7. 妥当 ざまぁ要因のヒロイン
その後 攻略対象者と思わしき人物何名かとのフラグをバキバキに折った。
ヒロインの慰めが必要っぽいシチュエーションに出くわしたら、近くにいた代わりの女の子をあてがい、ヒロインっぽいセリフをそれとなく言わせた (女の子、ごめん。でも惚れてたっぽいし許して。)
やたら顔がいい迷子をみつければ、
数年後に あのときのおねぇさん♡ なんて現れてくることがないように、侍女に助けに行かせたし、
えげつなくイケメンの暗殺者なんてものに
たまたま出くわした際は、
「人を殺すなんてやめて…!あなたのために……!」
などといわず、
「やっちゃいましょう。金のために。ははは。」
と聖女剥奪レベルの発言をかました。
人との関わりは徹底的にたつ…!
そうすることで、魅力をつかってるでしょ!
なんていうようなあるあるの疑いからも逃げている日々だ
ただ、私が頑張れば頑張るほど、
私をざまぁ要員のヒロインにするための
証拠づくりのためか、
この男が 私への接触を重ねてくるのだ。
「ミーラっ」
ぎゅっと後ろから抱き締められる
「…ウィン様、私死にたくないんです。
離してくださいます……?」
ざまぁ なんてされて、死にたくないんです……!
「それに、ポートマードン公爵令嬢様を悲しませたくありません…。」
「……なぜポートマードン公爵令嬢……?」
「婚約者が他の女といるところなんて、
みたくないはずです」
「……婚約者?……あぁ父上と宰相が言ってるだけだ。
俺は許可していないし、これからもそうだよ。
きみを誤解させるくらいなら、公式に否定しようか?」
こ、こここ、これは……!
はい♡なんて言おうものなら、
私が婚約破棄をさせようとそそのかし誘惑した
おばかなヒロインそのものになってしまうんじゃ?!
なんという、さらりとした誘導……!!
一瞬、胸がときめいてしまったのは、
本当に不覚……
「いえいえいえいえいえ?!
わたくしは、おふたりのご婚約を、むしろ大っっ変喜ばしく感じていて、いつまでも末永くお幸せでいてほしいと常にそう考えていますわ…!」
口から出た言葉に、自分でかなしくなる…
「……へぇ?」
「おふたりの恋路の邪魔になるものは、
たとえわたくしであろうとも、許せません。」
そう、私は本当にそう思ってる。
だから、これ以上ウィン様を好きになるまえに、
どうか私から離れてほしい。
アダリンの思う、おじゃま虫なヒロインなんかではなく、私はただ、おふたりの……ウィン様の幸せを願っているだけだから。
ウィン様の幸せのために、
私が邪魔なんかするわけない。できるわけがない。
だから、どうか、
これ以上、私を ざまぁ要員のヒロインにするための
甘くて甘くて切ない演技なんて、やめて……。
「ミラは、俺とポートマードン公爵令嬢が一緒になればいいって思ってるんだ。」
「……はい。心の底から、思ってます。」
始まる前から、なにも望んでいない、
望もうとすら思えない、私の恋。
私が望んでしまう前に、
取り返しのつかなくなる前に、
どうか、もう、終わらせてほしい。
「俺、ミラのお願いはなんでもきいてあげたいんだ」
嬉しくて、くすぐったくて、
なんて 残酷な言葉…。
「でも、それはきいてあげない。」
「……え?」
ぎゅっと私を抱き締め、
ふふっと笑う
「きいてあげられないから、
そんなお願いは、ミラの中から消してあげる。
ミラが、俺と一緒になりたいって願うように仕向けて、それを叶えるから、俺。 覚悟しててね。 」
……っ
取り返しなんて、
つくのだろうか……?
もう、手遅れなのではないのだろうか。
演技だと言い聞かせても、
どうしようもなく胸がいっぱいになる
すき
この人が、どうしようもないくらい、
諦めるなんて考えたくないくらいに、すき。
あほなふりして、
ざまぁヒロインになるの覚悟すれば、
短い間はそばにいれたりするのかな
嘘だとしても、こうやって愛を囁いてくれるのかな
なんか、もう、
それでもいいような気がしてきてしまう
ばかだなぁ、わたし
人間恋すると脳がバグるなんていうけど、
心の底から実感する
聖女の役割……
誰がするの
そう。私がざまぁされようものなら、
光魔法で人々を救う存在がいなくなるということ
やっぱり、だめ。
私は…聖女は、ざまぁされちゃいけない。
私の目標は、ざまぁされないこと。
聖女としての役目を全うすること。
ウィン様とアダリンのイチャラブ溺愛ルートに
水を刺さないこと。
このままではラチがあかない。
ウィン様に卒業までハニートラップみたいなこと
させ続けるわけにもいかないし……
どうしたら、私が邪魔じゃないってふたりは思ってくれるかな……
あっ。
思いついた。