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『別れさせ屋』の僕の計算式は、迷子の『復縁屋』によって粉砕される。~宮崎のポンコツ美少女は、僕の恋心だけを正確にハッキングしてくる~

作者: 平凡
掲載日:2026/02/24

初めまして!

現在中学2年生です。 初めて小説を書いてみました。

理屈っぽい男の子と、ちょっと不思議な女の子が宮崎でドタバタするラブコメです。

まだまだ未熟なところもありますが、精一杯書いたので楽しんでもらえると嬉しいです!


※本作品は、プロットの相談や設定の整理にAI(Gemini )を使用しています。

「これでよし」

朝の澄んだ空気の中、僕はスマホをポケットにしまった。

昨夜、僕が仕掛けた最後の一手--ターゲットのスマホに届いた一通の『誤解を招く通知』。あれが決定打となり、完璧な破局が成立したはずだ。

「別れさせ屋」としての僕の仕事に、ミスは存在しない。

達成感に背中を押されるようにして、僕は学校の校門をくぐる。

平和な、いつも通りの日常が始まるはずだった。

--桐沢(きりざわ)あすか。

勝ち誇った笑みを浮かべてそこに立つ「あのおんな」に会うまでは。

授業は数学。黒板を叩くチョークの乾いた音だけが響く、静かな教室。

だが、僕のノートは白紙のままだ。

『なぜだ』

脳裏にこびりついて離れないのは、校門で見せつけられた「再結合した二人」の姿

僕が仕掛けた工作は、ただの喧嘩別れじゃない。お互いの信頼を根底から腐らせる、修復不可能な毒を流し込んだはずだ。

『たとえ僕の工作が甘かったとしても、あんな短時間で復縁できるわけがない』

復縁には時間がかかる。冷却期間が必要なはずだ。

それを一晩で?魔法でも使ったのか?

いや、あいつは……桐沢あすかは、僕が想定もしない「何か」をぶつけてきたんだ。

窓の外、宮崎の穏やかな陽光が教室に差し込んでいる。

だが、僕の背筋には冷たい汗が伝った。

--まさか、僕は最初からはめられていたんじゃないか?

昨夜の工作がスムーズにいきすぎたのは、僕の腕がよかったからじゃない。あいつが僕に「完璧な仕事をした」と思い込ませるために、道を用意していたとしたら…。

「…あのおんな…っ」

握りしめられたシャーペンの芯が、ノートの上でパキリと音をたてて折れた。

復縁屋、桐沢あすか。彼女の目的は単なる復縁じゃない。僕という「別れさせ屋」を完膚なきまで叩き潰すことだ。

ノートの余白に僕は「桐沢あすか」の名前を書きなぐり、その上から×印を引いた。

--やってやる。

そっちがその気なら、僕も手加減はしない。

君が繋ぎ止めたその『縁』を二度と修復できないほど粉々に粉砕してやる。

君が『復縁屋』を名乗るなら、僕はその看板ごと、君のプライドを叩き潰す。

窓の外、宮崎の海から吹き抜ける風がカーテンを揺らした。

僕は折れた芯を捨て、新しい芯をカチカチと繰り出す。

「……今日から、廃業の準備を始めるんだな。桐沢」

休み時間、僕はあえて騒がしい一軍女子グループの近くを通る。

ターゲットは、あすかとよく昼休みを一緒に過ごしている女子だ。

「--あ、そういえばさ、桐沢さん。昨日バイトかなんかあったのかな?帰り、急いでるっぽかったけど」

僕はスマホを操作するフリをしながら、会話の断片を脳内のレコーダーに記録していく。

『あー、あすか?昨日はなんか「急に依頼が入った」とか言って、ソッコーで帰ったよ。あのコ、たまに謎だよねー』 

…依頼、だと?

ノートを広げる僕の口角が、わずかに、そして冷酷に上がる。

隠す気すらないのか、それとも隠す必要すらないほど僕を舐めているのか。

「…いいだろう。その『謎』、全部剥がしてやるよ」

僕はあすかを尾行し、ついに彼女を「静かな場所」へ追い詰めた。

問い詰めてやる。あの一晩でどうやって僕の工作を無効化したのか。

どんな高度なテクニックを使ったのかを。

「…おい、桐沢。答えろ。昨夜、どうやってあの二人を接触させた」

逃げ場を失ったあすかは、顔を真っ赤にして、震える指でスマホの地図アプリを僕に見せてきた。

「…だ、だって…っ!依頼された場所に行こうとしたのに、全然たどり着けないんだもん!適当に歩いてたら、なんか泣いている女の人がいたから、とりあえずティッシュあげて慰めてたら、彼氏が走ってきて…!」 

「…は?」

目の前が真っ暗になった。

僕が昨夜、一睡もせずに構築した「絶望のロジック」は、ただの迷子による「親切心」によって叩き潰されたというのか。

「…依頼された場所は、宮崎駅東口のカフェだったはずだろ。何でお前は、全然関係ない一ツ橋の海岸沿いにいたんだ。」

律の問いに、あすかは「うっ」と言葉を詰まらせ、視線を泳がせる。

「…あ、あそこらへん、似たような松の木ばっかりで区別つかないんだもん。気づいたら波の音が聞こえてきて…そしたら、なんか喧嘩してる二人がいたから」

「それで、僕の工作をぶち壊したのか?偶然通りかかっただけで?」

「だって、女の子がすっごく悲しそうな顔してたもん。放っておけるわけないじゃない!」

律は天を仰いだ。

自分が心拍数や行動心理を計算し尽くして作り上げた『完璧な別れ』が、「地図が読めない女の、気まぐれな親切心」に敗北した。

これが、律とあすかの「史上最悪の出会い」の真実だった。

「……ふーん。桐沢、お前、目的地にたどり着くことすらできないわけだ」

律はあすかとの距離を詰め、見下ろすように冷たく笑った。

「な、なによ。バカにしてるんでしょ。どうせ私はGoogleマップがあっても逆方向に歩いちゃうわよ!」

「いや、逆だ。むしろ歓迎するよ」

「……は?」

律はスマホを取り出し、あすかの目の前でこれ見よがしに振ってみせた。

「これからは、お前がどこへ行くにも僕がルートを教えてやる。最短距離で、迷子にならずに『現場』まで連れて行ってやろう」

「え、ええっ? 急に優しく……」

「勘違いするな。僕の目の届かないところで、また偶然僕の邪魔をされるのが一番迷惑なんだ。だったら、僕の管理下でお前を歩かせた方がマシだ」

律の口角が、獲物を罠にかけた猟師のように吊り上がる。

律と別れ、一人になった途端、あすかの顔から「ポンコツ美少女」の仮面が剥がれ落ちる。

彼女は迷うことなく、最短ルートで裏路地を抜け、目的地のカフェへと歩き出した。その足取りに一切の迷いはない。

スマホに届いた律からのナビを横目で一瞥し、彼女は冷たく微笑む。

「……ほんと、扱いやすいわね。律」

彼女はスマホの地図アプリなんて開かない。

彼女がその目で見ているのは、律が必死に隠そうとしている「工作の全貌」だ。

「あんたが私をナビゲートしてるんじゃない。私が、あんたを私のゴールへ歩かせてるのよ」

律はどうしてもおちつくことができなかった

「なんでだ…俺はどうしてこんなにどきどきしているんだろう」

あの女が目の前にみえた瞬間からなぜか律はどきどきがとまらなかった

敵をみているのになんでこんなにどきどきするのだろうか…こんな非合理的なきもちはいらないそうおもった

その日は、いつも通りの退屈な朝になるはずだった。

校門の前で、律は次に仕掛ける「別れさせ工作」の手順を頭の中でシミュレーションしていた。

だが、その思考は、一人の少女がこちらに歩いてきた瞬間にすべてフリーズした。

風に揺れる制服のスカート。軽く跳ねるポニーテール。

そして、まっすぐに自分を見据えて、いたずらっぽく笑う瞳。

「――あ」

声にもならない声が漏れる。

律の精密な脳内コンピュータが、初めて「計算不能」の文字で埋め尽くされた。

彼女が隣を通り過ぎるまでの、わずか1秒。

その1秒で、律は悟ってしまった。

自分がこれからどれだけ緻密なパズルを組み立てても、この少女という「不確定要素」にだけは、一生勝てないだろうということを。

律は朝、洗面所の鏡の前で30分間戦っていた。

「……別にあいつに会うからじゃない。あくまで『工作員』として、隙のない外見を維持するのは基本中の基本だ」

そう自分に言い聞かせながら、ワックスの量を 0.1グラム単位で調整する。

昨日の「これでよし」と言った時の自分の顔を思い出し、耳まで赤くなるのを冷水で冷やす。

結果。

律が校門をくぐったのは、1限目のチャイムが鳴り響いた5分後だった。

「……桐沢。お前、遅刻なんて珍しいな」

廊下で立たされていると、後ろから聞き覚えのある、鈴が鳴るような声。

振り返ると、そこにはなぜか同じく遅刻してきたあすかが、ニヤニヤしながら立っていた。

「……うるさい。計算外のトラブルがあっただけだ」

「ふーん? その『トラブル』、ワックスのつけすぎって名前だったりする?」

律の心臓が、本日100回目の「計算外」の音を立てた。

静まり返った放課後の教室(または指導室)。

律とあすかは、横に並んで原稿用紙に向かっていた。

律は、まるで国家機密の報告書でも書くような、凄まじい筆致で「遅刻の反省と今後の対策」を論理的に書き進める。

だが、隣のあすかは、ペンを回しながら律の原稿を覗き込んできた。

「律くん、反省文まで『パズル』みたいに完璧だね」

「……黙って書け。お前のせいで僕の完璧な出席記録が汚れたんだ」

「私のせい? 私、律くんの家の前まで行って『早く出てきてー』って魔法でもかけたっけ?」

あすかの言葉に、律のペンが止まる。

(……まさか、鏡の前で前髪をいじっていたのがバレているのか?)

