだし、1ヶ月がたった頃にはもう婚約の運びとなったので、世間一般の恋愛結婚とは多少違うところもあるでしょう。

その差はすぐに埋まるようなものではないでしょうし、私も隆司さんに恋愛感情を抱いている訳ではないので、愛情を強制しようとも思っていません。

ですが、縁あって出合い、夫婦になろうとしているのですし、どうせ断ることのできない結婚話なのだからできるだけ仲良くしたいとは思っていたのです。

それを隆司さんにも伝えましたし、隆司さんも同じ思いを伝えてくれていましたので、男女としての愛は芽生えなくても、家族としての愛や、同じ会社を守っていく同士としていい関係を築いていけるだろうと思っていました。

そして、隆司さんも納得して了承して婚約し、今年の秋には結婚予定になっていたはずなのですが……。






「華……俺は愛に出逢って真実の愛に気付いてしまったんだ。」

「華ちゃん……本当にごめんね……。」


『婚約破棄、承りました。残念ですがご縁がなかったようです。申し訳ありませんが、隆司さんのほうから申し出られたことですので、この破棄に伴う手続きは隆司さんがお願いします。』


「あ、ああ……。」


『私の両親には、私の方から報告しておきますので。ではお二人ともお幸せに。』





そう告げて、席をたち、カフェから出ていく。

会計は済ませなかったが、呼び出したのはあちらなのだからよいでしょう。

要求通り、婚約もすんなりと破棄に了承してあげたのですから。


本当は、婚約までしたのだから、少しはごねたい気持ちもあったのですが、まあ、仕方がありません。

押し付けられた、ほぼ政略結婚といえるような平々凡々な私と、ミス・キャンパスにもなったことがあるという美人な愛先輩だったら、愛先輩をとってしまうでしょう。

そして、私の方の気持ちも変わってしまいました。

隆司さんのことは確かに少しずつ大切な存在になってきていましたが、それは「人生のパートナー」としてです。

いくら男女としての愛はないとはいえ、浮気をした時点で、パートナーとして最も大切な『信頼』が丸潰れになりました。

今までも愛しているとはいえませんでしたが、人間としての好意は抱いていたのですが…好ましくなく思う…いえ、嫌い?…握りつぶしてやろうか?……な~んて物騒な考えが浮かんでくる程ですから。

なので、婚約破棄になってしまっても仕方がないでしょう。

まあ、婚約破棄された側になってしまったのは腹立たしいですが。

婚約破棄されて不利になるのは、たとえ男の方に責任があったとしても、女の方ですからね。

そして、愛先輩の勝ち誇った顔に微妙にイラっときてしまいます。

まあ、隆司さんは世間一般でいったら大層ハイスペックだそうなので、私に勝ったと喜んでいるんでしょう。




でも……これからが大変ですよね?

政略結婚というのは、理由があるからなされるもの。

婚約破棄を申し出られたのは、隆司さんの方からなのですから、私の方から何かするつもりはありません。

要求に応じてすぐに破棄してあげたのだから、少しの苦労は仕方ありませんよね♪

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