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僕の恋が恋でなくなるとき

作者: 風の旅人


雪が散らついていた。

僕だけを乗せて最終ホームを目指す二両編成の電車。

遠くの光に向かって進むスピードは、僕には少し速すぎて深呼吸している暇もないから途中下車してしまう。

夜だからレールの彼方は見えなくて、走る電車のライトに照らされ、少しずつ顔を出してくる。


たくさんのさまざまな感情を詰め込んで舞い降りる小雪たちはワイパーにかき消され、幻のように心にだけ足跡を残す。

君に恋をしたんだ。

会うだけで楽しくて満たされて・・・。

思いを伝えたら電車に揺られて夢見心地で雪に見守られていたことが嘘のようにきっと、この恋も恋でなくなってしまう。


本当に君が好きだから心が痛くて自分を庇うように君に遠慮がちに接してしまう。

こんな本気の君への思いも言葉に出したなら消えてしまいそうで・・・シャボン玉が瞬時に弾けるようで、風船が手の届かない空をも越えて見えなくなりそうで・・・。


僕の心が君でいっぱいになり、勝手に心の中の君が大きくなりすぎて僕は魔法をかけるんだ。

君がこれ以上、大きくならないように、僕の心から飛び出して消えてしまわないように。


僕の恋が恋でなくならないように、胸の傷が癒えるまでは僕の思いは伝えないでいよう。

長い月日を重ね、ありのままの僕を知ってもらえたなら、この切ない気持ちを伝えよう。

伝えるその日まで切ない気持ちが溢れ出して、僕自身が消えてしまわないうちに・・・。


レールの先が少しずつ姿を現しては消えていくように、空から舞い降りる無数の雪たちも心に溶け込んでいって深く染み込んで、時折、傷として蘇るんだ・・・。


今こそ僕は君に胸のうちを伝えられる。

越えられなかった境界線、同じレールの上を走っていた自分。

君への切ない気持ちが僕に翼をくれた。


あの時の光景を見おろす僕は、今のほうがずっと切なくて君への扉をノックしていた。

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