律が冷や汗を流していると、あすかが自分の原稿用紙をスッと差し出してきた。

そこには反省の言葉ではなく、律の似顔絵(しかも、ちょっと前髪を気にしてる顔)が落書きされていた。

「ねえ、律くん。反省文、私のもちょっとくらい書いてよ」

「……ふざけるな。自分のは自分で書け」

「えー、いいじゃん。……これ、二人の『共同作業』だよ?」

「二人は並んで反省文を書いていた。律はこの沈黙を利用し、あすかの視線誘導を計算。自分の『完璧な横顔』を意識させることで、彼女の心拍数を 10% 上昇させる工作を開始する……!」

律(心の声):

(来い……! 僕のこの鋭い眼差しに、あすか、お前が赤面する瞬間を予測済みだ!)

あすか:

「ねえ律くん、鼻の頭にペンのインクついてるよ。ぷぷっw」

律:

「(致命傷)……っ!!」

反省文を教卓に置いて、二人で並んで帰る廊下。

律は「ふん、これでペナルティは解消だ」といつものクールな仮面を被り直す。

だが、隣を歩くあすかが、ふと足を止めて律の顔をじっと見つめる。

「……なんだ。僕の顔にまだインクがついているのか?」

律が不機嫌そうに問い返すと、あすかはいたずらっぽく、でも少しだけ優しく微笑んだ。

「ううん。……律くんって、意外とかわいいとこあるんだねw」

律:「(心臓停止)………………っっ!!!」

律の脳内コンピュータがオーバーヒートを起こす。「かわいい」という単語は、彼の辞書では「弱点」と同義。それを一目惚れしている相手から、この至近距離で、あんな笑顔で投げかけられるなんて――。

律は真っ赤な顔で歩を速める。

「……意味不明だ。お前の脳内構造を一度精査してやりたい」

律が自分の部屋で、タブレット(またはノート)に向かって真剣な顔をしている。

画面には、あすかとの心理戦の記録……という名の、**「あすか攻略メモ」**がびっしり。

そこに、デリカシーの欠片もない妹がノックもせずにガチャリ。

妹:「お兄ちゃん、お母さんがご飯だって……って、何その顔。キモ」

律:「(音速で画面を隠す)……っ! 何でもない、出て行けと言ったはずだ!」

妹:「えー、何? また変な『工作』の計画? ……あ、今チラッと見えた。『あすか・意外と可愛いと言われた時の対策案』……?」

律:「(心肺停止)……それは、調査資料だ」

妹:「ふーん。調査資料のために、朝30分も前髪いじって遅刻したんだ。……お兄ちゃん、それ『恋』って言うんだよ? 知ってた?」

妹:「お兄ちゃん、それ絶対『あすかさん』のこと好きだよね?」

律:「……バカか。これは、彼女を**『精神的に屈服させるための高度な心理実験』**だ。遅刻したのは、その実験の『導入部』として、あえて僕の隙を見せて彼女を油断させるため。前髪を整えたのは、光の反射率を利用して彼女の視覚情報を混乱させるためだ。恋愛感情など、1ミリも介在していない」

妹:「……はいはい。じゃあ、その『実験対象』からLINEきたら、なんでそんなに手が震えてるわけ?」

律:「これは……武者震いだ! 獲物が罠にかかった喜びで、指先が一時的に痙攣しているだけだ!」

妹:「……兄ちゃんキモい。早くご飯食べにきなよ」

律はベッドにダイブし、スマホの画面を凝視していた。

通知:【あすか:今日の反省文、お疲れ様! 明日の放課後、空いてる?】

「――ッ!!」

律の心臓がうるさい。放課後? 二人きりでか? それとも工作の邪魔をするという宣告か?

彼は「あすか対策用」のノートを広げ、考えうる返信パターンを書き出し始めた。

パターンA:『空いているが、何か?』(硬すぎる)

パターンB:『あいにく、調査で忙しい』(嘘だとバレる)

悩みに悩んで、時計はすでに20分を刻んでいた。

その時、画面が再び光る。

【あすか:あれ、反応遅くなーい?w】

【あすか:もしかして、返信めっちゃ悩んでるの?】

「…………なっ!!?」

律は思わずスマホを布団に放り投げた。

部屋にカメラでも仕掛けられているのか? それとも彼女には予知能力があるのか?

顔が熱くて死にそうだ。律は震える指で、ヤケクソ気味に文字を打ち込んだ。

律は、約束の15分前にはカリーノ宮崎のあたりで待機していた。

「早く着きすぎたわけではない。周囲の地形を確認し、不測の事態に備えるのは工作員として当然の義務だ」

そう自分に言い聞かせながら、山形屋の大きな交差点を見下ろす。

今日の律は、昨日妹に「キモい」と言われたワックスの量を 0.05グラム減らし、より「ナチュラルでクールな僕」を演出している。

そして約束の5分前。

人混みの向こうから、大きく手を振って駆け寄ってくる人影が見えた。

「律くーん! お待たせ!」

律の心臓が、宮崎の強い日差しよりも熱く跳ねる。

あすかは制服のままだが、心なしか昨日よりリップの色が明るい気がする。

「……5分前だ。遅刻はしていない。それで、僕をこんな場所に呼び出して何の用だ。まさか、次の工作の邪魔をするという宣戦布告か?」

律は精一杯の冷徹な声で尋ねる。

しかし、あすかはそんな彼の「武装」を、たった一言で解除した。

「ううん。今日は仕事の話、禁止! ……ねえ、一緒に蜂楽饅頭ほうらくまんじゅう食べに行かない?」

「白あんと黒あん、どっちがいい? 律くん、意外と甘党でしょ」

あすかが顔を近づけて聞いてくる。律は鼻先をくすぐる彼女の香りと、饅頭の甘い匂いで、脳の半分が機能停止していた。

「……なんでもいい。そもそも、糖分の過剰摂取は脳のパフォーマンスを低下させる」

「じゃあ、はい、半分こ!」

焼き立てでアツアツの饅頭を、あすかがほおばる

「律にもはんぶんあげる」

「熱いから気をつけてね? ……はい、あーん」

律:「(沈黙。山形屋の交差点で思考がフリーズ)」

周囲にはたくさんの買い物客。それなのに、あすかしか見えない。

律は真っ赤な顔で、覚悟を決めたように身を乗り出す。

(これは……敵の懐に飛び込むための『工作』だ。ここで拒否すれば、不自然だ……!)

自分の心臓に、必死でそんな嘘を吐きながら。

あすかが自分の口に運んだ饅頭を、半分より少しだけ多めにかじる。

「んー、やっぱり白あん最高! ……ほら、律くんも。冷めないうちに」

差し出された、わずかにあすかの歯形がついた(ように見える)蜂楽饅頭。

律はその物体を、まるで高性能爆弾でも見るような目で見つめた。

律(心の声):

(待て。今、彼女は自分の唾液が付着した可能性が極めて高い物質を、僕に摂取させようとしている。これは生物学的に見て……いや、社会学的に言えば、いわゆる『間接キス』という現象に該当するのではないか!?)

律の脳内コンピュータが、真っ赤なアラートを鳴らし続ける。

律(心の声):

(彼女の意図はなんだ? 僕の動揺を誘う心理工作か? それとも、ただ単に何も考えていない天然なのか……。いや、ここで僕が躊躇ちゅうちょすれば、『間接キスを意識している』と認めることになる。それはすなわち、僕の敗北を意味する……!)

「……ああ、糖分補給は効率的だな」

律は震える手でそれを受け取り、あすかの齧った跡を避けるべきか、あえてそこを狙って「何も気にしていないフリ」をするべきか、人生最大の決断を迫られることになる。

「……ふん、非効率な食べ方だな」

律は、震える心臓を鋼の意志で押さえつけ、あすかから饅頭をひったくるように受け取った。

あすかは隣で、「あ、そこ私が食べたところだよ? 大丈夫?」と、確信犯なのか天然なのか分からない無垢な瞳で覗き込んでくる。

(ここで避ければ、僕の負けだ……!)

律は目を閉じ、計算を捨てた。

そして、あすかの歯形が残るその場所を、あえて狙って——ガブッ、と一口でいった。

律(心の声):

(…………熱い。いや、甘い。いや、……柔らかい。いや、あすかの……いや、ダメだ、何も考えるな! これは単なるデンプンとショ糖の複合体だ!!)

「……。……悪くない。味の配合は論理的に合格だ」

律は、耳の先まで真っ赤になっているのを隠すために、必死で山形屋の看板を睨みつけながら咀嚼そしゃくした。

そんな律を、あすかは10秒ほど黙って見つめていたが、やがて噴き出すように笑った。

「……律くん。それ、私の食べたところ、思いっきり選んで食べたよね?w」

律:「(窒息)……ッ!? ぐっ、は……!? 偶然だ! 確率論的に発生した事象に過ぎない!!」

あすか:「ふーん? ……あ、顔、めっちゃ赤いよ?w」

律:「きょ、きょうはもうかえろう」

あすか:「やっぱりあせってるんだあw、でもまあいいよ?きょうのところはこれで」

律:心の声「助かったー、しかしこれはとんでもなく非合理的だったな。でも、…なぜか楽しい…。いやいやそんなわけないだろ、そんなわけ…」

律はぶじに家にかえり宿題をした

「よし、おわった」

律は、宿題のノートを完璧に閉じ、勝ち誇ったようにスマホを手に取った。

「ふん、学校の課題ごとき、僕の集中力の前では無力だ。これでようやく、昨日の失態を取り戻すための『次なる工作』の立案に……」

その時、スマホが短く震える。

【あすか:宿題終わった? お疲れ様!w】

律:「(心臓跳ね)……なっ、なぜ僕が今宿題を終えたタイミングを知っている!? 監視カメラか? それとも僕の行動パターンを完全に解析済みだというのか!?」

さらに追撃のLINE。

【あすか:頑張った律くんにご褒美! 週末、フローランテ宮崎のペアチケット手に入っちゃったんだけど……一緒に『調査』しに行かない?w】

律:「(スマホをベッドに落とす)………………し、し、『調査』だと!?」

律の脳内には、カップルだらけのイルミネーションの中、あすかと肩を並べて歩く自分たちの姿が0.1秒で投影された。

律(心の声):

(バカな……! フローランテ宮崎といえば、県内屈指の恋人たちの聖地。そこへ行けば、周囲からは完全に『交際中』と判定される。それはすなわち、僕が彼女の軍門に下ったことを公に宣言するようなものではないか!!)

