第十話 導きの光
今まで怖くて作品情報を見ていなかったんですが、ブックマークを2つもつけてもらえていて、とても嬉しくなりました。本当にありがとうございます。
これからも遅筆ではありますが、楽しんでいただければ嬉しく思います。
「アヴィ、街に行くぞ! 街!」
「え、修業は?」
という訳で、右も左も分からぬままに、メイに街──プロキオンへ連行された。
前にソル──アヴィに金貨を10枚も持たせてくれた、魔族の少年──にエスコートして貰った時よりも人通りが多く、メイが手を繋いでくれないと、すぐに迷子になってしまいそうだ。
「何か買うんですか?」
「幾つか本を買う。オマエはそこらの大人よりも知識がある、が・・・」
「常識が無い?」
「分かってんじゃねえか。だから幼児向けの道徳的な本を買う」
『・・・あれ、私、そのうちアヴィさんに幼児向けの本を読みあげることになりますの? 恥ずかしくありませんこと?』
「お母さんみたいですね」
『寝る前の読み聞かせみたいな扱い、やめてくださいまし』
「・・・なに言ってんだ、オマエ」
確かにお母さんは言いすぎたかもしれない。
アヴィの身長は155センチくらいだが、メイの身長は153センチ。
つまり、アヴィとメイは同じくらいの身長なので、姉妹だ。
「じゃあ妹?」
「なんでそォなる・・・?」
「私の方が身長が高いので」
「じゃあオマエの足裏削ってオレより低身長にしてやるよ」
「怖」
『怖』
「冗談だ! ったく、本を買う前にィー・・・っと。着いたな」
石畳の道を30分歩いて着いたこの場所が、最初の目的地らしい。
メイの話から考えるに、本屋では無いようだ。
「まずは『魔道具』を買う。あっ、扉の前の階段気を付けろよォ?」
「魔道具」。
そもそも『魔術』とは、自身が有する魔力を用いて、因果を無視した現象を発生させる技術だ。
しかし、料理だったり洗濯だったり、そういった日常の動作の度に魔術を使っていては、一瞬で体内の魔力は無くなってしまう。
そこで、日常のそういった動作専用の魔術を使用してくれる道具が、「魔道具」なのである。
『お店の名前は「アストライア・イミテーション」。この辺りは白い壁に赤い屋根の建物が多いのですけれど、このお店は灰色の壁に青色の屋根と少し浮いたデザインをしていますわ。あと、外から見た感じ2階建てだと思われますわ』
「なるほど、ありがとうございます」
『いえいえ』
レマのナビゲーションを聞きつつ、メイに手を引かれて店内に入る。
外と比べて店内は涼しい。風が吹いているというより、不自然に気温だけが低いので、おそらく魔道具で涼しくしているのだろう。
『壁中に魔道具が陳列されていますわ。パッと見て50個はありそ──うわ高! 金貨300000枚もする剣の魔道具がありますわ! 大国の宰相レベルでないと買えませんわよこれ! でも宰相は剣なんて使いませんわ! どの客層向けの商品なんですのこれ・・・?』
レマはいつもの姿からは想像できないくらい、商品をボロクソに評価している。
が、裏を返せばいつもの調子を崩すくらいテンションが高まっているということだ。
レマは魔道具が好きなのかもしれない。
(よくよく考えたら、レマさんってどういう存在なんだ?)
「おい、エーオース!」
どたどた、と店内の奥の方から、物音と足音が返ってきた。
そして、その音は徐々に大きくなり、人の声も混じり始めた。
「はいはいはい~! お待たせしちゃったわ~!」
暖簾でもくぐったのか、少しの布の擦音とともに、野太い男の声が聞こえた。
『店主だと思われる人が現れましたわ・・・! 黒檀のような綺麗で長い黒髪に、赤い瞳、赤い口紅・・・。この方、お化粧がお城の侍女よりも上手ですわ! 筋骨隆々ですし、顔立ちも男らしいのに・・・中性的な印象の・・・まさに美の化身ですわ!』
レマの言いたいことはあまり理解出来なかったが、とにかく綺麗な男の人らしい。
声の響いてくる位置から察するに、身長は180センチくらいだと思われる。
「あら? 可愛い子ねぇ~! メイちゃんのお友達?」
「アヴィって言います、今日はメイさんの弟子として随伴した次第です」
「なるほど、お弟子さんか~。ワタシは『エーオース』、メイちゃんのお友達よ~」
「オマエ・・・」
『普段の態度とは大違いですわね』
メイがアヴィの態度になにか言いたげだが、無視しておく。
「んで、今日はどしたの~メイちゃん?」
「風呂の湯沸かしに使ってた魔道具と、キッチンの魔道具がぶっ壊れたからそれの買い替え。あと剣を1000本くらい仕舞える倉庫を貸してくれ」
「ま~た倉庫壊しちゃったの~? というかキッチン? お風呂の方と違って買い替え初めてじゃない? 今まで壊れなかったのに、な~んで急に壊れちゃったのよ~?」
「い、いやあ・・・(弟子が出来たことにテンションが上がって、普段使わないキッチンを急に使ったから点検が足りなくてぶっ壊れたとは言えねえ・・・絶対コイツ笑う・・・!)」
メイが分かりやすくうろたえる。
アヴィとは違って、外面を取り繕うのがニガテなようだ。
「それにしても・・・アヴィちゃん、ねぇ・・・」
エーオースがしばらく沈黙する。
エーオースの喋り方が物凄く軽い分、沈黙がやけに重苦しく感じる。
『アヴィさんの髪・・・目・・・杖、という順で、エーオースは目線を移していますわね。アヴィさんを不審に思っているというより、もっと別のものを観察しているような・・・?』
「? なんですか?」
「ああいや、メイちゃんって割と繊細な性格してるから、こんなに仲良くしてる人を連れてくるのは珍しくてね~! これからも仲良くしたげてね?」
「はい!」
「オレのこと友達の少ない子供みたいな扱いすんな」
「そうね~、頑張ったわね~」
「ホントに子供扱いじゃねえか」




