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うちの猫自慢

 虹が家に来てから、何日かすぎた。


 今は、私が協力をしたほうがいいことは特にないらしいので、いままで通り普通に中学校に通っている。


 少し変わったことといえば、私もうちの猫自慢にも参加するようになったことぐらいだ。


うちの猫自慢とは、その名の通り、各々で飼っている猫の自慢のこと。


 もともと私たちのクラスは、猫好きが多いのもあり、それが進化して、私のクラスでは、うちの猫自慢大会というのもできた。


 うちの猫自慢大会は、うちの猫自慢を他の人に聞いてもらい、誰が勝者か公平に審査してもらう、というもの。


 今までは、中学一年生の頃から友達の加奈ちゃんの応援をするだけだったけど、虹が家に来てからは、参加するようにしている。情報を集めるために参加しているだけで、別に、虹の可愛さを自慢したいわけではない。断じて。


 加奈ちゃんは、猫を二匹飼っていて、いままでいろいろな話を聞いて(きかされて)きた。


 飼っている猫の名前が、しめじ、まいたけ、となぜかきのこの名前だったり、キノコの名前なのに、しめじとまいたけはきのこがきらいだったり・・・。


 ほかにもいろいろな話を聞いてきたが、話題が全く尽きてこない!


 ある意味尊敬するレベルの、めちゃくちゃ猫好きな子なのだ。


 話を聞いているのは楽しいのだけど、トイレまで追いかけて話すのはやめてほしい・・・。


 って、最近はちょっと悩み始めてます・・・。




 そんな、うちの猫自慢の圧倒的強者である加奈ちゃんは、猫に関するうわさに敏感で、今日も


 「隣のクラスの○○くんの猫が、病気になったらしいよ!」


 とか、


 「帰り道、△△ちゃんが、狸似の猫見つけたんだって~!」


 など、どこから仕入れてくるのか不思議なほどうわさに詳しい。猫限定だけど。


 そこで、加奈ちゃんが教えてくれた情報やうわさをメモし、後で虹におしえてあげている。


 詳しすぎて、虹がドン引きしていた。


 加奈ちゃんだけにたよるのもわるいので、他の友達にも猫を飼い始めたことをアピールし、猫にまつわるうわさや、情報を集めている。 


 猫のことで加奈ちゃんと話していると、黒猫のクロちゃんを飼っているという松岡くんが机の前にきた。


 「そういえばさ、道路で・・・」


 キーンコーンカーンコーン。


 ちょうど、わるいタイミングでチャイムが鳴った。


 なんでこのタイミングでなるんだよ!


 「はーい、授業はじめるよー」


 先生が入ってきた。


 「やべっ」


 松岡君がこっそりせきにもどっている。


 いやいや、ちょっと待って!


 道路で何が起きたの?地味に気になって、授業に集中できないよ!


 そのせいで、授業中注意されました・・・。恨むぞ、松岡君!


 授業も終わり、私はダッシュで松岡君の席に向かった。


 「で!道路でなにがおきたの!?」


 「最近猫飼い始めたって言っていたから、気になるかなって思って言おうとしたんだけど、そんなに気になっていたんだな!なんか、道路を渡ろうとしたらさ、白い猫がいてさ、めっちゃ可愛かったんだよ!今日一日、いいことある気がする!」


 どんな猫だったか、身振り手振りで説明してくれているけど、私の期待していた、虹関係の話ではなかったので、正直どうでもいい。


 「なぁ、聞いてる?」


 「うん・・・聞いてるよーありがとー」


 がっくりと肩を落としながら、自分の席に戻った。


 その様子を見て、松岡は首を傾げて、白猫あんま好きじゃないのか?と思った。


 なんだかんだで、あっという間に放課後になった。


「ただいまー」


「おかえりー」


 家に着くと、珍しく虹がいた。


 「珍しいね。虹が家にいるなんて」


 「美音に聞きたいことがあったから、帰ってくるのを待ってたんだ」


 「聞きたいこと?」


 「うん、なんか、道路を歩いてたら、中学生ぐらいの男子が僕をガン見してきたんだけど、ちゃんと白い猫だよね?へんじゃないよね?」


 不安そうに聞いてきた。


 そこまで聞いて、松岡君の話が頭に浮かんできた。


 そういえば、白い猫がいたとかなんとか、言っていた気がする。


「へんじゃないよ。たぶん、虹のことかわいいってほめていたから、虹のことが可愛くて、ガン見していたんじゃない?」


「あれ、美音の知り合い?」


 驚いたのか、目がまん丸になっている。


「うん、たぶん同じクラスの男子だと思う」


 虹がホッと息をついた。


 「よかったー。なにか、変な姿だったんじゃないかって、ひやひやしたよ!」


 ・・・それって、いまみたいな感じじゃない場合もあるってこと?耳がもう一個あるとか・・・?


 変な想像をしそうなので、話を切り替えることにした。


 「それで、虹はなにかうわさ話とかあった?」


 「何にも!道路歩いていたら、八百屋のおじちゃんに鰹節もらった!」


 と嬉しそうに、無邪気にいった。


 何にも、って・・・もうちょっと真面目に噂を集めてほしいなぁ。


「よかったねー」


 つい冷ややかな目で見ると、


「あ、いや、でも、ここら辺に、僕の仲間がいそうってことはわかったよ?」


 慌てて弁解していた。


 「そういう大事なことは、もっと早くいいなさーい!」


虹のほっぺらしき場所をつねると、けっこう伸びる。


 「ごめーん・・・反省しているから、はなしてー・・・」


と、情けない声をあげた。


 にょーんと伸びている顔を見て、ちょっとまんぞくしたので、はなしてあげた。


 虹が、ほっぺをしっぽでなでた。


「いたた・・・なんか、ふつうの猫に聞いてみたんだけど、人間の言葉を喋れる猫が、この街にいるとかいないとか・・・」


猫の言葉もしゃべれるんだ・・・。それに、なんでそんなにあいまいなのー!


思わずもう一回つねってしまったが、私も虹に文句を言えるほど情報を集めていなかったので、すぐはなした。


 「僕のほっぺが・・・ちぎれる・・・」


と悶絶していたけど、気にしない、気にしない。


 「・・・ということだから、もし人の言葉をしゃべれる猫にあったら、教えて」


 「了解!」


 虹以外の話す猫に会うのは、初めてだな。どんな子なんだろう。楽しみ!


 「・・・まぁ、猫の姿じゃないかもしれないけど」


 虹がぼそっと何か言ったような気がしたけど、私は聞き取れなかった。


 「ん?何か言った?」


 「何でもない」


 美音が楽しみにしているし、またつねられるのは嫌だから、余計なことは言わないでおこう、と思った虹だった。



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