だが、彼の指は、脳の制止を振り切って打ち込み始める。

『……調査対象としては、興味深い場所だな。同行してやってもいい』

律がスマホを見つめて「ぐぬぬ……」と悶絶していると、背後でスッと扉が開く。

母:「律、さっきからスマホ投げては拾って忙しそうね。……あ、今のチラッと見えたわよ。フローランテ宮崎?」

律:「(マッハでスマホを裏返す)……母さん! ノックは3回と決めたはずだ! これは、地政学的なフィールドワークの計画を……」

母:「あらあら、うふふ。律もそういうお年頃なのね。お父さんも昔はそうやって鏡の前で髪の毛ずっといじってたっけ」

律:「父さんと一緒にするな! 僕はあくまで——」

母:「いいのよ、隠さなくても。お母さん、嬉しいわ。あ、明日のお弁当、ハート型の卵焼き入れてあげようか? 応援の気持ちを込めて」

律:「やめろ!! 社会的死だ!! それは工作員に対する死刑宣告に等しい!!」

母:「はいはい、頑張ってね。相手の子、蜂楽饅頭が好きな子なんでしょ? さっき妹から聞いたわよ」

律:「(絶望)……あの妹、後で消去(お仕置き)してやる……!」

フローランテ宮崎。

100万個の電球が輝く中、律はガッチガチに緊張しながら、あすかの隣を歩いていた。

「わあ、きれい……! 律くん、見て! あっちのトンネル!」

「……ああ。光ファイバーの密度としては、評価に値するな」

必死にクールを装う律。だがその時、歩きにくそうにしていたあすかが、ふらっと体勢を崩した。

「あ、ととっ……」

「危ない!」

律がとっさに彼女の肩を支える。

その衝撃で、律のコートのポケットから、お母さんが**「お守り」として忍ばせておいた「何か」**が、アスファルトの上にポロット落ちた。

あすか:「……えっ?」

律:「(思考停止)…………は?」

イルミネーションに照らされて輝いていたのは、

『超強力!モテ運爆上げ・恋の必勝お守り(宮崎神宮・特製)』

とデカデカと書かれた、お母さんが勝手に買ってきたド派手なお守りだった。

あすか:「……律くん。それ、……なに?」

律(心の声):

(待て。母さんか!? 母さんがさっき『これ、鞄に入れておくと地政学的に有利よ』とか意味不明なことを言って押し込んできたのはこれか!?)

律:「ち、違う! これは……新型の、……敵の視覚を妨害する、……反射板だ!!」

あすか:「……。……律くんって、意外と……っていうか、……相当な自信家なんだねw」

律:「……?」

あすか:「だって、そんな『必勝お守り』まで用意して、私を落としに来たんでしょ?w」

律:「(顔面爆発)……ッ!? 誤解だ! それは、母の……母の独断による軍事支援で……!!」

「……調査終了だ! このエリアのデータは十分に収集した。僕は帰る!」

顔から火が出そうな律は、お守りをひったくるように拾い上げると、きびすを返した。

だが、その一歩を踏み出す前に、熱を帯びた細い指が、彼の大きな手を絡めとる。

「――ッ!?」

振り向くと、あすかが少しだけ背伸びをして、律の顔を覗き込んでいた。

あすか:「だーめ。まだ『恋人たちの聖地』の、一番肝心なデータのサンプリングが終わってないでしょ?」

律:「なっ、……何を……」

あすか:「ほら、こうしてないと。周りに怪しまれちゃうよ? 『調査』なんだから、完璧にやり遂げなきゃ」

あすかはそう言って、律の指の間に自分の指を滑り込ませた。

ギュッと握られた手のひらから、彼女の鼓動まで伝わってくる。

律(心の声):

(待て。これは……いわゆる『手繋ぎ』という行為か? いや、指を絡めているから、より親密度が高い『特殊形態』だ。……鼓動が速い。これは、歩行による有酸素運動の影響か? それとも、彼女の体温が僕の末梢神経を刺激して……!)

あすか:「律くん、手が震えてるよ? ……もしかして、怖いの?」

律:「……バカを言うな。これは、不測の事態に備えて、指先の筋肉をアイドリングさせているだけだ……!」

律は前を向いたまま、動かなくなった。

繋がれた手だけが、二人の間で熱を帯びている。

「……はなせよ。恥ずかしいだろ。周囲の視線にさらされるのは、隠密行動において致命的なミスだ」

律は必死に顔を背け、冷ややかな声を絞り出した。

だが、繋がれた手に力は入っていない。むしろ、離されるのを恐れるように、彼の指先は微かにあすかの手にしがみついている。

あすかは、律のそんな「可愛い嘘」を見逃さなかった。

あすか:「えー? 恥ずかしいんだ? 律くん、あんなお守り持ってくるくらいやる気満々だったのに?w」

律:「だから、あれは母の独断で……!」

あすか:「じゃあ、本当は嫌なんだ?」

あすかが少しだけ手を緩め、繋いだ指をスッと引き抜こうとする。

その瞬間、律の指が反射的にあすかの手をギュッと握り直した。

律:「……ッ!? い、いや、……今離すと、人混みではぐれる可能性がある。リスク管理として、目的地に到着するまでは、この状態を維持するのが……論理的だ」

あすか:「(ニマニマしながら)ふーん? じゃあ、しょうがないね。……目的地まで、このままだよ?」

あすかはそう言って、繋いだ手を律のコートのポケットに、二人分まるごと突っ込んだ。

律(心の声):

(………………!! 密着面積が、先ほどの2.5倍に増加。ポケット内での気温が急上昇している。心拍数はもはや測定不能。……誰か、僕を殺してくれ……!)

その時あすかがふと言った

「……どうしてそんなに別れさせることに固執するの?」

あすかの声は、震えていた。

「あの子が今、どんな気持ちでその袖を掴んでいるか、律くんなら分かるでしょ? 突き放された時の、世界が真っ暗になるようなあの感覚……。私は、あんな思いを誰にもしてほしくないだけなのに」

律は冷めた目で、ターゲットの背中を見つめたまま答える。

「……甘いな。恋愛なんて不確かな感情に依存するから、裏切られた時にダメージを負うんだ。……そもそも、なぜ僕だけがあの理不尽な絶望を味わわなければならなかった? 全人類が等しくそのリスクを背負うのが、統計学的に見て正しい平等だ」

あすかがハッとして、律の横顔を見る。

「……律くん、それって……」

「――ああ、そうだ。僕は僕の『過去の理不尽』を、この仕事で清算している。あすか、君の『お節介な同情』とは、根本的に相容れないんだよ」

律は、ポケットの中で冷たくなった自分の手を、強く握りしめた。

さっきまでの温もりが、今はもう思い出せないほど遠い。

「じゃあ……私が、律くんのその『理不尽』を上書きしてあげたら、考え変えてくれる?」

あすかの瞳に、フローランテの光が涙と一緒に滲んで輝く。

それは、どんな工作員も仕掛けられない、あまりにも無防備で真っ直ぐな、心の「ハッキング」だった。

律の胸の奥で、厳重に閉ざしていたはずの防壁が、音を立てて崩れそうになる。

律(心の声):

(――やめろ。そんな目で僕を見るな。そんな優しい言葉で、僕の『正しさ』を壊そうとするな!)

律は震える呼吸をひとつ吐き、あすかの視線を冷たく撥ね退けた。

「……冗談はやめろ。今の僕は、この『仕事』に集中しなければならない。私情で任務を曲げるなど、プロ失格だ」

律は震える拳をポケットに押し込み、あすかから顔を背ける。

彼女の差し出した救いの手は、あまりにも眩しくて、今の自分には毒でしかなかった。

律は一歩、夜の闇へと踏み出す。

振り返らず、吐き捨てるように、自分を鼓舞するように言い放った。

「……お前になんて、……絶対に、負けないからな」

自分の過去を否定させない。自分の正義(別れさせ屋)を折らせない。

彼女の愛に「負ける」ことは、あの日振られた自分を「間違いだった」と認めることと同じだ。

あすかは、遠ざかる律の背中を、ただ静かに見つめていた。

「……。……負けないよ、私も。律くんのことも、あのアベックのことも」

「ただいま……」

玄関で死人のような声を出し、律はフラフラと自分の部屋へ直行した。

ドアを閉め、カギをかけ、そのままベッドにダイブする。

「……。…………。………………うわああああああああああ!!!」

枕に顔を押し付け、律は全力で絶叫(消音)した。

律(心の声):

(何が『負けない』だ! 何が『仕事に集中』だ!! 僕はあすかに対して、あんなにも、あんなにもカッコ悪い宣戦布告を……! しかも、あのお守り! あの金ピカの『必勝お守り』を落とした直後に!!)

