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第六話 恐怖! 神託が聞こえると言い張る女!

前話にて加筆修正がございます。

もしよろしければ、ご確認ください。


コンコン、と扉を叩く音が聞こえた。

どうやら、昨晩、冒険者ギルドから送られた手紙のとおり、オレ──『千剣』のメイの弟子になる女が来たらしい。


外の弟子候補にぶつけないようにするため、ゆっくりと扉を開く。


(あァ? 目に包帯を巻いてやがる・・・本当に盲目なのか)


ギルドから、「盲目だが、目は見えている」というあまり良く分からない情報を受け取っていた。

が、付き添いが見当たらないあたり、ギルドはありのままの情報を伝えていたらしい。


「オマエがオレの弟子になりたいって冒険者か?」

「そうです。アヴィっていいます! ところで──」


「──貴女は神を信じますか?」


「おっと、ちょっとマズいか?」


窓に、今のメイの顔が反射して映り込んでいる。

梅干しよりも顔にしわが寄っていた。


(いや、こいつ神殿出身者だし・・・普通の神殿出身者は皆こんなもんなんだ・・・よな・・・?)


「ま、まあ入れよ」

「失礼します──あっ!」


アヴィが扉の段差でこけた。

メイは咄嗟に両手を前に差し出し、アヴィの身体をキャッチする。


(妙に体が軽いな・・・16歳とは思えない)


本当にこんな軟弱者が自分の弟子になれるのか、少々不安になってきた。

ごつい男なら雑に扱っても心は痛まないが、今回の相手は16歳の少女だ。

顔に傷でも出来たら、将来的な損失はかなり大きくなる。


(責任も取れねえしなあ・・・あん時と違って)


そんな事を考えながら、メイはアヴィをお姫様抱っこで運び、木の椅子に座らせる。

メイはアヴィの正面に位置する椅子を引き、ガタンと雑に座る。


「ここにはどうやって来たんだ?」

「歩いてきました」

「あ、歩いて!?」


アヴィがメイの依頼を受注したプロキオンから、メイの居る小屋までの行き方は、山を一つ越えるか、川を船で下るかの二択だ。

ということは──


「山を越えて来た・・・と?」

「はい。頑張って越えてきました!」

「え? 目が見えないんだろ?」

「見えません」

「じゃあどうやって周囲の・・・障害物とかを把握してんだ?」

「えっ・・・」

「あっ──」


「──神のお告げです」


「なに言ってんだオマエ」


まず大前提として、彼女──アヴィが信仰している宗教の名は『葬蒼(そうそう)教』。

『葬蒼教』の詳しい教えはあまり覚えていないが、その宗教で『神』がどういう扱いなのかは知っている。


(『葬蒼教』の神様は、全生命の死後の行き先を審判するっつーもの。お告げなんてするようなやつじゃねぇはずだ。・・・ちょっと検証してみるか)


メイはアヴィのいるリビングから離れ、キッチンからコップを手にして戻ってきた。

趣味で作った、横に猫の柄が焼いてあるかわいいコップだ。


「今、オマエの前に何が置かれたか分かるか?」

「? コップですよね。猫さんの柄がかわいいですね!」

「へへっ、そりゃありがとぉう・・・って違うッ!」


神のお告げとやらはリアルタイムで届くらしい。

つまり、神のお告げでは割とありがちな、起床前後に一日分の情報をまとめて叩きこんでくるタイプではないらしい。


「え、それもアレ? 神のお告げで知ったの?」

「はい!」

「目の前にコップが置かれたよ、って?」

「目の前にコップが置かれたよ、って!」

「コップにはかわいい猫の柄がついてるよ、って?」

「コップにはかわいい猫の柄がついてるよ、って!」

「神様が?」

「神様が!」

「わざわざ?」

「わざわざ!」

「猫の柄を報告してくれるの?」

「猫の柄を報告してくれます!」


訳が分からん。

それはもう神ではない。ただの介護士だ。


だいたいなんだ。かわいいって。

メイの陶芸能力は、所詮趣味の範囲を出ない程度のものだ。

もし神が本物なら、メイは「神」が「かわいい」と評するほどのコップを作れる天才になってしまう。


(・・・まあ、スゴイ魔術師はちょっと頭が変らしいし、オレのコップはかわいいし、これくらいは・・・誤差の範囲か!)


「・・・今日はもう遅いし、依頼の契約書通り、飯はオレが用意する。風呂はもう沸かしてあっから、好きに入れ。現時点で、なんか質問あっか?」

「あの、契約書に『1日3食』って書いてあったんですけど、私、これから3食分食べるんですか?」

「アホか! ありゃ朝、昼、晩で3食出すって意味だわ! 朝昼抜きだから、夜に3食分食うって・・・食い意地張り過ぎだろ!」


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