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9. 心を変えるほどの口付け

翌日、大魔塔宮殿、

ウィン様の秘密基地に私は足を運んでいた



連日読み進めていた本を開き、

そのページから手が進むことはなく、

ぼーっと考え込んでいた




婚約者ができたことは、いい。

それはそう望んだことだ。


家とか国のため、証明のためもそうだけど、

なによりウィン様の役に立つため。


今後の長い人生、ざまぁされずに聖女として

この国で、ウィン様のそばで、

つかえる人間として生きていくため。


はじまる前から叶わないと、

わかっていた恋だ


自分の隣にいてほしいなんて贅沢はいわない


だからせめて、忠誠を誓う主君として、

お慕いすることを許して欲しい

役に立つために頑張らせて欲しい

そして、秘かにこの気持ち抱えることを

私の人生 最大の罪として墓場まで持っていかせてもらえないだろうか


そう決意したのに、

他の人を愛せ、ときた


無理だよ、なぁ……



そう、多分というより絶対なのだ

私はこの先、ウィン様以外に惹かれることなんて

ないと断言出来てしまうのだ。


恋愛感情を消す禁術とか、ないかなぁ……はぁ……




秘密基地を出て、

お城の中庭を進み、正門に向かう


……ん?あれは……

な、なんでここに……


「ミラ!さっそく会えるなんて、やっぱ俺強運 ♪」


嬉しそうにこちらに近寄ってきて、

あたりまえのように頭をなでられる


「ギルベルト様…」


「ギル様とよべー? 嫌なら、旦那様とよべ」


私はいつも、強引で豪快な、

この人のペースに、持ってかれそうになる


「……ギル様、をここでお見かけすることになるとは…思いませんでしたわ。」


そう、キャルタン公爵家の人間がお城にくることは滅多にないのだ。王命であってもだ。


「おまえの通ってる学園の生徒に俺もなった!

さすがに頻繁には行けねぇけど、これで口説きやすくなるな?」



はいぃ?!そんなのあり?!

彼は3つ歳上で、生徒の年齢層からは外れているし、

なによりキャルタン公爵家の人間が王立学園になんて…!