脳内で、あすかの繋いだ手の感触がリフレインする。

ポケットの中の熱。彼女の指の柔らかさ。

律:「(ゴロゴロとのたうち回りながら)……消したい! 今日の僕のログをすべて消去したい! タイムマシンは!? タイムマシンの開発はまだなのか現代科学!!」

その時、スマホが「ピコン」と鳴る。

恐る恐る画面を見ると、あすかからのLINE。

【あすか:今日はありがと。律くんの手、すごく温かかったよ。……負けないけどね? おやすみw】

「……ひっ、……ふ、……ふぎゃあああああああ!!」

律はスマホを部屋の隅に放り投げ、毛布に潜り込んで芋虫のように丸まった。

律:「……温かかった、だと? 物理的な熱伝導の現象を、そんな主観的な言葉で……。……っ、……あすかのバカ……」

彼の耳は、冬の夜の冷気の中でも、真っ赤に熟したトマトのように熱を持ったままだった。

律と別れ、自宅の自室に滑り込んだ瞬間。

あすかは背中でドアを閉め、そのままズルズルとその場に座り込んだ。

「……~~~~っ!!!」

声にならない叫びをあげて、両手で真っ赤な顔を覆う。

あすか(心の声):

(言っちゃった……! 私、自分から指絡めて、ポケットまで入れちゃった……!! 律くんの手、すっごく震えてて、でも、すっごく熱くて……あああああ恥ずかしすぎて死ぬ!!)

さっきまでの「余裕な年上感(※同級生)」はどこへやら。

彼女はベッドにダイブすると、ぬいぐるみを全力で抱きしめてバタバタと足を動かした。

あすか:「『上書きしてあげる』とか、私どの口が言ったの!? 少女漫画の読みすぎだよ、バカあすか!!」

律の「負けないからな」という言葉を思い出す。

あすか:「……負けない、か。……ふふっ、あんなにかっこいい顔で言わなくてもいいのに。……こっちこそ、負けないんだから」

あすかは、律に送ったLINEの「既読」がつくのを、10秒に1回確認しては「まだつかない……」「あ、ついた!」「……返信こない……」と一喜一憂している。

あすか:「律くん、今頃お部屋でパニックになってるかな……。……なっててほしいな。私だけこんなにドキドキしてるの、不公平だもん」

そう呟いて、彼女は律を握りしめた自分の右手を、そっと胸元に抱きしめた。

翌朝。教室の扉がガラリと開く。

登校してきた律の顔には、まるで特殊部隊の迷彩ペイントを塗り忘れたかのような、真っ黒で深いクマが刻まれていた。

律(心の声):

(……昨夜は、脳内シミュレーションが……その、予期せぬエラー(あすかの笑顔)を吐き出し続け、スリープモードへの移行に失敗した……。だが、僕の精神力なら問題な……)

律の思考が止まる。

自分の席の隣。そこには、いつも通り涼しげな顔をしている……はずの、あすかがいた。

しかし、彼女もまた、コンシーラーでは隠しきれなかったであろう立派なクマを装備していた。

律:「…………。……おはよう、あすか。ずいぶんと、……不健康そうな顔色だな」

あすか:「…………。……律くんこそ。……そんなパンダみたいな顔してどうしたの?」

律:「……ふん。僕は昨夜、ターゲットを確実に仕留めるための『論理的攻撃手順』を3,000パターン構築していただけだ。……寝不足などではない」

あすか:「……へぇ。私も、……復縁のための『感動の再会シナリオ』を4,000本執筆してて……。……一瞬も、……瞬きする暇もなかっただけだよ……(フラッ)」

二人はお互いの「クマ」を直視できず、死んだ魚のような目で黒板を見つめる。

クラスメイト(心の声):

(……え、あの二人、昨日なにがあったの……? 修羅場? それとも……一晩中、ヤバいことしてたの……!?)

1時間目:現代文。

普段なら、律は作者の意図を論理的に解体し、あすかは行間の感情を繊細に読み解く時間。

だが、今の二人に「行間」を読む体力は残っていなかった。

律(心の声):

(……意識が……遠のく……。昨夜のあすかの『温かかったよ』というLINEが、脳内で無限ループ再生……。これは……敵による、睡眠不足を狙った……高度な……サイバー……攻撃…………)

カクッ。

律の頭が、重力に従って前後に揺れる。

隣を見ると、あすかもまた、教科書を立てて盾にしながら、まぶたが限界を迎えていた。

あすか(心の声):

(……だめ……寝ちゃ……律くんに……『上書き』……してあげる……って……言ったのに……むにゃ…………)

先生が黒板にチョークを走らせる音。

そのリズムが、二人にとって最高の子守唄ララバイになってしまった。

ゴン。

小さな音がして、二人の頭が左右から「お互いの方向」に傾く。

クラスメイトA:「(小声で)おい、見ろよ。あの二人……」

クラスメイトB:「……え、お互いの肩に頭乗せて寝てる!? 尊死とうとしするんだけど……」

律の肩にあすかの頭が、あすかの肩に律の頭が。

まるでパズルのピースがはまるように、二人の「クマ顔」が安らかに重なった。

キーンコーンカーンコーン――。

授業終了のチャイムが、静まり返った教室に鳴り響く。

その音で、二人の脳内の「スリープモード」が強制終了された。

律:「……っ!?」

あすか:「……ふぇ?」

律が真っ先に感じたのは、左肩にかかる「柔らかくて温かい重み」と、鼻先をくすぐるシャンプーの甘い香りだった。

視線を向けると、そこには寝ぼけ眼で自分を見上げるあすかの顔が、至近距離(およそ5センチ)にある。

律:「(椅子がひっくり返りそうな勢いで立ち上がる)……な、な、なっ!? 何を、僕の左肩に頭を乗せているんだ! それは僕の領土への不当な侵入であり、不法占拠だぞ!!」

あすか:「(目をこすりながら)……んー……。律くんこそ、私の頭を支えにして、ぐっすり寝てたじゃん……。私の肩、ちょっと痺れてるんだけど……」

律:「ぼ、僕が!? 僕は単に、首の筋肉の弛緩状態をテストしていただけで……! そもそも、君がそこに存在しているのが論理的に——」

クラスメイトA:「(ニヤニヤしながら)おーい律ー。お前ら、寝てる間ずっと『……負けない……』『……負けない……』って寝言でハモってたぞ?」

律・あすか:「(石化)」

クラスメイトB:「なんの勝負か知らないけど、寝る時まで一緒とか仲良すぎだろww」

律:「ち、違う! これは高度な情報戦の……心理的な駆け引きの一環で……っ!」

律は真っ赤な顔で、教科書をバラバラとカバンに詰め込み始めた。手が震えすぎて、ペンケースを3回落とした。

律が真っ赤な顔でペンケースをぶち撒け、あすかが顔を伏せてプルプル震えている横で、教室の空気は急速に凍りついていた。

クラスメイトA:「(ひそひそ声)……なあ、見たかよ今の律。あんなに慌ててるの、入学以来初めてだぞ」

クラスメイトB:「っていうか、あすかさんも……。いつもはどんな男子の告白も『ロジックが足りない』とか言って秒で切り捨ててたのに。……今の、完全に『乙女』の顔じゃん……」

クラスの連中にとって、二人は「近寄りがたい完璧超人」だった。

それが今、授業中に肩を寄せ合って爆睡し、起きたら起きたで中学生のような言い合いをしている。

クラスメイトC:「……なんか、引くわ。あんな冷徹キャラだと思ってたのに……一晩で何があったらあんなにデレるんだよ……」

その「引き気味の視線」に、律の鋭い(自称)聴覚が反応する。

律:「(ガタッと立ち上がり)……誤解するな! 僕たちは、……その、……『徹夜で互いの弱点を探り合う高度な盤上遊戯』に没頭していただけだ! 決して、……決して、軟弱な交際をしていたわけではない!!」

