第6首
第6首をお届けできました。今のところ順調です。
第6首
怖いから
先輩の部屋に
泊めてくれと
すがる後輩
背後に生き霊
短歌解説
私が間接的に関わった実話です。
私が大学2年生の時の話です。H荘の私の部屋は右棟の1階の一番端でした。道を挟んですぐ田んぼでしたので、風がまともに当たり、おんぼろアパートなので隙間風が部屋に入り込んできました。そこでガムテープで窓の隙間を覆って、寒さ対策をしていました。私の部屋の真向かいの左棟の1階に住む後輩Gも同じようにガムテープを貼って隙間風対策をしていました。
ある夜、午前1時を回っていたと思います。私がその日寝たのは11時頃だったので、
ドンドンと部屋のドアを叩く音で起こされたときは、「誰だよ、もう」と不機嫌になっていました。
「合沢さん、起きて下さい、起きて下さい」
外から聞こえる声は、向かいの部屋のGの声でした。
「何だよ、もう」と悪態をつきながらドアを開けると、Gが青ざめた表情で立っていました。
「先輩、先輩の部屋に泊めて下さい」
開口一番、Gはそう言いました。
「なに? 意味分からん」
「マフラーが浮いたんです」
「どういうこと?」
私が問うと、ようやく落ち着いてきたのか、Gが詳しく話し始めました。
Gの話によると、部屋の中でギターをジャカジャカ鳴らして歌っていたら、壁のフックにかけていた彼女から貰ったマフラーがフワッと浮き上がり、壁から直角の所まで浮いた後、またゆっくりと戻ったのだそうです。
それを目撃したGは、怖くなって私のところに助けを求めてきたのでした。
「もしかして、その彼女とは別れたの?」
私が訊くと、Gがうなずきました。
どうしてそんなことを私が尋ねたのでしょう。もうおわかりですよね。
Gの背後に霊の気配を感じていたからです。それも、たちの悪い生き霊の。
Gは私に泊めてくれるように再び頼んできましたが、私は、「イヤだ」と冷たく言い放ちドアを閉めました。
背後の霊に勘違いされて、私を恨むようになったら困りますからね。
残り94本
その後、Gは他の部屋へ助けを求めに行ったようです。遠くからドアを叩く音がしていました。