表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あ、お前の推し、死んでるから  作者: まつり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

幽霊

幽霊に取り憑かれた。

もう、はっきりと分かる。


始めは祖母から受け継いだ古い一軒家が、パキパキお音を立てていることから異変は始まった。


古い木造住宅だから、湿気の変化に弱くて家鳴りがしているんだと思っていたけれど、後で聞くとアレも霊障だったらしい。


その次は、割と几帳面な性格の僕がリモコンをなくしたり、意味不明なところにティッシュが移動していたりと、物が動き始めた。


流石に違和感はあったが、実害が無さすぎてそれも放置していた。

流石に戯れで18℃設定にした後にエアコンのリモコンが消えたのは困ったが、困った理由の半分以上は部屋をキンキンに冷やした自分のせいなので危機感は無かった。


次に起きたのは幻聴。

これには参ったね。

なにせ、夜中になると話し声が聞こえてくる様になったのだから。


厳密にはスピーカーから謎の声が聞こえて来るって感じで、直接話しかけられてるわけでは無さそうなんだけども。


僕の仕事はイラストレーターで、ご多分に漏れず夜中に作業をすることが多い。

仕事で受けた18禁な絵を真っ昼間から描くと、いたたまれない気持ちになって、親や祖父母への謝罪を口走ったりしてしまうからだ。


しかし、それも気にならなくなった。


「俺は割と行動範囲広い系地縛霊なんだけどさ、ほら、駅前に公園あるじゃん?遊具がしょぼい割に広い、草木もまばらな誰に需要あんのか分からない公園。


ベンチは置いてあるよ?

置いてあんだけど、アンタ、ねぇ?


前衛芸術だかなんだか知らないけど、座りにくそうっていうか、ベンチなんだかオブジェなんだからよく分からないデザインで、座っていいのかも分からない、真ん中がうっすら窪んでるせいで、雨水が溜まって汚く見えるから、本能的に誰も座らないのよ。


駅近だからコンビニもあるし、やっすいスーパーもあるから、お昼休憩なんかは広めの公園でおにぎりなんて仕事の息抜きに丁度いいじゃない。


なのにそんなベンチ使っているもんだから誰も座らない。

近所の奥さんなんか、ベンチの前に立って井戸端会議してるってんだから。


ベンチで井戸端って言うのも変か。

ベンチ端?

あれをベンチと呼ぶのも微妙だしなぁ。」


気にならなくなったというか、普通に深夜ラジオ聴いてる気分になってきた。


すごく面白い訳ではない。

つらつらと取り止めのない、なんかよく分からない事を勝手に喋るだけだから、害もないし、たまに面白い時もある。


そしてイケボ。

謎にいい声なんだよなぁ。

無駄な才能だよ。

イケボの幽霊とか。


だからBGMとして聴けない事もないから、別に気にならないってわけ。


困ることもあるけどね。


「…タケやんはどう思う?」


出たよ。


いや、幽霊が「出た」って意味ならずっと前から出てるんだろうけど、この場合の「出た」は意味合いが違う。


コイツ、コイツ?

この幽霊、たまに僕に話しかけて来るのよ。


こっちは締切に追われて必死で絵を描いてんのに、勝手に喋って感想を求めて来る。


「別に…。」


そっちの話を聞いてはいるけれど、会話する程の理解度では聞いてないのよ。


ごめんけど。


「お母さんにお弁当の感想求められた中学生か。」


ツッコむな、ややこしい。


集中が切れた僕は、ペンタブから手を放す。

首を左右にぐりぐりと回し肩周りをほぐしたら、脳に血が通ったのか思考がクリアになって来た。


「あ、ごめん、邪魔した?」


一人で喋ってる分には、いいんだけどね、会話を求められると困っちゃう。

つっても自称地縛霊だから、ここに住む僕ぐらいしか話す相手いないだろうし、お喋りなコイツは寂しいんだろうけども。


「ごめんな、マジで。

タケやん、それ何描いてんの?」


見えてもいるか。

そりゃそうか。

幽霊ってのは相場、電子機器は干渉できないとかじゃないの?


「仕事の絵。

Vtuberって分かるかな、それのグッズ。」


「分からん。」


分からんかー。

じゃあ説明に困るなぁ。


なんて言えばいいんだ?

デジタル着ぐるみ?


「あー!あれか!リアルタイムアニメみたいな?」


んー?大体そんな感じ?


「人が喋る代わりに絵が喋るのか。

ハイカラだな。」


なんだハイカラって。

コイツは一体何時代の幽霊なんだ?

外を普通に彷徨いてるからか、現代的な話し方をしているけども。


幽霊はテレビの代わりに置いてある大きめのモニターの操作も覚えているらしく、気がつくと電源が付いて動画配信サービスへと接続していた。


早速気になったのか、人気どころのVtuberを観てみようと、そう思ったと。


行動が早いじゃない。


「うぇー、すっごい沢山の人が見てるじゃん。

これ儲かるの?円マークのついた数字が飛び交ってるけど。」


「上の方の人はね。」


……いや、普通に流したけど、電子機器さわれすぎじゃない?いくらなんでも。


検索したって事は、入力も可能って事だよね。

あ、音量調整してる。

鼓膜もないのにボリュームの上げ下げ意味あんのか?


…あ。


「お前さ、Vtuberやってみたら?」


マイク越しなら声も出せる、PC操作もできる。

そして、イケボ。

じゃあ、出来るじゃんか。


「え?地縛霊なのに?」


思えば地縛霊向きの仕事じゃないか。


「一人で喋ってるよりは有意義じゃない?

僕はなかなか返事も出来ないし。


あんまり人気でなくたっていいし。

どうせ死んでるんだから。」


「そうだけどさ。


あんまり死んでるって言わないでくれない?

デリカシーないぞ、それ。」


そうなの?

幽霊にあなた死んでますよねって言うのは、考慮に欠けてるの?


初耳。


「ごめんごめん、幽霊に知り合いがいないからさ。

やっぱり幽霊らしく透ければ透けるほどモテるとかあんの?

トレンドファッションはいまだに三角巾とか。」


「ねぇよ。


まぁ、確かに一人で喋るよりは数人でも聞いてくれたら成仏に近づきそうだし、やろうかな。


タケやんが描いてくれるのか?

その、外身。」


まぁそれくらいはやってあげるよ。

思えば可哀想な奴だ。

なんの未練かあんのか知らないけれど、なんの因果か他人ん家で地縛霊になっちゃってんだもん。


「マジかー。

俺は絵なんてよく分からないけど、タケやんの絵は綺麗で好きだからなんか嬉しいわ。


うし、まずは、タケやんに絵の報酬を払えるように頑張るか!」


ははは。

律儀なやつめ。


まぁ、群雄割拠に無所属が金を産むだなんて無理だと思うけど、期待せずに待っておくよ。


…タケやん!?

僕のこと!?


馴れ馴れしっ。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