あすか:「(机に突っ伏したまま)……律くん、お願いだからもう喋らないで……。余計に怪しいから……」

二人の「冷徹なエリート工作員」というブランドイメージは、宮崎の青い空に粉々に散っていった。

クラスメイトの「ヒソヒソ」という精神攻撃に耐えきれず、律はあすかの腕を掴んで(無意識)旧校舎の裏へと逃げ込んだ。

律:「……ふぅ。ここなら、あのアホらしい推測(恋仲という疑惑)から一時的に隔離される。あすか、今のうちに僕たちの『公式見解』を摺り合わせる必要があるぞ」

あすか:「……ちょっと律くん。腕、引っ張りすぎ。……それより、お昼食べよ? お腹空きすぎて、私もう戦えない……」

二人は並んで、古びたベンチに座る。

律は、ここぞとばかりに「冷徹な自分」を取り戻そうと、キリッとした顔でお弁当の包みを解いた。

律:「……ふん。栄養補給も工作の一環だ。僕は、母が用意した『計算された栄養素』を摂取して、脳機能を――」

パカッ。

律がお弁当の蓋を開けた瞬間、時が止まった。

白いご飯の真ん中に、真っ赤な桜でんぶで作られた「巨大なハートマーク」。

そしてその横には、**これでもかというほど丁寧に成形された「ハート型の卵焼き」**が、所狭しと詰め込まれていた。

律:「(絶句)………………あ。」

あすか:「(お弁当を覗き込んで)……ぷっ、……ふ、……ふふふっ!! あはははは!!」

律:「ち、違う! これは……っ、母が、……盛り付けの幾何学的美学を追求した結果であって、僕の意志は0.01%も介在していない!!」

あすか:「幾何学……!w ねえ、それ、一個ちょうだい。……律くんの『お母さんの愛』、食べてあげよっか?w」

あすかが悪戯っぽく、自分の箸を律の「ハートの卵焼き」に伸ばす。

「ほら、律くん。幾何学的な栄養素、摂取しなきゃでしょ? ……あーん」

あすかが、自分の箸で摘んだ「ハートの卵焼き」を律の口元に持ってくる。

至近距離で見るあすかの笑顔と、甘い卵焼きの匂い。

律:「なっ、……何を……! 自分の手で摂食する能力は備わっている! そもそも箸の共有は衛生管理上——」

あすか:「いいから。……はい、あーん。しないと、明日の工作、私が全力で邪魔しちゃうよ?」

律:「ぐっ……。……ひ、卑怯だぞ。……は、……はむっ」

律は観念し、プライドを全て捨ててその卵焼きを口に含んだ。

甘い。お母さんの味と、あすかの小悪魔な味が混ざり合って、律の脳内回路は完全にショート寸前。

その時。

「……あ」

旧校舎の角から、クラスメイトのAとBが、律の忘れ物のノートを手に、幽霊でも見たかのような顔で立ち尽くしていた。

クラスメイトA:「(小声)……おい。律が……あの、鉄仮面の律が、……あーん、されてる……」

クラスメイトB:「……しかも、あの卵焼き……ハート型じゃね? ……っていうか、律、今めっちゃ幸せそうな顔してなかったか……?」

律:「(卵焼きを口に含んだまま)………………ッッ!!!!」

律の顔面が、今日一番の速度で「警告色(真っ赤)」に染まる。

律:「(咀嚼しながら)……ご、誤解だ! これは、……摂食行動の外部委託による……時間短縮の……実験中であり……!!」

クラスメイトA:「……もういいよ。……お幸せにな。ノート、ここに置いとくから……」

二人はそっとノートを地面に置き、**「触れてはいけないものを見た」**という足取りで、全速力で立ち去っていった。

あすか:「……あーあ。律くん、今の、明日には学年中のニュース速報だねw」

律:「(膝から崩れ落ちる)……終わった。僕の『冷徹な工作員』としてのキャリアが……宮崎の歴史から抹消された……」

クラスメイトに「あーん」の現場を目撃され、人生最大級の屈辱に震えながら校門を出た律。

そのポケットの中で、スマホが「ピコン」と無慈悲に震えた。

律は恐る恐る画面を開く。そこには……。

【母さん:律、今日のお弁当はどうだった? ちゃんとあすかちゃんにも、幾何学的な愛(ハートの卵焼き)を分けてあげたかしら? ♡】

律:「(スマホを握りしめたまま硬直)…………な……ぜ、だ……」

あすか:「どしたの? 律くん、さっきより顔色が宮崎のナスを通り越して、紫陽花あじさいみたいになってるけどw」

あすかが横から画面を覗き込む。

あすか:「えっ! お母さん、すごっ! なんで私が食べたの知ってるの!? エスパーなの!?」

律:「違う……! うちの母は、……僕の行動パターンを24時間監視し、予測演算する変態的プロファイラーなんだ……! くそっ、……完全に読まれていたというのか……!」

【母さん:追伸:あすかちゃんが『美味しい』って言ってくれたら、明日は『3D立体ハート・オムライス』に挑戦するわね! 応援してるわよ、工作員(恋の)くん!w】

律:「(膝から崩れ落ちて)……やめろ……もうやめてくれ、母さん……。これ以上『3D』なんて持ち込まれたら、僕の弁当箱は物理的なラブコメの地雷原になってしまう……!」

あすか:「あはは! 3D!? 見たい! 私、明日も律くんの隣でご飯食べよーっとw」

律:「(絶望)……僕の平穏な、冷徹な日々は……一体どこへ行ってしまったんだ……」

月明かりが宮崎の街を静かに照らす頃。

律は昼間の「クマ顔」をプロの仮面で隠し、ターゲットが潜むバーの近くの路地に立っていた。

律:「……よし。母さんのLINEは非表示にした。お弁当のトラウマも、キャッシュから削除。……今夜の僕は、冷徹な『別れさせ屋』だ」

今回のターゲットは、地元の有力者の御曹司おんぞうし

女性をもてあそび、ボロ雑巾のように捨てることで有名な男。依頼人は、その男に捕まった純真な妹を救いたいと願う兄だ。

律(心の声):

(ターゲットの心理的脆弱性を突き、自己嫌悪を増幅させ、自ら別れを切り出させる。……論理的に、15分で終わる任務だ)

律が路地から一歩踏み出そうとした、その時。

「……待ちなよ、壊し屋くん」

背後から聞こえたのは、聞き慣れた、そして今一番聞きたくない甘い声。

律:「(肩がビクッとする)……あすか……ッ!? なぜここにいる。ここは僕の指定した工作エリアだぞ」

闇の中から現れたあすかは、夜の風に髪をなびかせ、不敵に微笑んでいた。

あすか:「奇遇だね。私の今回の依頼人は、その『御曹司』に振られかけてる女の子。彼女、彼を本気で変えたいって願ってるの。……だから、今夜は別れさせないよ?」

律:「……またか。あんな救いようのない男を更生させるなど、熱力学第二法則エントロピーを無視するようなものだ。……無駄だと言っているだろう!」

あすか:「やってみなきゃわかんないでしょ? ……ねえ、律くん。勝負しよ。……もし私が彼らを救えたら、明日のお弁当、私に全部『あーん』させてね?」

律:「(顔面爆発)……ッッ!? 公私混同も甚だしい!!」

律は冷たい夜風をコートに受けながら、あすかを鋭く射抜くような目で見つめた。

律:「いいだろう。そこまで言うなら、一ヶ月だ。……一ヶ月やるから、せいぜいその『クズ』を聖人にでも変えてみせろ。もしできなかったら、その時は潔く手を引け。僕が僕のやり方で、その腐った関係を完全に切断する」

あすか:「……一ヶ月ね。……わかった、乗ったよ。律くんがそんなに自信満々なら、負かした時の顔が楽しみ」

律はフンと鼻で笑い、あすかに背を向ける。

律:「……勘違いするな。僕はあのお節介な母親に、君との良好な関係(偽装)を報告する手間を省きたいだけだ。……一ヶ月後、君が泣いて謝っても、僕は論理的に仕事を遂行するからな」

そう言って歩き出す律の耳は、暗闇の中でも隠しきれないほど赤くなっていた。

あすか(心の声):

(一ヶ月……。……長いようで、短いな。……その間に、彼の心も『上書き』しなきゃいけないんだから、私の方が忙しくなりそうw)

二人は夜の闇に消えていく。

これから一ヶ月、学校では「クマ顔のカップル(仮)」、夜は「互いの依頼を潰し合う天敵」。

二人の、奇妙で過酷な二重生活ダブルライフが幕を開けた。

翌朝。律は登校するなり、自分のデスクの周囲に目に見えない「防壁プロトコル」を張り巡らせていた。

律(心の声):

(昨日、一ヶ月の勝負を承諾した以上、彼女との不用意な接触は情報漏洩のリスクを高める。今日から僕は、彼女を『クラスメイト』ではなく『敵対勢力の工作員』として再定義する!)

休み時間、あすかが「ねぇ律くんw」と話しかけてきても、律は無言で耳栓デジタルノイズキャンセリングを装着。

移動教室でも、あすかから半径3メートル以内の「レッドゾーン」を死守して回避する。

しかし、ついに逃げ場のない「お昼休み」がやってきた。

律は人気のない非常階段の踊り場に陣取り、お母さんの**「3D立体ハートオムライス(昨日予告通り)」**を開封する。

律:「……ふぅ。ここならあすかは来な……」

「あー、見つけたw 律くん、不法占拠中?」

階段の下から、ひょっこりとあすかが顔を出した。

律:「(飛び上がる)……ッ!? なぜだ! ここは僕が統計的に割り出した、君が最も来ない確率が高い場所のはずだぞ!」

あすか:「律くんが考えそうなことなんて、一ヶ月もあれば完全プロファイリング済みだよ。……それより、約束でしょ? 『負けたらあーん』だけど、今日は……予行演習、しとく?」

あすかはそう言って、律の「3Dハートオムライス」をじっと見つめ、自分の箸を構えた。

律:「……ッ、接触禁止だと言っているだろう! 敵対工作員からの食糧提供、および共有は禁止されている!」

あすか:「えー、じゃあ、昨日の『あーん』の目撃情報、クラスのグループラインに詳しく流しちゃおっかなー?」

律:「(絶望)……卑怯だ。……君は、論理というものを……尊厳というものを……っ!」

「……予行演習、しとく?」

悪魔のような微笑み(あすか視点ではただの可愛い笑顔)を浮かべ、箸を構えるあすか。

律の視界には、お母さんが情熱を込めて盛り付けた、プルプルと揺れる「3Dケチャップハート」が映っている。

律:「(顔面蒼白)……断る! 今日の僕は、感情を排した無機質な工作マシンだ! そんな……そんな甘酸っぱいイベントに応じるリソースなど、1バイトも残っていない!!」

あすか:「えー、ケチ。一口くらい減るもんじゃないし、お母さんも喜ぶよ?」

律:「……ッ、今日、今日は……! 今日だけは絶対に無理だあああ!!」

律は叫んだ。

そして、まだ一口も食べていないオムライスの弁当箱を、まるで国家機密の入ったアタッシュケースのように脇に抱えると、信じられない瞬発力で階段を駆け上がった。

あすか:「あ、ちょっと! 律くん!? 転ぶよ!」

律:「追いかけてくるな! 僕は……僕は今から、この『3Dの呪い』を一人で論理的に処理してくる!!」

バタン!! と屋上の扉が閉まる音が響く。

一人取り残されたあすかは、しばらく呆然としていたが、やがてお腹を抱えて笑い出した。

あすか:「あははは! なにあれ、速すぎ! ……でも、あんなに必死に逃げるってことは……やっぱり、意識しすぎなんだよねw」

一方、屋上の隅っこで、冷たい風に吹かれながら一人でハートを崩して食べる律。

律:「(モグモグ)……甘い。……ケチャップが、……喉を通るたびに僕の尊厳が削れていく音がする……。……でも、……美味いのがまた、腹立たしい……」

律の「一ヶ月戦争」初日は、戦略的撤退(ただの逃亡)という惨敗から始まった。

夜の宮崎市街地。

昼間の「踊り場のスプリンター」だった面影は、そこには微塵もなかった。

律(心の声):

(……昼間のデータは完全にゴミ箱へ。現在の僕は、感情を持たない執行人。ターゲットの『クズ』を、社会的な死をもって恋愛市場から強制排除するのみ……!)

