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第十二話 虚星


かなり思想の偏った本を読んだ次の日、アヴィはメイに連れられて『アンタレス』の冒険者ギルドに来ていた。

始めて訪れた時とは違い、扉を開けても静寂が訪れることはなかった。


「おっ! お嬢ちゃん、久しぶりだなぁ! 怪我はしてねえか?」


(・・・誰だろう? 聞き覚えのある声だから、確実に知り合いだとは思うんだけど)


メイは現在、「アヴィが倒せるレベルの『魔物(モンスター)』の討伐クエスト」を受付嬢のところで探してくれている。

つまり、会話のボールをメイにパスするといった「逃げ」の択が使えない状況だ。


『アヴィさんが冒険者ギルドに来た時にエスコートしてくださった冒険者様でしてよ。確か、二つ名は「竜の地の荒くれ者(ドラゴンバーバリアン)」。相変わらずムキムキですわ~!』


レマに教えて貰うまで、自分に良くしてくれた人物と、目の前の人物の声を紐づけられていなかった自分を恥じつつ、アヴィはにこやかに言葉を返す。


「はい、色々とありがとうございました! そういえば、お名前を聞いてもよろしいですか? 私の名前はアヴィです」

「ジークだ。冒険者として活動するうえで、分からないことが出来たらいつでも聞いてくれ!」


遠くから、ジークの仲間だと思わしき人物が冒険所ギルド内に響くくらいの大声で叫ぶ。


「ジークゥ! もう出発してェんだけどォ!?」

「分かっとるァ! すぐ行くからちっと待っとれァ! ・・・じゃあ、アヴィ。死ぬなよ? 死で訪れてくれんのは死神だけだ。幸せは帰っちまうからな。それを念頭に置いて動くようにしろ。いいな?」

「ご忠告ありがとうございます!」

「おう!」


ジークは分厚いゴツゴツとした手でアヴィの頭を撫でた。

アヴィには居ないが、父親という存在はもしかしたら、こんな感じなのかもしれない。


温かい手と、ずっしりとした足音がアヴィから遠ざかっていく。

それと同時に、メイの軽い足音が近づいてきた。


「アヴィ、殺すぞ」

「え・・・?」

「ゴブリンを」

「あっ・・・良かった!」

「?」


そんなこんなで、ちょっと言葉足らずのメイとともに、冒険者ギルドを出た。

その後、銅貨4枚で、メイが体調を崩すくらい揺れた馬車で移動。

今は、吐き気と格闘中のメイの背中をさすりながら、アヴィたちは「目的地」に向かって森の中を歩いているところだ。


「うぐぅ・・・」

「メイさん本当に大丈夫ですか? 少し休んだほうが・・・」


レマによると、メイの顔色は月よりも青白いらしい。

アヴィには理解できないが、多分大変なことになっているのだろう。


「いんや・・・どうせすぐに治るから、そんなに気にしなくていい」

「じゃあ気にしません」

「割り切りがうめえな・・・うぷ。今から攻めるのは『ゴブリン』が住処にしている洞窟だ。本当にマズい状況になったらオレが助けに入っから、試しに一人で洞窟内のゴブリンを殲滅しろ」

「え、ええ・・・」


(というか、ゴブリンってなに? 魔物ってこと以外なにも知らないのに・・・)


『ゴブリン・・・緑色の皮膚を持つ、一部の特殊個体を除けば平均身長140センチの人型の魔物ですわ。こん棒や鉄剣といった、人間の兵士が使うような武器を使いますし、最低でも人間の子供レベルの知性を持ち、長生きをした個体は火薬などを用いた高度な罠を作れるほどには賢くもありましてよ』


聞いている限り、ゴブリンはかなり手ごわい魔物のような気がする。

少なくとも、冒険者になったばかり──「銅」級のアヴィが軽く倒せるような相手ではないのは確かだ。


「メイさん、これ本当に銅級向けのクエストですか?」

「え゛、う、うん。銅級だよ!? オレ、アヴィにウソ吐いたことある!?」

「すっ・・・ふゥー・・・そっすね。メイさんヤサシーデスモンネー」


どうやら銅級のクエストではないらしい。

そもそも、このクエストを受注したのはアヴィではなくメイだ。

つまり、「『紅玉級(メイ)』の受けたクエストを、アヴィに代行させている」という流れである以上、このクエストは最高で紅玉級の難易度の可能性がある。


「レマさん、紅玉級ってどれくらい強いんですか・・・?」

『どーかしらねぇ・・・冒険者の強さは同じ級でもかなり差がありますから・・・。でも、ゴブリン3体で銀級──銅級の2つ上──1人分に匹敵しますから、厳しい戦いになるのは間違いなくてよ」

「えぇ・・・? 私、確実に勝てないじゃないですか」

『それなら、頭を使えば・・・いや、小手先の技術でどうこう出来るような戦力差ではありませんわね』


頭を、使う。

今、自分は何を持っているのか、何が出来るのか。

アヴィは思考の海の底へと沈んでいく。


(ゴブリンはこん棒や鉄の剣を持っているけど私には武器が無いいやそれなら <星に触れる手(アステラ・ハンド)> を使って森から大木を引っこ抜いてそれを巣に直接叩きこめばいや大木が巣に運び込まれている状況を傍観してくれるほどゴブリンは馬鹿ではない・・・バカでは、ない・・・そうか)


「・・・では、アドバイス通りに頭を使いたいと思います。ただし、使うのは私ではなくゴブリンですが。その前に、レマさんにお願いしたいことがあるんですけど・・・」

『なんでもおっしゃってくださいな』

「レマさんって、ゴブリンの巣の内部の状況を私がここにいる状態でも見れたりしますか?」

『出来ますわよ。・・・あっ、そういうことですのね? わかりました、行ってきますわ~!』

「お願いしますね!」



この物語のタイトルって、もっと分かりやすい方が良いのでしょうか。

でも、無駄に小難しい感じがこの物語の強みな気もするんですよね。

分からない。俺は雰囲気で小説を書いている。


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