脆弱性
ここはホームレスの住む夜の地下鉄よりずっと暗く、床は永久凍土のように冷たい場所。下水道のようなじめじめとした空気、漂ってくる腐乱した死体の臭いで満たされている。暖かな蝋燭の炎も一抹の光の筋も見えない。
絶望の地獄。
第5級重大犯罪者収容所「ジェイルジョーカー」。
日本で"最も最悪の刑務所"といわれている。東京都電子科学技術産業特別区クレナイの地下に存在する、収容者数1000人の巨大施設。
大量殺人鬼、国際テロリスト、連続少年少女強姦魔、人食い、汚職政治家まで、豊富なバラエティの極悪犯罪者がここにいる。囚人は朝5時に起床し、食事は昼と夜の2回で産業廃棄物のゴミを漁る。しかも早い者勝ちだ。夜の6時まで過酷な労働があり、それから更に11時まで、"更生教育"という名の生き地獄が待っている。
死にたいけど死ぬことは許されない、壮絶な人体実験--。一般世間はこの事実を誰も知らない。
今日もあと5分で、"教育"が終わるはずだった。
「あと5分だ」
檻から男の黒い影が見えた。
「あと5分で、すべてが始まる」
「だからさァ」
「やっぱりボクはマシンに愛されてるんだよねェ~!!!」