ターゲットの御曹司が、取り巻きの女たちを連れてバーから出てくる。

律は闇に溶け込み、冷徹な手つきでタブレットを操作した。

律の工作は、精密かつ残酷だった。

男のスマホをハッキングして、これまで二股・三股をかけてきた証拠を、今隣にいる女性たちのスマホへ「誤送信」を装って一斉送信する。

「……な、なにこれ!? あなた、私には……!」

路上で始まる修羅場。

律はそれを見下ろし、冷たく呟く。

律:「論理的な帰結だ。お前の不義という変数データを放り込めば、破滅という解が出る。……さあ、あすか。これでも君は『更生』を謳うのか?」

しかし、その時。

あすか:「……やっぱり、そういうやり方なんだ。律くん」

暗闇から、あすかが寂しそうな、でもどこか試すような目で現れた。

あすか:「バラバラにするのは一瞬だよね。でも、その傷ついた女の子たちの心はどうなるの? 律くんのやり方は、ただの破壊だよ。……私なら、その『クズ』な部分さえも、彼女への本当の謝罪に変えてみせる」

律:「(フンと鼻で笑う)……謝罪? 悪人に慈悲をかけるなど、演算の無駄だ。……あと29日。僕がこの男を完全に『再起不能リタイア』させるのが先か、君が『奇跡』を起こすのが先か。勝負は始まったばかりだ」

律は、路上で泣き叫ぶ女性たちを一瞥もせず、淡々とタブレットを閉じた。

律:「あすか。君は勘違いしている。これは恋愛ごっこじゃない。『工作』だ。……情に流されてターゲットに深入りすれば、いつか君自身が壊れるぞ」

その声には、昼間の動揺は欠片もなかった。

律が別れさせ屋になったのは、ただの逆恨みではない。「自分のような理不尽な犠牲者を出さないために、不健全な関係を早期に切断する」という、彼なりの冷徹な救済だった。

あすか:「……わかってるよ。でも、私の『復縁』だって、ただの同情じゃない。壊れたものを繋ぎ直すことでしか、私自身の『あの日の傷』は癒えないんだよ」

二人の間に、昨夜までの甘い空気は一切流れない。

律:「一ヶ月だ。この男が自らの醜悪さに気づいて更生するか、僕の手で社会的に抹殺されるか。……どちらが『正しい』か、この任務で証明してみせる」

彼らは同じ「失恋」を経験したからこそ、正反対の結論に至った。

「二度と信じないために、壊す」律。

「もう一度信じるために、直す」あすか。

夜の宮崎のビル風が、二人の間に越えられない境界線を引く。

次に学校で会う時、二人は「クラスメイト」の仮面を被るだろうが、その裏側にあるのは抜き身の刃のようなプロの意志だった。

ターゲットの御曹司、九条くじょう

彼はただのクズではなかった。律が仕掛けたハッキング工作も、あすかが接触を図った心理カウンセリング的なアプローチも、彼は最初から**「気づいて」**いた。

律が放った「浮気の証拠」は、九条が意図的に流したフェイクデータ。

そして、あすかが「更生」の糸口として寄り添っていたターゲットの「弱さ」さえも、彼女を誘い込むための餌だった。

九条:「……復縁屋、だっけ? 君みたいな綺麗な子が、あんな陰気なハッカー君と僕を弄ぼうなんて、100年早いんだよ」

宮崎市郊外の廃ビル。

あすかは工作の最中、九条の雇った「本物のプロ」によって拉致され、拘束されていた。

律は、遠隔監視モニター越しにその光景を捉える。

律(心の声):

(……計算ミスだ。ターゲットは想定以上のリテラシーを持っている。あすかの『情』が、彼女を最悪の罠にハメた……!)

イヤホン越しに、九条の冷ややかな笑い声が聞こえる。

九条:「さあ、相棒君。君の『大切な仕事仲間』を救いたければ、今すぐ表に出てきなよ。……それとも、君の『論理』とやらは、仲間を見捨てて逃げろと教えているのかな?」

律の指が、キーボードの上で止まる。

ここで助けに行けば、律の素性も割れ、工作員としてのキャリアは完全に終わる。

だが、行かなければ――あすかの心も体も、九条の悪意によって粉々にされる。

律:「(震える声で)……効率の問題だ。……ここで彼女を失えば、僕の『一ヶ月の勝負』が不成立になる……。……それだけだ。……それだけの、理由だ……!」

律はバックパックから、ハッキング用デバイスではなく、護身用のスタンバトンとタクティカルナイフを手に取った。

「冷徹な工作員」の仮面が、怒りでひび割れていく。

廃ビルの静寂を、鋭い破砕音が切り裂いた。


律は、もはやハッカーではなかった。闇を味方につけた一匹の獣として、九条の雇ったプロ二名をスタンバトンと格闘術で無力化する。だが、その代償は大きかった。

脇腹をナイフで浅く切り裂かれ、肩には鈍器による打撃。それでも律の視線は、奥の部屋に拘束されたあすかだけを捉えていた。

「……あ、律くん、だめ! 後ろ……っ!」

あすかの叫びと同時に、隠れていた九条が鉄パイプを振り下ろす。

律は避けることができたはずだった。だが、避ければその後ろにある、あすかを固定している支柱に直撃し、彼女を傷つける。

律は、迷わず背中でそれを受けた。

――ゴッ。

鈍い音が響き、律の口から鮮血が溢れる。

「……がはっ……」

「律くん!!」

律は膝をつきそうになりながらも、最後の一振りで九条の膝を叩き折り、男を床に這わせた。そのまま震える手であすかの拘束を解く。

「……逃げろ、あすか。……警察には、僕が匿名で通報済みだ。……君は、……ただの被害者として、現場を去れ」

「何言ってるの!? 律くん、その背中……血が……!」

律は、意識が遠のく中で、自嘲気味に微笑んだ。

「……計算、間違いだ。……君を助けに来るなんて、……僕の人生で、……最も、……非論理的な、選択だった……」

律の身体が、糸の切れた人形のようにあすかの胸の中へ崩れ落ちる。

いつも冷たかった彼の指先が、流れる血の熱さで、皮肉なほどに「温かく」なっていた。

消毒液の匂いが充満する、深夜の病室。

脇腹と背中を何重にも包帯で固定された律が、薄く目を開けた。そこには、一晩中彼の傍らで、罪悪感に押しつぶされそうな顔をしていたあすかがいた。

「……律くん! 目が覚めたのね。ごめん、私のせいで……」

「……喋るな、あすか」

律の声は掠れていたが、その瞳にはかつてないほどの冷徹な、そして鋭い光が宿っていた。

彼は震える手で、枕元にあった自作の小型デバイスをあすかに差し出す。

「……九条は、まだ終わっていない。警察に捕まっても、あの男の権力ならすぐに保釈されるだろう。……そうなれば、次は君が、本当の死を見る」

「でも、律くんはこんな体で……!」

「だからだ。……工作を、続けろ。……僕の指が動かないなら、君が僕の『手』になれ。僕が病室からバックアップする。……奴を、法的にではなく……僕たちのやり方で、……社会の底まで葬り去るんだ」

律は、あすかの震える手を、血の気の引いた冷たい手で強く握りしめた。

「……あすか。君が信じる『更生』も『愛』も、……奴のような存在の前では無力だ。……僕が『壊し方』を教える。……君は、その手で……僕たちの勝負を、完遂させろ……」

あすかは、律の瞳に宿る覚悟を悟った。

涙を拭い、彼女の手から「甘さ」が消える。

「……わかった。……あなたの論理、私に全部預けて。……九条を、二度と日の当たる場所へ戻さない」

一ヶ月の勝負は、いつしか**「二人の共同復讐劇」**へと変貌した。

病院の一室。月明かりに照らされた二人は、もはやただの高校生ではなく、運命を共にする「共犯者」となった。

数日後。保釈金によって悠々と警察署を出てきた九条。

「結局、金と権力があれば何でも揉み消せる」と勝ち誇った笑みを浮かべる彼の元に、一通の招待状が届く。それは、彼がオーナーを務める高級クラブでの「極秘パーティ」の案内だった。

だが、会場の扉を開けた瞬間、九条の顔から血の気が引いた。

豪華なフロアに座っていたのは、彼が今まで「ボロ雑巾」のように捨ててきた12人の女性たち。そしてその中心には、ドレスに身を包んだあすかが、冷たい炎を宿した瞳で立っていた。

「……な、なんだこれは。何の真似だ!」

その時、会場の全モニターが起動し、入院中の律の顔が映し出される。

律:「……九条。お前の保釈、そしてこの会場への誘導。全て僕の計算通りだ。……今、この会場の音声と映像は、お前の父親の全取引先、そして政財界のネットワークにリアルタイムで配信されている」

