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・・・言っていなかったっけ?

 「今何時!?ていうかここどこ!?」


猫は啞然として、知らなかったのか、という感じでポカンと口を開けていた。


 「え、うそ・・・言っていなかったっけ?」


うん、全く言っていないよ?全く。


 「ごめんごめん。君は、僕のつけている鈴で呼んだんだ。僕に害を加えない人っていうことだけで、誰が来るかは、運しだいだったけど・・・。」


今、さらっと怖いこと言わなかった?


「じゃあ、カラオケで歌っている最中の人が来たり、喧嘩している人が来たりすることもあるの?その世界中のいろいろな人の中からわたしが呼ばれたの?」


「たとえが絶妙だね・・・。まぁ、そういうことになるのかな。でも、急に呼ばれても大変だろうから、呼ばれた日には、一時間に一回、鈴の音が聞こえるようになっているはず。日本にいる人の中で、飯をくれそうで、あわよくば鈴をとるのを手伝ってくれそうな人がくるといいなって思っていたら、君が来た。」


 どうりで、今日一日鈴の音がするなー、と思ってたんだよね。呼ばれる人の選び方が、適当すぎる気がするけど・・・。


 「話がずれたけど、ここどこ?家への帰り方は?もしかして、知らないとかないよね?」


 そういってにらむと、流石に反省したのか、


 「ここは、僕の秘密基地的な?僕も詳しくは分からないんだよね。行きたいって思ったら、無意識にここにきているから。でも、なぜか帰り方なら分かるよ。ついてきて」


そう言って、とことこ歩き始めた。


ついていくと、さっきまでいた、路地裏のようなところから少し歩き、曲がりくねった、あまり舗装されていなそうな道を進んだ。


 空を見上げると、日が沈みかけて暗くなり、星が輝き始めていた。


 これは、結構時間がたっていそうだ。お母さんをどうやってごまかそう。


 しゃべる猫にあって、あめをあげていたら、鈴を外すの手伝ってくれって言われてさぁ、大変だったんだよ!・・・いや、これはだめだな。たぶん頭おかしいって思われて、精神科に連れていかれる。


 それにしても、道、結構長いな。気がつくと、雑草が生えている道から、コンクリートの道にかわっていた。


 どこまで続くんだろう。よそ見していたら、おいていかれて、帰れなくなりそうだ。


 「はい、ついたよ。」


 猫が、くるっと振り向いた。気がつくと、家の近くの、見知った道に出ていた。


 「ありがとう。そういえば、名前は?毎回、猫って呼ぶのも、ほかの猫と見分けがつかなくて不便でしょ。」


 お礼を言って、名前を聞くと、猫はちょっと驚いたように、こちらを見てきた。


 「名前、かぁ・・・。虹でいいよ」


 わかりやすくていいけど、シンプルすぎないか?


 「これからよろしくね、虹」


 「名前を人間に呼ばれるなんて、初めてだよ」


 少し嬉しそうにしっぽをふった。


 「名前を聞いてくるってことは、手伝ってくれるってことでいいんだよね?」


 さっきまでのうれしそうな様子とは一変、上目遣いで不安げに見てきた。


 「いいよ。手伝ってあげる。密猟者のせいで死んじゃうのはかわいそうだし、なにより、虹たちのような、不思議な生き物にも会ってみたい!」


 こんな猫がいるのなら、狼男とか、雪女とかにも会えるかもしれない。勝手に夢をふくらませていると、


 「会いたいって思ってくれるのはうれしいし、僕が手伝ってくれって言ったんだけど、あまり深入りしちゃだめだよ。なかには、性格が悪いやつらもいるからね」


 珍しく真剣な眼差しでみてきた。


 「・・・それは、危険なめにあうってこと?」


 「そういうこともあるかも知れない。だいたい、相手が密猟者だったり、人間じゃなかったりするからね。あってもらいたいのは、僕の知り合いだし、たぶん大丈夫だと思うよ。でも、僕にとっては平気なことでも、人間にとっては危険なことも多いかもしれない。なるべく危険なことは避けるけど、いざとなったら逃げることを最優先に行動してほしい。」


 引き受けちゃったし、ここまで聞いといて、いまさら無理とは言えないので、


 「大丈夫!私、意外と回復するの早いから!」


 と、安心させるために言っておいた。


 「それ、ぜんぜん安心できないんだけど。けがすること前提じゃん。頼む人間違えたかな・・・」


 なぜか遠い目をしていた。安心させるために言ったのに、逆効果だったようだ。


 「とりあえず、これからよろしくね。そういえば、名前を聞いていなかったね」


 「大滝美音。美しい音って書いて、美音だよ」


それを聞いて、虹がうれしそうに笑った


 「美音かぁ、いい名前だねぇ。ちょうど、鈴関連のなまえだから、美音が呼ばれたのかもね」


 選ぶ条件に、名前が入っているって、どうなんだろう。別にいいけど。


「じゃあ、そういうことで、とりあえず今日は帰るね。いろいろなことがあって、頭がパンクしそう・・・。」


 うん、と虹がうなずいて、ちょこんと道路に座った。


 「それがいいと思う。本当は、一度に教えるつもりはなかったんだけどね。これでも、ざっと教えただけなんだよ。詳しいことは、また後ほどということで。」


 了解、と返事して、私は家に入った。


 ・・・その後、お母さんから、帰ってくるのがおそーい!と雷を落とされたのは、言うまでもない。


 美音が家に入ったのを見届けた後、虹は今日の寝床はどうしようかと考えながら、鈴の音をたてて、とことこと暗闇の中に消えていった。

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