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第十一話 罪の象徴


アヴィとメイはエーオースの店を後にして、書店に向かっていた。

白杖を小気味よく鳴らしながら、アヴィはメイに話し掛ける。


「メイさんとエーオースさん、ただのお客と店員の関係にしては仲が良さそうでしたけど・・・結構長い付き合いなんですか?」

「あー・・・。昔、仕事でへまァして、その・・・結構苦労してよ。そん時に色々良くしてもらったんだよ。もう17年の付き合いになるな」

「17年・・・私が生まれるよりも前からの付き合いなんですね。・・・え、メイさんって何歳なんです?」

「絶対言わねェ」

「なんでですか!」

「言ったら絶対『年齢の割に身長低いんですねェ! ぷゥーくすくすくすゥ!』って言うだろ!」

「私、そんな頭良さそうじゃないですよ?」

「今のモノマネのどこに知性を感じたんだよ。 ・・・っと。着いたぞ」

あでやかアヴィとメイはエーオースの店を後にして、書店に向かっていた。

白杖を小気味よく鳴らしながら、アヴィはメイに話し掛ける。


「メイさんとエーオースさん、ただのお客と店員の関係にしては仲が良さそうでしたけど・・・結構長い付き合いなんですか?」

「あー・・・。昔、仕事でへまァして、その・・・結構苦労してよ。そん時に色々良くしてもらったんだよ。もう17年の付き合いになるな」

「17年・・・私が生まれるよりも前からの付き合いなんですね。・・・え、メイさんって何歳なんです?」

「絶対言わねェ」

「なんでですか!」

「言ったら絶対『年齢の割に身長低いんですねェ! ぷゥーくすくすくすゥ!』って言うだろ!」

「私、そんな頭良さそうじゃないですよ?」

「今のモノマネのどこに知性を感じたんだよ。 ・・・っと。着いたぞ」


『書店の名前は「艶星(アデボシ)書店」・・・「艶星(エンセイ)書店」? 読み方が分からないくらいには、この辺りでは見ない響きの名前ですわね。ただ、「アストレイア・イミテーション」の4倍くらい建物が大きいので、私が知らないだけで有名な店なのかもしれませんわ』


博識なレマでも知らないことがあるようだ。

ただ、その不思議な響きから察するに、この書店は外国から来たものなのではないだろうか。

それならレマが知らなくても無理はないだろう。


そんなことをぼーっと考えていると、メイにグイッと腕を引っ張られた。

急いで足を前に動かし、書店に足を踏み入れる。


扉を閉めると、途端に音の情報量が減った。

防音の魔道具を使っているのだろう──大通りと面しているにも関わらず、森の奥のような静寂が満ちている。


「アヴィ、分かってるとは思うが、ここでは静かにしろよ。オレはオマエ用の本を探してくるから・・・その間、暇だろうし、適当に好きな本を読んでろ。1冊くらいなら買ってやっから」

「はい、いつもみたいに静かにしてます」

「オマエ前から思ってたけど虚言癖あんな・・・?」


メイに軽くあしらわれた後、足音が離れていくのを感じながら、近くの本棚から本を手に取る。


(・・・タイトルが直感的に分からないのに、どうやって好きな本を選べばいいの? ・・・今更か)


『アヴィさんが手に取った本のタイトルは「現代における魔族と人間の戦争の流れ」、ですわ。筆者は「ワイセイ」・・・ワイセイ? 前に助けた馬車の御者と同じですわね。少し気になります・・・アヴィさんはこれ、読みたくて?』


アヴィはこくんと頷いた。

筆者の名前に関してはたまたまだろうからそこまで惹かれないが、内容については気になる。

シリウスはただの一度もアヴィに「魔族」について教えてくれなかった。

この事実がどうも気になるというか、引っ掛かる。


(シリウスが私に魔族について語らなかった理由が分かるかもしれない)


『じゃ読み上げますわね。本を開いてくださいな。・・・なになに? あ、1ページ目は目次ですわね。次のページを開いてくださいまし。・・・えーと──』


『──魔族。人間とは異なり、どの者も知恵や膂力に優れている、完璧な種族である』


(・・・あれ、本選び間違えましたかね)


『しかし、質より量というのがこの世の真理。ネズミのようにうじゃうじゃと増えた人間に、我らの覇道が阻まれているのが、今日の情勢です』


(この本の著者、絶対名前が一緒なだけの別人だな。思想がすごい・・・きつい)


『遥か昔から続いてきたこの流れが、特に強まったのは今から17年前のある事件が原因です。通称「サルマキス事件」。魔族の国、「アースラディア」の第2王子が戦場にて人間の女に恋をし、子供をもうけさせたが、魔族のことを無条件に拒絶する人間の兵士が、魔族の王子を殺した事件。魔族という油にわざわざ火を注ぐ・・・』


(戦争の流れが強まった理由は分かったけど、結局、人間が魔族を遥か昔から毛嫌いしている理由は分からないままだ・・・)


『・・・ところで、王子と人間の子供は青と黄金のオッドアイだったそうです。また・・・』


(黄金・・・ソルさんの瞳の色と同じだな)


『──ぬわっ!? なんか変な文字が魔術で出てきましたわ! なになに・・・「以降のページは本を購入することで読めます」・・・あっ、これ以上は読めないようですわ。かなり偏った思想の本ですし、購入しないほうが・・・よろしくてよ』


アヴィはこくんと頷いたあと、本をぱたんと閉じ、本棚の元の位置に戻した。

それを見計らっていたかのように、タイミングよくメイの足音が近づいてくる。


「アヴィ、買いたい本は決まったか?」

「いえ、特に欲しいものは見つかりませんでした」

「そうか。じゃ、このまま帰っていいんだな?」


アヴィは「はい」と答えたあと、メイの手をそっと握り、店の外に出る。

魔道具の効果の外に出た事で、再び聞こえるようになった人々の声を浴びながら、アヴィは考える。


(魔族と人間の子、生きてたら大変だろうな・・・幸せになれてたらいいな)


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