十七話 双剣のメイ
ソーオリオン家の、応接間に三人の人物が集まっていた。
まずは私、スピカ・ソーオリオン。
次に、私の父、そしてソーオリオン家の当主である、「ベテルギウス・ソーオリオン」。
最後に、ソーオリオン家と同じく剣の名家である「ウルフェスト」の当主、「アダラ・ウルフェスト」だ。
父がアダラ様を呼んだのは、昨日メイに起きた「木剣が浮遊して追いかける」という怪現象の原因を探り、解決するためだ。
なんでも、父は怪現象を「ソーオリオン家と敵対する貴族の魔術攻撃である」、という可能性を疑っているらしい。
ウルフェスト家は剣の名家でありながら、「魔術」の名家でもある。適材適所であろう。
「いやあアダラ君、お子さん──お名前は『シリウス』だったかな──が生まれて忙しい時期に呼んで申し訳ないね・・・もっと子供の傍に居てやりたい時期だろうに」
「いえいえ! ベテルギウス様には幼少から良くしていただきましたから」
「そうか・・・なら、遠慮なく甘えるとしよう。スピカ、メイを呼んできてくれるかい?」
私は父の言葉に頷き、私室で「やだーっ! まだお昼寝するーっ!」と駄々をこねるメイをなんとか説得して連れて来る。
「メイ、挨拶を」
「め、メイです。こんにちは!」
「初めまして、私はアダラ・ウルフェストといいます。・・・ベテルギウス様、ここまで元気になったようで良かったです」
「ああ、そうだろう、そうだろう!」
父は相変わらずの子煩悩で、アダラの言葉に満面の笑みを返す。
「では、始めても?」
「ああ、よろしく頼むよ」
「メイ様、お手に触れてもよろしいですか?」
「・・・姉様」
「大丈夫だ。アダラ様はメイに憑いている悪霊が、どんなモノかを見に来ただけだから」
生まれてから数か月前までの長い期間、ソーオリオン家の者としか会話をしたことが無いメイからすれば、アダラ様が恐ろしくて仕方ないのだろう。
だからといって、私に確認を取るのは辞めてほしい。
年齢的に難しいとは思うが、もう少し自分で考える力を養ってほしいものだ。
(私も、いつまでこの家に居られるか分からんのだからな)
「・・・わかった」
「それでは、失礼しますね」
アダラ様がメイの前に跪き、目線をメイの高さに合わせる。
それから、メイのふっくらとした可愛らしい手に触れた。
私が幼い時にも来てもらったため知っているのだが、アダラ様は「手相」を見る事で、その者の「状況」や、その状況の「因果」を知ることが出来るらしい。
アダラ様はメイの手からそっと指を離す。
メイはアダラ様の魔術が終わった瞬間に、とてとてと私の方に走り寄って来た。
「ぎゅー!」
「ふふっ。はいはい」
(・・・かわいいな)
ほんわかとしているメイと私に対して、かなり神妙な面持ちの父。
その父に、困惑の色を浮かべたアダラ様が告げた。
「・・・昨日の怪現象、起こしたのはメイ様です」
「は!? どういうことだ、メイは魔術を使えないはずだが・・・」
「どうやら、体の回復とともに、眠っていた魔術の力が目覚めたようです」
ハグをしたあと、近くのソファーに座らせたメイが、純粋な瞳で問いかける。
「マジュツってなに」
「昨日の不思議な出来事を、メイが自由に、いつでも起こせるようになる力だ」
「・・・わたし、姉様みたいな剣がいい」
「ふふっ。もっと元気になったら、教えてやるさ」
「ほんと!? やったっ!」
メイと私が喋っている間、ずっと思考を巡らせていた父が、重々しく口を開く。
「そうか・・・。これから、メイにはどうさせれば良いだろうか」
「私の昔の魔術の師匠を呼びましょう。彼なら、メイ様の魔術の制御の仕方も教えてくれるかと」
「分かった。紹介状を頼む」
「はい!」




