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第一話 「大教主への挨拶」

 大教主の書斎に小さなノックの音が響き、エリナベルとテレジアが静かに扉を開けて入室する。そこは、重厚で荘厳な雰囲気に包まれた部屋だった。壁一面に古びた書物や巻物が並んでおり、少し本の独特な匂いが漂う。


 部屋の中央には、精巧な彫刻が施された大きな机があり、その向こう側に大教主が座っていた。長く白銀に輝く髪は後ろに流れ、顔には深いしわが刻まれているが、その眼はほとんど閉じられている。身にまとった豪華な服は長年使用しているのか少し汚れが目立つ。大教主の隣にはには、2人の若い秘書が控えていて、その眼はしっかりとテレジアとエリナベルを捉え、鋭さを感じる。



「失礼します! 大教主付第12秘書配属になりました、テレジア・アンダーベイルと申します。私はまだ信仰の道を歩む新米にすぎませんが、この大切な任務に対し、誠心誠意をもってお仕えいたします」


 完璧に決まった、そうテレジアは自信を持った。何故なら上司より大教主お付きの秘書に成れると聞いた時から敬語で話せるようにとひっそり最初の挨拶を練習していたからだ。



「「「……」」」



 大教主も秘書も一切言葉を発しない。何かまずいこと言ってしまったかとテレジアは焦った。しかし、さっきの台詞を思い返して、ルクシエル教の教義に則った言葉遣い、敬語、滑舌も問題なかったな思い返す。


 そこで一番最初のノックの回数を間違えてしまったと思い彼女は心の中で頭を抱えた。そうテレジアが考えを巡らせているうちに大教主が徐に口を開く。


「聖典の……時の旅人記 眠り樹の章の13節から14節は何かね?」


何だったっけとテレジアは記憶を探る。


「『知恵を求め思索を得る人はさいわいである。 知恵や思索によって得るものは、金によって得るものに勝り、その利益は神々へ還元されるからである。』ですかね?」


老齢な大教主の閉じかかっていた眼が見開く。


「では智者之門書 探求する賢者録 32節から40節はなんだ?」


「え〜っとそれは......」


 10分ほど聖句に関する問答が続いた。その間にもテレジアは緊張して思い出すのに時間がかかってしまったせいで、書斎に沈黙が流れ少し恥ずかしい思いをした。なにしろ聖典は3000冊以上あって簡単に思い出せるものではないしと彼女は心の中でぼやく。


「テシアといったか?」


「テ、テレジアです。」


「テレジアか。ふむ、中々骨のある子を見つけてきたじゃないかエリナベル。今週はそこのエリナベルに大教主宮殿の案内や基礎的な仕事内容を教えてもらった後、来週から秘書として頑張りなさい。」


「はい!」


 大教主に褒められて嬉しくなりテレジアは喜びのあまり少し気が動転する。でも、秘書になるならばこの程度のことには慣れないとと少し落ち着く。


「エリナベル頼んだぞ。それとテシア、顔が赤いが熱か?」


「いえいえいえ、違います! 大丈夫です!! 元気いっぱいです!!!」


少し大教主の表情が柔らかくなる。


「そうか。大丈夫ならすまないが退出してくれ、次の面会相手がいるのでな。」


「分かりました。それでは失礼します」





取り敢えず部屋から退出してテレジアは深呼吸する。


「ふうう~~~はああ~~~~~~」


やってしまった、緊張してあがっていたと反省した。


「大丈夫? そんなに大教主様に会うのに緊張したのかしら?」


「まあ、というか一生を普通に暮らしていたら会話するどころか、一目見ることすらできない方ですよ。誰だって緊張しますよ。」


エリナベルが少し微笑む。


「最初は誰でもそんなものよ。しかもあなたは人一倍敬語とかが苦手だし、緊張するのも無理ないでしょう。最後なんて大教主様相手に『元気いっぱいです!!!』って」


 私の真似をして笑い始める。そんなこと言っていると気づいたテレジアは恥ずかしくて顔をさらに赤くした。


「さてと、雑談はこのくらいにしましょう。早く仕事を覚えてもらわないといけないしね。取り敢えず大教主宮殿と付属している施設の紹介でもしようかしら。」


「それが本題でしたね。最初はどこからいくんですか?」


「そうね、今私たちが出てきた大教主様の書斎からにしましょうか。」


 そういうとエリナベルは説明を始める。大教主様は基本的に書斎にいて、私たち秘書も書斎か秘書室にいることが多いそうだ。大教主の隣にいたのはそれぞれ第4、10秘書のミレーネとカールと言うそうでミレーネが大教主様の身の回り、カールが身辺警護を担当しているのだと続ける。ミレーネは昨日も会った人なのでテレジアは見覚えがあった。


「そういえば昨日来た時にミレーネには会いましたね。というか秘書同士で仕事の分担をしているんですか?」


「そうね。詳しいことは後で言うけど大体そんな感じね。みんなで分担していて、私のやることは主に大教主の名代として各地を飛び回ることよ」


「ふ〜ん」


「次はここね。今いる廊下の左右全ての部屋が大教主様のプライベートルーム、12部屋ほどあるのだけれどーーーー


 そんな感じで秘書室、食堂、浴場、会議室、応接室、中庭に宝物庫なんてものまで色々と紹介してもらった。なんでも大教主は貢物が多いらしい。何ならテレジアも送ったことがある。そうしているうちに日が傾き始めて、宮殿の紹介も終わりを迎えようとしていた。



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テレジア「私たちが信仰しているルクシエル教はキリスト教風の多神教みたいなもんです。どちらかといえばギリシャとか北欧神話に近いかも」


エリナベル「設定とかいつか公開したほうがいいのかしらね?」

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