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社内恋愛  作者: みねお涼
14/15

幼なじみの彼女:後編


「じゃぁ、帰ろうか」

「うん」


2人の背中が遠くなるまで見送って、俺はかえでを促した。


助手席にちょこんと座るかえで。

なんだか、不思議な気分だ。

久しぶりに2人っきりになったな。

と、そんなことを思う。


ハンドルを握る手に力が入る。

かえでが俺を男として認識していた、ということに些か緊張しているのか。


自宅までの短い道のり。

かえでも、俺も、言葉は少ない。


あっという間に駐車場に到着した。

「ありがとうございました」

「おう」

車を降りて丁寧に礼を言われ、少し緊張がほぐれる。

「あの……迷惑、でしたか?」

「は?別に一緒の場所に帰るんだし、迷惑なんて……」

「いえ、違うくて。その、ようちゃんと2人っきりになったことがあるなんて、市田さんに話しちゃって」

街灯に照らされているせいか、かえでの瞳が光を吸収して潤んでいる。

「……いや、なんでよ」

「ようちゃんは、私の気持ち知ってるんでしょ?」


――ちょっと待てー!?なんだこの展開!!


「私、ずっと……」

「ちょっと待てい!」

かえでの顔の前に手のひらを突き出し、おもわず制止してしまった。

「待て待て、なぜそうなる」

かえでの表情が「?」と言っている。

「俺は、お前を妹のような存在だと思っている」

「……そうなの?」

「そうなの」

「なんで?」

「いや、なんでって……」

「私、付き合ってたのかって言われてうれしかったんだけどな……」

頬を赤らめ、うつむき加減になっていくかえで。

わずかな明かりの中でも、際立っていく頬の紅潮と瞳の潤い。

酔っているのか?

冗談なのか?

明らかに混乱していく俺。


「幼なじみが彼女って、ようちゃんは嫌?」


とどめの上目遣い。


――これか!これが「デレ」というものか!!


悟り、俺の心臓が鼓動を高める。


「はぁぁぁぁぁ」


がっくりと、ひざに両手をついてため息をついてしまった。

取りあえず落着け、俺。

よく考えろ、俺。

おばさんたちになんて言う?

かえでとお付き合いしてます?

いやいや、違う。

近所付き合いのことを今考えている場合か。


「ようちゃん?何か変なこと言った?」

「全然変じゃないけどな……唐突というか、なんつーか」

困惑する声音がまた、俺の心を揺さぶる。

顔をあげ、かえでの顔をよく見る。

普段どおりの、すました無表情に戻っている……気がする。

「……とりあえず、俺にもう少し時間をくれ」

「時間があったら何か変わるの?」

「……わからん。が、お前の気持ちは分かった。うん」

「私はようちゃんの気持ちがわからないよ」

「待て。ちょっと一晩寝て考える」

「寝たら考えられないよ」

「……わかった、寝て、起きてから考える」

「ようちゃんって、案外小心者だね」

そう言って。

かえでが笑う。


きゅん、と。


乙女のように胸が高鳴るのを感じた。


「じゃぁ、また明日ね」


かえでが手を振りながら軽快に階段を登っていく。


――ああ、やっぱりコレか。


市田や顧客がファンになるのもうなづける。

はっきりいって、可愛い。

欲目でなく可愛い。


可愛いと、思ってしまう。

「明日、か」


明日になったら、なんて言おう。

答えはもう、決まった。



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