九条:「貴様……! こんなことしてタダで済むと——」

あすか:「済まないのは、あなたの方だよ。……ねえ、みんな。彼に教えてあげて。彼が『愛』だと言って弄んだものが、どれだけ重い代償になるのかを」

あすかの合図で、女性たちが一人ずつ、九条が隠してきた「闇の証拠(脱税、暴力、薬物、そして彼女たちへの非人道的な仕打ち)」をカメラに向かって語り始める。

律が病室からハッキングで収集した「確定的な証拠」が、彼女たちの「肉声」という一番強い武器となって、九条の社会的な息の根を止めていく。

律:「九条。お前はもう、ただのクズですらなくなる。……ただの、無価値な『データ』として、社会から消去デリートされるんだ」

九条が膝をつき、絶叫する。

復縁屋の「情」と、別れさせ屋の「理」。その二つが重なった時、逃げ場はどこにも残されていなかった。

律の退院当日。病院の玄関先で、彼はあすかの差し出す「支えの腕」を全力で拒否していた。

律:「……触るな。自力での歩行は、リハビリテーションの論理的工程に含まれている。……それに、勘違いするなよ。九条の件は、あくまで『イレギュラーな妨害への共同排除』に過ぎない」

脇腹を庇いながら、それでも背筋を伸ばそうとする律。あすかはその頑固な姿に呆れつつ、クスクスと笑った。

あすか:「えー? あんなに『僕の手になれ』なんて熱い指示出しといて? 私がいなきゃ、九条にトドメ刺せなかったくせにーw」

律:「(顔面、宮崎の完熟マンゴー並みに赤くなる)……それは、……物理的制約による資源の最適化を図っただけで……! とにかく、一ヶ月の勝負はまだ終わっていない。残りは、あと二週間だ」

あすか:「いいよ。望むところ。……でも律くん、忘れてない? 私の『復縁工作』は、あの九条に捨てられそうだった女の子たちを『自分自身との自信の復縁』っていう形で成功させたんだからね?」

律:「……屁理屈だ。そんなものは広義の解釈に過ぎない。……次のターゲットは、もっと冷徹に、……もっと徹底的に、……」

律がそう言いかけた時。

病院の向こうから、聞き慣れた(恐ろしい)エンジン音が響いてきた。

あすか:「あ、お母さんの車だ! 律くん、お母さんから連絡あってね。『退院祝いに、今日は家であすかちゃんと一緒に”超立体キャラ弁”パーティーよ!』って張り切ってたよw」

律:「(絶望)……ッ!? なぜ母さんと繋がっている……! プロトコルを強化したはずなのに、なぜバックドア(連絡先)が筒抜けなんだ……!!」

あすか:「さあね? ほら、勝負の続きは……お母さんの『特製・紅白ハート型エビフライ』を食べてからにしよ?w」

律は悟った。

九条という悪意を倒すことはできても、「あすか」と「お母さん」という最強の同盟軍を倒すロジックは、この世のどこにも存在しないのだと。

退院して学校に復帰した初日。

律のデスクの中に、一通の「暗号化された封筒」が入っていた。

律は警戒しながら、あすかを連れて旧校舎の屋上へと向かう。

律:「……あすか、これを見ろ。僕の裏サイトの窓口に、直接届いた依頼だ。……『宮崎高校の律とあすかという二人が、最近あまりにも目に余る。一ヶ月以内に、彼らの仲を完全に破滅させてほしい』……だと」

あすか:「ええっ!? 犯人はクラスメイト!? ……っていうか、私たち、そんなに『仲良し』に見えてたの? 心外なんだけどw」

律:「問題はそこじゃない。……依頼主は匿名だが、提示された報酬が異常に高い。これは単なる嫉妬ではなく、僕たちの正体に気づき始めた『誰か』の仕業かもしれない」

律は眼鏡のブリッジを押し上げ、冷徹な目に切り替わる。

律:「……いいか。あすか。これは『一ヶ月戦争』の最終試験だ。僕たちがプロなら、この依頼を完璧に遂行し、自分たちを『別れさせて』みせるべきだ」

あすか:「……え? それ、本気で言ってるの? 私たちが、私たち自身の仲を壊す工作をするってこと?」

律:「そうだ。偽装工作によって、依頼主から報酬を奪い取り、かつ自分たちの『不仲』を世間に証明する。……これこそが、工作員としての究極の論理的勝利だ!」

あすか:「(呆れ顔)……相変わらず理屈っぽいなぁ。……いいよ。じゃあ、世界一ドロドロの『破局劇』、演じてあげようじゃない」

二人は不敵に微笑み合い、拳を……合わせるかと思いきや、律が咄嗟に避けた。

律:「……接触は控えろ。工作はもう始まっている」

翌日の放課後。高校の喧騒が残る教室。

律は、「依頼主」がどこかで見ていることを確信し、作戦を開始した。

律:「……あすか。時間だ。僕の端末に『浮気現場』のダミー画像を転送した。これを今から、わざとらしく僕の画面で見つけてくれ」

あすか:「了解w 役者魂、見せてあげるから」

律がスマホを机に置き、席を立つ。その隙を狙って、あすかが(クラス中に聞こえるような声で)叫んだ。

あすか:「ちょっと待って、律くん!……これ、何!? なんでこの写真に、知らない女の子と手を繋いでる律くんが写ってるのよ!?」

クラス中が凍りつく。律が冷徹な顔で振り返る。

律:「(棒読み気味に)……見られたか。……隠し通せると思っていたが、僕の論理的計算にもミスはあったようだ。彼女は……そう、隣町の私立高に通う、僕の『真のパートナー』だ」

あすか:「最低!! 私との『一ヶ月の約束』はなんだったの!? 3Dオムライスだって、あんなに嬉しそうに食べてたじゃない!!」

律:「(そこは触れるなと言いたげに眉をひそめ)……あれは、単なるカロリー摂取だ。……君との関係は、もう『減損処理デッドロス』の対象なんだよ」

クラスメイト一同:「(ドン引き)……うわぁ……。律、理屈っぽすぎて浮気の見苦しさが倍増してる……」

あすかは目薬を駆使した偽物の涙を流しながら、律の頬を(当たる直前で止めるプロの技術で)叩くふりをした。

あすか:「もういい! 絶交よ!! 二度とそのクマのついた顔を見せないで!!」

嵐のように教室を飛び出していくあすか。

律は静かにスマホを拾い、誰にも見えない角度で、依頼主への「報告用映像」を録画している隠しカメラに不敵な視線を送った。

律(心の声):

(……完璧だ。これで僕たちの『破局』は既成事実となった。……あとは報酬を受け取り、この茶番を終わらせるだけだ……が、……なぜだろう。……あすかの『最低!』という言葉が、妙に胸に刺さっている……)

九条の残党からの脅迫文——『偽装工作はお見通しだ。代償を払ってもらう』。

律はその画面を睨みつけ、次なる防衛策を演算しようとしていた。だが、その計算を狂わせる「最大の外因」が目の前で発生する。

教室の入り口で、あすかがクラス一のイケメンでスポーツ万能な「佐々木」に呼び止められていたのだ。

佐々木:「あすか、さっきの見たよ。律みたいな理屈っぽい浮気男なんて、もう忘れな。……俺なら、君を泣かせたりしない。……放課後、空いてる?」

佐々木は、律への「破局工作」を信じ込み、ここぞとばかりにあすかに急接近する。

あすか:「えっ、あ、あはは……。佐々木くん……」

あすかは戸惑いつつも、背後で自分を観察している(はずの)「依頼主」や「九条の残党」の目を意識し、話を合わせようとする。

だが、それを見た律の脳内回路は、かつてないほどのオーバーヒートを起こしていた。

律(心の声):

(……佐々木。身体能力、偏差値、共に平均以上。社交性は僕の4.2倍。……あすかと彼が接触する時間は、工作上の不確定要素を増大させる。……不快だ。……極めて、非論理的に不快だ……!!)

律は、脅迫文への対策を放り出し、震える指でキーボードを叩いた。

律:「(小声で)……佐々木。お前のスマホに、今から『中学時代の黒歴史ポエム』を全校生徒に一斉送信するバグを仕込んでやる……。……あすかに近づくことは、セキュリティ上の重大な脅威だ……!」

あすか:「(チラッと律を見て)……あ、律くん、目がマジになってる。……っていうか、あれ絶対工作じゃなくて私情だよねw」

律はついに立ち上がり、あすかと佐々木の間に割り込んだ。

律:「待て。佐々木。彼女との会話は、現在『知的財産権の係争中』により禁止されている。……あすか、行くぞ。……僕たちの『本当の破局』に向けた最終ミーティング(ただの連れ出し)だ!」

律はあすかの手首を掴むと、驚く佐々木を無視して強引に廊下へと連れ出した。

誰もいない放課後の渡り廊下。

律に手首を掴まれたまま連れてこられたあすかは、壁際に追い詰められた……のではなく、自ら律との距離を「ゼロ」に詰めた。

あすか:「ねぇ、律くん。……今の、本当に『工作』のつもり?」

律:「(壁に背をつけ、後退りできない)……当然だ。佐々木との接触は、僕たちの破局劇のシナリオにないイレギュラー……。不確定要素を排除するのは、工作員の基本プロトコルだ……」

あすかが一歩、さらに踏み込む。律の鼻先に、あすかのシャンプーの甘い香りが漂う。

あすか:「嘘つき。……律くんの目は、全然ロジカルじゃないよ? ……今のって、ただの『嫉妬』だよね? もしかして、工作抜きで私のこと……好きになっちゃった?」

あすかの顔が、あと数センチで触れそうな距離まで近づく。

律:「(心拍数が宮崎の地鶏が逃げる速度を超える)……そ、それは……! 脳内のドーパミンおよびアドレナリンの一時的な異常分泌による、バグに近い反応であって、……感情的な『好意』と定義するには、……サンプル数が……ッ!!」

