2. 悪役令嬢は転生者!しかも王子を攻略済…!
お話という名の尋問と脅迫をアダリンから受け、
やっと解放され、一息ついたその瞬間に、
私はアダリンの屋敷を追い出された。
ひ、ひどっ…!
まるでゴミを捨てるみたいに…!
でも、アダリンの尋問や脅迫の内容からは、
かなりの収穫があった。
やはりここは異世界で、乙女ゲームの中の世界。
そして彼女は、アダリン・ポートマードン公爵令嬢。
言わずもがな、悪役令嬢だ。
そして私はヒロインである、
ミラ・ナレリシア。
彼女の部屋に置かれた姿鏡をちらみし、驚愕。
見慣れた私の顔だったからだ。
確かに4割増しくらい補正はされているし、
薄ピンクの宝石みたいな瞳に、
ホワイトゴールドに桃色のアッシュが混ざった
ふわふわの髪の毛に変わっていたけれど…!
桃のような容姿で、
お人形さんとか天使とかにみえたけど…!
癒される可愛いらしさと上品さに、
色気まで備わってたけど…!
前世の頃は、整いすぎた容姿と豊満な身体で
悪評ばかり立てられていたけど、
そこにヒロイン特有の天使属性やら
圧倒的美肌とか庇護欲のある華奢さとか足されて、
元の私を完璧なる美少女に進化させられてるではないか。なんだこれ、最高。
そしてなにより、若返っている。
アダリンの話から紐解くに、12歳。
若返りなんて人類の野望を遂げてしまった…!
なんてこと…!転生わるくない…!むしろ良き…!
しかも私はヒロイン…!
悪役令嬢アダリンも、
転生者とはいえ、ちゃんと性格悪そうだったし、
ストーリーが大幅に変わることなんてないだろうなっ
出会っちゃいはしたけども!
12歳なんて人生まだまだこれから…!
わぁぁ、楽しみだなぁ
と思えたのも途中まで。
そう、アダリンのとある言葉によって
私のときめきは打ち破られた。
「確かにあなたは、ヒロインだし、私は悪役令嬢よ。
ただし、この世界はもう乙女ゲームの中じゃないの。
私という悪役令嬢が、転生者として、ヒーローの殿下に溺愛されるTL漫画のような世界になったのよ!!」
……え?
「わたくし、前世の知識を駆使して殿下のことはもう攻略済みですの(照)
原作とは違って、わたくし、溺愛されていて…(照)
転生人生、謳歌しておりますの(照)」
……えええええ?????
「ゲームの世界とはいえ、一人一人、この世界に存在する人間なのですから、行動次第でストーリーがかわることなんて、あたりまえのこと(照)
それ気付き、ヒロインを ざまぁ して溺愛される悪役令嬢を目指したのですわ(照)」
ま、まじか。
な、なんか、それって…
ずるくない?!!
なにそれ?!
ヒロインはチートとかよく嘆いてる悪役令嬢みるけど、チートはどちら?!
ヒロインが登場する前の何も手出しできない幼少期のうちにヒーローを攻略…?!
しかも前世の先人の教えを、まるで自分の手柄のように?!
し、しかも…!
ゲームの内容さえしっていれば、
ストーリーを思うがままに進めることも可能…!
それでよく嘆いていられるな?!悪役令嬢め…!
悲劇のヒロインぶりやがって…!
こちとら本物の悲劇のヒロインになってしまったというのに…!
というようなことがあり、
悪役令嬢ものの漫画や小説などにでてくる
当て馬勘違いヒロインのポジションが与えられたことに気付いてしまった。
しかも、
アダリンの話から考察するに、
私は聖女として亡き王妃殿下の聖堂に現れたところを、アダリンに攫われたらしい。
そう、アダリン愛しの殿下とやらとの
出逢いのイベント 兼 聖女としての奇跡の出現(転移)を
ゲームクリア済みのチート転生者・アダリンに潰されたのである。
本来なら国で保護されるはずの私は、
アダリンの策略により、見事一文無しのホームレスだ。しかも異世界で。
「はぁー…」
ため息もでる。
だがここで挫けない。
世の中もっと泣きたいようなことは
いくらでもあるのだ。解放されただけマシ。
そう自らを奮い立たせて私が向かったのは、
ナレリシア侯爵家。
アダリンいわく、私はナレリシア侯爵家の養女。
つまりゲームのシナリオにおいて、この国にきて私を保護してくれた貴族ということだろう。
これまたアダリンの話から推測するに、
私はすでに聖女の力がつかえて、
ヒロイン特有の強運までも備わっているっぽい。
経緯が違うとはいえ、
ゲームでは転移者ミラを受け入れてくれた方々だ。
上手く証明と説明をできれば、
きっと受け入れてくれるはず…!
その考えは嬉しいことに的中し、
それどころか、何者かに攫われて、転移早々ひとりぼっちになった私を、好待遇で受け入れてくれ、
あたたかく接してくれたのだ。
手駒として扱われることすら、好待遇と思っていたのに、ナレリシア侯爵家はまるで実の娘のように歓迎してくれた。
そして私は、ミラ・ナレリシア侯爵令嬢となった。