「権力ってこうやって使うんだな!はは!」


はじめてだわぁ、こんな使い方!と笑っている彼に

呆れて言葉がでない。


そして、私の顔の目の前までかがみ、

にやっと何かを企んだように微笑む


なんとなく、なんとなくだけど察知した



やばっ、キスされるー…


避けようと後ろに1歩下がると同時に、

私の口は塞がれた。


ギルバルトの唇に、ではない。

私の後ろにいる人物の手によって、口元を塞がれたのだ。その手が私の唇を、ギルバルトから守った。


この手、知ってる

少しひんやりとしていて、とても心地よい


「…殺すよ?」


きいたことのないような低い声で殺気をとばす

その人物


「…ふぃんふぁま」


強く抑えられたままの口を動かし、声を出す


ぐいっと抱き締められ、

私の顔はウィン様の胸元に埋まる

肩を強く抱き抱えられ、身動きがとれない



「ウィン、俺のだ。離せ。」


そう、この2人は従兄弟同士。

ウィン様に王位継承権があるのは、

男系の血筋の王族だから。

ギルバルトは降嫁した王女様のご子息、

つまり女系の血筋のため、王族ではない。


「俺の、とは?」


「俺の女だ。昨日正式に婚約した。離せ。」


ぎゅうー…


ウィン様の私の抱くその力がさらに強くなる



「…そうか。安心しろ、正式に破棄してやる。」


冷たくそう言い放ち、

ウィン様がなにやら魔法を唱えた瞬間、

ウィン様と私は、秘密基地の中にいた。



「えっ?!え?え?…すごい魔法……」


瞬間移動みたいだな

カードキーに作用して発動するのかな

かなりの魔力も必要になるんだろうな

そう関心していた


「……っ!んっ……!」


のは束の間、強引に唇を奪われた


私が息をしたその瞬間に、

ウィン様は私の顎をとらえて開かせた

熱い熱いウィン様の熱が、私の口の中を犯す


な、なにこれっ……

だめだ、気持ちよすぎる……


あまりの快楽に思考を奪われ、

熱でいっぱいの身体の力はふにゃりと抜け落ちていく


「……んぁっ……んん……ぅうん……っん…っ…」


思考だけではなく、

意識までもを奪われてしまいそうになり、

ぽやぽや火照りながら、身体の力はなくなり、しゃがみこむ


それでもまだ強く甘く私を求めて追ってくるウィン様を、受け止める



そうしてしばらくして、

やっと解放されたと同時に、

強く抱き締められる



「……俺じゃだめ?」


あんなにも甘く激しいキスとは正反対の、

弱弱しく哀しい声に、思わず涙が零れる



だめじゃない。

俺しかだめなの。私は。


でも、貴方はちがう。



だって貴方はー…



これも、演技……?



この人がここまでやるのは、

そこまでしてアダリンが愛おしいから…?


わからない。



わからない。




あ……




だって、私は、



この人が、本当に愛おしい(アダリン)

どんな顔をするのか、知らない



私に向けるこの顔しか、知らない




この貴方以外って、

本当に存在しているのかな……?





私、今すごく、

自分に都合のいいように考えているかもしれない



どうしようもなく、

ポジティブで、ばかなこと、考えているのかもしれない



でも、

期待したい


期待せずには、いられない




「…っ、これも全部、演技……なのですかっ…」



震えるこえで、問いかける




「私は、あなたの想い人は、ポートマードン公爵令嬢様だとっ……ずっと、ずっと、そう思っていて……」


涙が止まらない



「…っ、貴方が、あまりにも彼女をっ……

愛おしいって思うがあまりっ……

私をこの世界から、排除するために……っ……

彼女のためにっ……私のことっ、好きって、いうしかないのかなって……ぅっ……っ……」



「そんな風に思わせて、ごめん、ミラ。

ミラ、教えてあげる。俺の愛って、すごく一途で重いんだよ。」


そう言って、彼は魔法を唱える


その魔法は、少し前に、ここでみた。

ここの本のとある1冊、禁忌の魔法を記したものにあったものだった。


「……え、それ……」


詠唱を終えると、ウィン様は私の手の甲に

そっと口付けを落とした


その瞬間、ウィン様と私は眩い光に包まれた。



「俺の気持ち、本物って示すためには、

これが1番かなって。」



そうふわりと笑うウィン様



「……っな、こ、これ……!」



「うん。冥愛の呪法。」



冥愛の呪法、それは自らの命を担保に、

相手へ唯一の愛を誓う愛という名の呪い。


愛を誓った相手以外に惚れてしまったり、

一夜を共にすると、呪法を受けた本人が絶命してしまう禁術



「……そ、そんな…!なぜ……っ」


王子であるウィン様が、

かけていいような魔法では決してない


「俺は生きてる。きみだけを愛しているからだよ、ミラ。元々俺にはきみしか必要ないんだ。

この呪法があってもなくても何も変わらない。」


「……っ」



ウィン様が、

本当に、私のことを、愛してる……?


そんなこと、あっていいのだろうか


冥愛の呪法をつかうほどの愛を、

私が受けとれる、こんな幸せ、現実なのだろうか



「私も、すき…なんです。」



疑問も、課題も、沢山ある

でも、とにかく今は、

こんなにも大きな愛をくれる愛おしいこの人に、

私の気持ちを返したい。伝えたい。



「…っもうずっと……ウィン様が、愛おしいんです。」


ぽろぽろと流れ落ちる涙でぼやける視界

それでもみえなくなることのない、ウィン様の輝き



「……ミラ、愛してる。」



「…っ、私もっ……ウィン様、愛してます…っ、」




私の手をぎゅっと包み込み、

そっと唇が合わさる


あたたかくて、心地よくて、愛おしくて、



ひだまりの中にいるような、

そんなひとときだった






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