あすか:「サンプルなら、今ここで増やしてあげよっか?」

あすかが悪戯っぽく目を細め、そっと律のネクタイを引き寄せる。

律は呼吸の仕方を忘れ、眼鏡が曇るほどの熱量で硬直した。

律:「……ッ、あ……すか……」

その時。

律のポケットの中で、スマホが激しくバイブレーションした。

九条の残党からの、本当の「仕掛け」が発動した合図だった。

【通知:旧校舎屋上に、君たちの『工作の証拠』を設置した。今すぐ来なければ、全校放送で公開する】

律:「(一瞬で工作員の顔に戻る)……チッ、……タイムアップだ。あすか、サンプル採取は保留だ。……『本当の敵』が、僕たちの偽装を暴きに来た」

旧校舎の屋上の扉を蹴破るようにして飛び込んだ律とあすか。

そこで二人を待っていたのは、武装した残党でも、伝説の師匠でもなかった。

レジャーシートを広げ、優雅に日向夏ひゅうがなつのジュースを飲むお母さんと、タブレットを巧みに操る律の妹の姿だった。

律:「(絶句)……な……母さん!? それに、なぜ妹までここにいる……!」

妹:「お兄ちゃん、偽装工作お疲れ様。でも、あの『浮気現場』の合成写真、レイヤーの境界線が甘かったよ? 私が全部解析して、お母さんに報告しちゃった」

妹は律のハッキング技術を(遊び半分で)継承した、恐るべき中学生エージェントだった。

母:「もう、律ったら! あすかちゃんという素敵な人がいながら、あんな見え透いた嘘をつくなんて。……お母さん、悲しくて『特大デコレーション・ペア弁当』を10人前も作っちゃったわよ?」

律:「待て……。ということは、あの『別れさせ依頼』を送ってきたのは……」

妹:「正解。私とお母さん。……お兄ちゃんたちが、ちゃんと『自分たちの気持ち』に向き合えるように、ちょっとした負荷ストレスをかけてみたんだ。……さっきの廊下でのいい感じの映像、しっかり録画済みだよw」

律:「(膝から崩れ落ちる)……抹殺してくれ……。僕のプライバシーも、プロとしての尊厳も、……全てが身内という名のハッカーによって解体された……」

あすか:「(お腹を抱えて爆笑)あははは!! 律くん、完敗だね! お母さんたちの方が、よっぽど腕のいい『縁結び屋』じゃない!」

律:「……ふざけるな。母さんと妹に踊らされたまま、『はい、付き合います』などと……そんなプログラム通りの結末、僕のプライドが許さない……!」

律は突如、妹が広げていたタブレットを奪い取ると、屋上のフェンスを鮮やかに乗り越えた。

あすか:「えっ、律くん!? どこ行くの!?」

律:「僕は、僕自身のやり方で『一ヶ月の勝負』を完遂させる! あすか、ついて来い! ……母さんたちが絶対に介入できない、僕たちだけの『聖域デッドゾーン』へ!」

律はあすかの手を(今度は逃がさないように強く)握り、屋上から非常階段を駆け下りる。

向かった先は、放課後の**「宮崎空港」**。

律:「いいか、あすか。今から一晩、日本中の監視カメラから僕たちの姿を消去してやる。……追跡不能な状況で、明日の朝までに、僕たちの『本当の契約』を結び直すんだ」

あすか:「(走りながら笑って)……あはは! それ、ただの『駆け落ち』じゃない!? 工作員の駆け落ちなんて、前代未聞だよ!」

律:「……駆け落ちではない! 家族という外部ノイズを排除した、完全隔離環境サンドボックスでの対話だ!!」

背後では、お母さんと妹が「あらあら、いい展開w」「GPS、あと5分で追跡可能になるよ~」と余裕で追いかけてくる中、二人の本当の「逃避行」が始まった。

宮崎空港、最終便が飛び立った後の静まり返ったロビー。

律は妹の追跡を完全に断つため、空港のネットワークに潜入し、監視カメラの映像を「30秒前のループ」に書き換えた。

律:「……よし。これでここ一帯は、僕たちだけの『空白地帯』だ。母さんも妹も、物理的にここに踏み込まない限り、僕たちを見つけられない」

律は展望デッキへと続く階段に腰を下ろした。

走り続けたせいで、包帯の巻かれた脇腹が鈍く痛む。だが、それ以上に胸の奥が騒がしかった。

あすか:「……ねぇ、律くん。もういいよ」

あすかが、律の隣に静かに座る。

月明かりに照らされた滑走路が、銀色の帯のように伸びていた。

あすか:「家族から逃げるためにここまでプロの技術を使うなんて、世界中で律くんくらいだよ。……でも、そこまでして隠したかった『本音』って、何?」

律は答えなかった。ただ、カタカタと震える指を隠すように、強く膝を握りしめた。

律:「……僕は、怖かったんだ。……論理ロジックで説明できないものに、自分の人生を預けるのが。……復縁なんて、壊れたものを繋ぎ直すなんて、……そんな不確かなことを信じて、また裏切られるのが……」

初めて、工作員の仮面が完全に剥がれ落ちた。

律:「……あすか。君との一ヶ月の勝負……。僕は、最初から負けていたのかもしれない。……君が九条に立ち向かう姿を見て、……僕の冷徹な計算式は、……とっくに壊れていたんだ」

律はゆっくりと顔を上げ、あすかの瞳を真っ直ぐに見つめた。

律:「……一ヶ月の勝負、……僕の負けだ。……だから、……」

律は、あと一歩でこぼれ落ちそうだった「決定的な言葉」を、強引に飲み込んだ。

そして、ふいっと顔を背け、眼鏡の位置をこれ以上ないほど精密に直す。

律:「……いや、今の言葉は撤回する。論理的に再構築した結果、今回の事態は『外部からの物理的介入(家族)』によるノーゲームと判断するのが妥当だ」

あすか:「えぇーっ!? 今、完全に負けを認めようとしてたでしょ!?」

律は立ち上がり、滑走路の向こうにある夜明けの兆しを見つめた。

律:「認めていない。……あすか、今回の勝負は『引き分け』だ。……だが、これで終わりじゃない。……この一ヶ月で判明した君の『更生ロジック』の不備、そして僕の『切断工作』の甘さ。これらを修正した上で……次の依頼で、決着をつける」

律は、まだ少し震えている手をポケットに突っ込み、あすかの方を振り返らずに言った。

律:「……次の勝負で、僕が勝ったら。……その時は、……今日言えなかったことの続きを、……僕の全演算リソースを使って、君に証明してやる」

あすかは一瞬、驚いたように目を見開いた。

だが、すぐにいつもの、律を翻弄するような悪戯っぽい笑顔に戻る。

あすか:「……ふーん。それって、実質的な『これからもずっと一緒にいてね』ってプロポーズじゃない? 律くん」

律:「(激しく動揺)……ち、違う! 継続的な競合状態の維持と言え!!」

あすか:「あはは! いいよ、受けて立とうじゃない。……でも次は負けないからね? 『復縁屋』の意地、たっぷり見せてあげるんだから!」

朝の空港に、二人の笑い声が響く。

結局、どちらが勝ったのかは誰にもわからない。

ただ、宮崎の街に朝日が昇る頃、そこには以前よりも少しだけ距離の縮まった、二人の「共犯者」の影が伸びていた。

数日後。宮崎高校のいつもの屋上。

騒動は一段落し、律は相変わらず一人でパンダのぬいぐるみ(居眠りパンダ)を膝に乗せてタブレットを叩いている。

そこへ、当然のようにあすかが「3Dハート弁当」を持って現れる。

あすか:「律くん! お母さんから預かってきたよ。今日は『リハビリ応援・立体宮崎牛ハンバーグ』だってw」

律:「(溜息をつきながら)……母さんの学習能力はどうなっているんだ。……だが、効率を考えれば、ここで摂取しておくのが妥当か」

律は慣れた手つきで、あすかの隣にスペースを作る。

二人は並んで座り、空港での「引き分け」については一言も触れない。だが、律のタブレットには、あすかの復縁工作をサポートするための新しいアルゴリズムが立ち上がっていた。

律:「……あすか。次のターゲットの資料を共有した。今度は手ごわいぞ。……僕の『別れさせ工作』を潜り抜けようとする不届き者だ」

あすか:「いいよ。私がその人の本心、全部『復縁』させて救ってみせるから。……ねえ、律くん。勝負の続き、楽しみにしてるね」

あすかが律の肩に、ほんの少しだけ体重を預ける。

律は一瞬硬直したが、今度は逃げなかった。

律:「……ふん。論理的な最適解を出すのは、常に僕だ。……行くぞ、パートナー」

二人は立ち上がり、オレンジ色に染まる宮崎の街へと歩き出す。

誰も知らない、けれど最強の「別れさせ屋」と「復縁屋」。

彼らの一ヶ月戦争は終わったが、二人の「共犯関係」は、まだ始まったばかりだ。

最後までお読みいただきありがとうございます!


実は作者は宮崎在住の中学2年生です。

学校の休み時間や宿題の合間に、コツコツとこの物語を考えました。


作中に出てきた蜂楽饅頭や宮崎の街並みは、僕(私)がいつも見ている大好きな景色です。「宮崎、いいところだな」とか「律とあすかのコンビ、いいじゃん!」と思ってくださったら最高に幸せです。


初投稿でドキドキしていますが、もしよろしければ**【ブックマーク】や、下の【☆☆☆☆☆】**をポチッとして応援していただけると、いつか二人の**『勝負の続き』**も書いてみたいと思っているのでとても力になります


感想もいただけると、泣いて喜びます!

また、もし「ここ、漢字間違ってるよ!」「文章がおかしいよ!」という場所を見つけたら、**【誤字報告】**機能でそっと教えていただけると、めちゃくちゃ助かりますし、勉強になります!


※本作品は、プロットの相談や設定の整理にAI(Gemini )を使用しています。

追記: 短編だと少し読みにくいと感じる方もいらっしゃると思い、読みやすく区切った**「連載版」**も作成しました。

内容は同じですが、毎日少しずつ更新していく予定です。


お好みのスタイルで楽しんでいただけると嬉しいです!


[[連載版はこちらから!>> N5133LV ]]

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