おじいちゃんじゃないって!
楽が起きた。
「あぁ~、よく寝た~!」
いや、よく寝た~!じゃないんだよ。
この、アホ、バカ、えーっと・・・間抜け、おたんこなす!
「あっ!すみませ・・・」
「もういい!もういいよ、このくだり!」
こちらを見ると、土下座をしようとしてきたので、慌てて止めた。
土下座は、もう見たくないし、したくもない。
「あの~。とりあえず、虹よんできてもらえない?」
「・・・そこにいますよ」
後ろでカップヌードルをがっついているのが、虹です。はい。
呼ばれているのに気付いたのか、虹が振り向いた。
口に、ラーメンを詰め込んだ姿で。
もぐもぐ。もぐもぐ。
ごっくん。
・・・うん、そうだね。しっかりかまないと、体に悪いよね。
「あぁ、起きたんだ」
長い時間をかけてかみ、ちゃんと飲み込んでから言った。
「虹~!久しぶり~!元気だったか?痛いことされていないか?なんか前よりも毛並みがきれいになってるな!」
「久しぶり。この家族は、そんなことしないよ!心配しすぎだろ!毛並みは、お風呂できれいにしてもらったんだよ」
虹が楽をしっぽでたたきながら言った。
「え・・・?まさか、そこの女の子にお風呂入れてもらったのか?」
ドン引きしたようにのけぞった。
「入れてくれたのは、違う人たち。別にいいだろ、そんなこと」
ダメなの?というように首をかしげた。
「そっかそっか。なかなか、いいところに拾われてるみたいでよかったよ」
んー、っと安心したように伸びをした。
「で、二人はどこであったんだ?」
「「道端的なとこ?」」
「どこだよ」
楽に、ざっと今までのことを話した。
「よくそんな簡単に受け入れられたね」
そんな、信じられない、というような目で見ないでほしい。
これくらい受け入れられるのは普通だって、たぶん。
「で、楽・・・さんって、本当に密猟者につかまってたの?」
このままだと話が進まなくなりそうだ。
「あっ、楽でいいよ。んー・・・。うん」
気まずそうに、うなずいた。
「え、じゃあ、檻の中に入っていた食べ物につられてつかまったって本当?」
「うん・・・」
「へぇー」
虹の冷たい視線が楽に向けられた。
「やっぱ、バカだ」
氷点下なみに冷たい視線を受け、楽は涙目になった。
「だってさ、期間限定の、もつ煮味のクッキーが檻の中に入っていたんだよ?食べるしかないだろ?」
ん?もつ煮味のクッキーって・・・前、海斗がもらってきたやつかなぁ。たしか、あんまりおいしくなかった気がする。
期間限定っていう言葉につられるのはわかるけど、檻の中に入っているって時点で、気づくでしょ!
同じようなことを虹も思ったのか、
「そんなわかりやすい罠に引っかかったのか、楽。同じ地域生まれとして悲しいよ」
氷点下とか比にならないくらいの、さらに冷たい目になっていた。
って、ちょっと待って、
「虹と楽って、同じ地域で生まれたの?」
今、さらっと言ってたけど、初耳だよ!?
「あぁ、まだ自己紹介していなかったっけ。ご存知の通り、楽です。音楽から生まれました!名前は虹につけてもらったから、シンプルになったよ。虹とは、同じ地域で生まれた、友達でーす!」
「友達というか、腐れ縁みたいな感じだけどな」
「あぁぁ・・・」
床に楽が崩れ落ちた。
どんまい!
そんな楽を無視するかのように、虹にちらりと見られた。私もやったほうがいいってことか。
「えーっと、大滝美音です。好きな食べ物はきな粉餅で、嫌いな生き物はムカデです」
おい、本人聞いてないじゃんか。
まだ落ち込んでいるよ。
「打たれ弱いところは楽に似てるね」
「・・・似てない」
拗ねて、プイっと横を向いてしまった。
一方、楽は、
「俺、虹に似てるって!」
シャキッと立ち上がり、にこにこしている。これだと埒が明かないな。話を切り替えるか。
「そういえば、何で私が虹と暮らしているってわかったの?」
「いやー、虹がこの家に入っていくのが見えたから、何日か虹や美音の行動を見張ってたんだよ!」
それっていわゆるストーカーだよね?
「さわやかに言えば、何でも許されるって思ってない?」
「実は思ってる」
おいおい。
「あ、もしもし?警察ですか?」
「ちょ、ちょっと落ち着こうか!一回話を聞いて!?」
「聞いたうえで、判断したよ!つまり、楽はストーカーってことでしょ?全然反省してなさそうだし!」
うぅっ、と楽がたじろいだ。
「ストーカーじゃなくて、虹を心配した友人の英断って言ってくれない!?」
「どれだけ美化したらそんな風に言えるんだよ」
はぁ、と虹がため息をついた。
「それより、その携帯電話をなんとかしよう?相手、たぶん困ってるよ」
「「あ」」
「嫌だーーーー!俺、悪いことしてないもん!仕方なかったもん!」
「大学生くらいの外見で、かわい子ぶるな!それを使っていいのは、高校生までって私の中で決まってるの!」
「ひどいっ!偏見!横暴!まだ九十歳手前で、そんなに年取っているほうではないのに!」
え・・・?つい、ぽとっと携帯を落としていたので慌てて拾い、虹をガン見した。
「・・・そんな見ないでよ、照れちゃうってー」
否定しないってことは・・・
「噓でしょ?噓だよね、噓って言って!」
目を見開き虹に詰め寄った。私の気迫に圧倒されたのか、怯えて小さくなっている。
「ぼ、僕はまだ、ななじゅ・・・」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
聞きたくなかった!今まで一緒に暮らしてた猫が、
「まさかのおじいちゃん!」
「「美音、ちょっと失礼じゃない!?」」
「まだ若いほうだからね?」
そうだそうだ!と楽もうなずいた。
「・・・ちょっとうざい」
「「なんで!?」」
床に崩れ落ちた二人は置いておいて、電話を何とかしよう。
さすがに警察に電話するのはまずいので、一番上にでてきた連絡先にかけていたけど・・・。
誰にかけたんだろうか。
いつのまにか復帰した二人と恐る恐る画面をみてみると、お母さんだった。しかも電話に出てない。
「良かったー!美音の友達の少なさに救われた!ありがとう、友達少なくて!」
「失礼だろ!きっと、最近たまたま、お母さんに連絡してたんだよ。たまたま!」
「おじいちゃん二人は黙ってて!」
「「だから、おじいちゃんじゃないって!」」
その後もしばらく、同じようなやり取りを繰り返した。




