知らない部屋
目が覚める。
そこに広がるのは、青空ではなく木で組まれた天井。
周囲はこれまた木で作られた壁で、狭い空間にはドアと窓と机と、僕が寝ているベッドがあるだけ。
起き上がり、床に立つ。
ぼんやりしたまま、なんとなく窓へ歩き出す。
窓には、僕の知らない街並みが写された。
木の柱と石の壁の欧風な家が立ち並び、ポツポツと塔や他の倍以上大きな建物が存在感を放っている。
向こうには周囲を圧倒する城が優雅に、雄々しくそびえ立つ。
僕がいる建物の直ぐ側の大通り、とても賑やかで栄えている。様々な意味で。
歩いている人の中にはいわゆる亜人や獣人、羽の生えた人。実に多種多様。
格好も実に面白くて、異世界っぽい。
所狭しと並ぶ出店は、見たことあるようないような、不思議な物ばかり売っている。
視界に映った全ての情報が、僕を興奮へと導く。
外へ出よう、きっと面白い。
そんな直感が僕の中で叫んでいる。
すると、後ろの方から、コンコンコンとドアを叩く音が聞こえた。
「おーい、起きましたか?」
可愛らしい女の子の声だ。
はじめて聞くはずなのに、聞いたことがあるような…
また、コンコンコンとドアが鳴る。
「おーい、まだ寝てますかね?起きていたら返事してくださーい」
あぁ、これ出たほうが良いのか。
そう思ってドアを開いた。
そこに立っていたのは、声通りの可愛い子だ。
栗毛色の髪を三つ編みにしていて、大きな碧眼は宝石のようだ。
紺主体のシスターの礼服がよく似合っている。
「よかった、気がついたんですねトーヤさん。体は大丈夫ですか?」
「はい…なんとも」
そういえば、左腕に痛みがない。
見ると、噛まれた傷なんてなかったかのように消え去っていた。
「あれ?左腕が…」
「完全に治ってませんでしたか?すみません」
「いやいや、全然なんともないんですが…」
どうやって…まさか!
回復魔法!
異世界だよ、きっとそうだ!
ん?
あれ?
「なんで僕の名前を?」
「すみません、勝手に身分証を見させて貰いました」
「身分証?」
そんなん持ってな…
いや、まて。
もしかして、あのよくわからんかった板のことなんか?
それならホント神様々だなー、ありがたい。
ま、そんなことは置いといて。
僕が気絶していたところを運んでくれたのはこの子ってことだよな。
なら感謝しないと。あとナンパも。
「とりあえず、危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
「あぁいえいえ、こういう時は助け合いですから」
「あとあなた、お名前は?」
「ウェールです」
「僕、この街に来たの初めてでして、いろいろ案内し…」
ガチャ
向こうの方で、扉が開いた。
「おーいウェール!」
「今帰ったよー!」
二人の男女の声が聞こえた。
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