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社内恋愛  作者: みねお涼
13/15

幼なじみの彼女:中篇

「かえでちゃんってさー、なんでこの仕事選んだの?」

ノリにのっている市田が陽気にグラスを空ける。

「近所なので」

そっけないように聞こえるかえでの返答。

だが、それが普通だ。

二十歳そこそこの若い女性が持つ、キラキラした雰囲気は無い。

今はおろしているストレートの黒髪も、一度も染めた事は無い。

「……」

澤井さんは、黙々と焼き鳥を咀嚼している。

市田の話には興味がないらしい。


「かえでちゃんってさ、男の友達とかいる?」

「ええ、高校の同級生とか同じゼミの人くらいですけど」


何を聞いているんだ市田。

もしかしてやっぱり、かえでのこと狙ってるのか?


かえでは、一生懸命市田の相手をしている。

いつ「デレ」の部分が見られるのかとちらちら伺っているが、そんな雰囲気は無い。

というか、「デレ」とはどんな部分だ。


「素朴だよねー。男の人の家とか行ったことないんじゃない?」

「いえ、ありますけど……」

「えええ!?マジで!?2人っきり!?」

「……はい」


かえでのその回答には、内心俺も驚く。

かえでの高校生活や大学生活まで首をつっこむ暇はなかったが。

まさか男と2人っきりで過ごしたことがあるとは知らなかった。

どんな男だ。どこのどいつだ。

親父さんやおばさんは知っているのか?


ぐるぐると、アルコールも摂取していないのに思考が回る。


やっぱりかえでも女なんだな。


コクコクとカクテルを飲むしぐさは人形のようだが。

ずっと見てきた、かえではかえでのままだ。


「よく竹村さんと2人っきりになってました」


――って、俺かい!!


がく、とテーブルの上でつんのめりそうになる。


「竹村ー!?お前かえでちゃんと付き合ってたのかー!?」

「話が飛躍しすぎだ!受験勉強みてやってただけだよ!」

「2人共、しずかに」

澤井さんの注意で我に帰る。

「いやいや、だよね。こんな面白くも無い男とはね」

自分にも言い聞かせるように話す市田がなんとなく憎い。

「保護者みたいな感じだからな……はは」


その後も。

なんだかんだと市田はかえでに絡み続けたが、かえでの「デレ」を目の当たりにする事は無かった。




「よ……竹村さん、帰り一緒に帰ってもいいですか?」


洋ちゃん、といつものように呼びかけて、かえではちゃんと苗字で俺を呼ぶ。

もちろんそのつもりだったが、かえでからお願いされるとは意外だった。

かえでが自転車で通っていることは知っている。

出勤するとき、いつものかえでの自転車が駐輪場になかったから。

「お前、自転車は?」

「店において置く」

「そ。じゃ、車とって来るから待ってな」

「私、市田くんを連れて帰るわね」

澤井さんが、いい具合に酔っている市田を支えて歩きだした。

「澤井さん!駅まで送りますよ?市田の家、知ってるんですか?」

「ええ、私のマンションの先にご実家があるの。名簿の住所を見る限り、近いわ」

さすが澤井さん。従業員の住所を把握しているとは。

「じゃぁ、大沢さんをちゃんと送り届けてね」

そういうと、澤井さんは颯爽と歩き出した。

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