表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/19

第三話 太陽


「すまない、仲間に治癒魔術を施してもらえないだろうか。助けてもらった立場で、烏滸がましいことを言っているのは分かっている。けど・・・」


レマいわく黄金の角と瞳を持つらしい青年に話しかけられた。

なにか布の擦れる音がするので、多分、包帯を巻きながら話し掛けているのだろう。

だが、残念なことに──


「私、治癒魔術が使えないんです・・・」

「ゔぇっ!? う、ウっソぉ、上級神官でしょぉ!?」


『今話しかけて来たのは、髪、牛みたいな角、瞳、その全部が赤色の・・・20代女性ですわ。・・・無駄に乳がデカくて腹が立ちますわね』


「あっ、上級神官だっていうのも嘘です」

「あぁんたウソまみれじゃぁん!」


方法はひとまず置いておいて、少なくとも彼らを助けたのは私なのに、酷い言われようだ。

私は神殿を出る前に回収した、薬草で出来たマスクを差し出す。


「このマスク、薬草で出来てるので・・・これでどうにか・・・」

「なんっ・・・なーんかその言い回しだとアタシらが悪いやつみたいじゃーん!? ごめんてぇ、言い方悪かったよぉ・・・じゃあ、有難くマスクもらいますぅ!」

「ちなみに、そのマスク使用済みです」

「なぁんでわざわざそれ言うのぉ!?」


どうやら喋り方が大袈裟なだけで、この赤い髪の女は悪い奴では無さそうだ。


「おい、今から薬草体に刷り込むけどいいねっ?」

「ぅ・・・ん」


『赤い女に薬草を塗りこまれて、体を包帯でグルグル巻きにされてるのは・・・石堀人(ドワーフ)の男、武器がなんでしょう・・・大砲とブーメランを溶接したみたいな・・・なんか変なやつですわ!』


石堀人。

魔族の存在は知らなかったが、この種族に関しての知識なら持っている。

基本的な身体構造は人間と同じだが、身長の成長が140センチ程度で停止する小柄な種族であり、金属を操る魔術を生まれつき行使できる特徴をもつ。


「あ、言い忘れてた! アタシん名前は『アンタレス』、こっちの包帯バカが──」

「ど、どうも・・・『フリーマン』って言いま──あだだだッ!? 痛いよッ!? バカッ!」

「はいごめぇんごめーん、ごめんなさぁーい。んで、あっちで馬を撫でてんのが・・・って分かんないか。ごめん・・・」


性格がガサツなのか繊細なのかあまりはっきりしない、赤い女──アンタレスが、申し訳そうな声を上げた。

その裏でのたうち回っている男がフリーマンという名らしい。

先程まで死にかけていたのに、薬草を塗りたくるだけで速攻治るあたり、かなり体が頑丈なようだ。


全員の名前を覚えられるか、少し不安になってきた。


「なんとなくはわかるので、名前と一緒に外見情報も教えていただけませんか?」

「なんとなくは分かんだ・・・すごいじゃぁん! じゃ、あっちで馬ぁ撫でてる、動物以外に興味を持たない、黒髪黒目のジジィが『ワイセイ』ねー。いちおー魔族なんだけど、昔の戦争で角を抜き取られてるから、見た目はほっとんど人と一緒。性格が穏やかの権化みたいなやつだから、気楽に話しかけたってよね」


『少なくとも、外見情報にウソはありませんわね』


「で、馬車の傍で休憩してるのが、青髪青眼の美少女、スピカちゃん!」

「・・・誰が美少女だ」


苛立ちの混じった、気だるげな低い声が聞こえた。


「・・・ま、聞いてのとーりカッタぁい性格。昔に右目を戦いで失くしちゃってて、それ以来は剣を持つのも辞めちゃっててさ。アタシは好きだったんだけどナー、あんたの大剣裁き!」

「知らん、好きに言え、もう剣は使わん、なんだあのアホ専用の武器は、魔術の方が強いんだから剣を振る意味なんて無いだろうが」

「なんか急に拗ねちゃった・・・」


『こちらも嘘はなさそうですわね。ただ、「今は剣を使っていない」というのは少し怪しいですわね。見惚れそうなくらい綺麗な筋肉が、かっなりしっかりついていますもの』


「で、盗賊と戦ってくれたのが・・・」


足音が近づいてくる。

鎧の擦れる音をかなり小さくして歩けているあたり、戦士としての実力は高い・・・と思う。


「ソルだ。色々と・・・ありがとう。そういえば、あなたのお名前は・・・?」

「アヴィです! プロキオンに向かってる途中であなたたちのことを見かけた・・・感じた? ので寄って来たんですけど、助けられてよかったです」

「ああ、プロキオンに向かっている途中だったのか。僕たちもプロキオンに向かっている途中でな。礼もかねてだ、僕たちの馬車に乗らないか?」

「乗りたいです! 乗せてください!」

「良い返事だ。じいやー!? 修理は終わったかー!?」


少し遠くで「はいはい! もう終わらせてますよー!」という元気な老人の声が聞こえた。

おそらくこの声の主が『ワイセイ』だろう。


「それじゃあ、いこうか」

「はい!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