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第4首

第4首をお届けできました。

第4首


やばすぎる

作法を守らぬ

コックリさん

信じぬ者を

じっと睨む眼


短歌解説

 私が間接的に関わった実話です。

 私が大学時代住んでいたアパートは2階建てで、横から見ると左側と右側に分かれ、2階の廊下がその間にありました。その形状と見た目からH荘と呼ばれていました。決して住んでいる者がエッチそうだからということではありません。左側の棟には1階と2階に一部屋ずつ、右側の棟には1階と2階に4部屋ずつありました。ですから左側の棟は直方体の建物が建っているようなものでした。

 私が大学生活にも慣れ始め、アパートの先輩たちとも親しくなった頃の夜、左棟の2階、D先輩の部屋から大勢の楽しそうな話し声が聞こえてきました。女の人の笑い声も聞こえてきたので、興味をもった私は階段を上り、D先輩の部屋の戸をノックしました。

「あ、ごめん。うるさかったか」

 ドアを開けたD先輩が言いました。

「いえ、楽しそうだなって思って」

「合沢も入れよ。今実験をしてるんだ」

 そう言ってD先輩は私を部屋に招き入れました。

 部屋に入ったとき、部屋の中の空気が少し淀んでいる気がしました。たばこの煙のせいかなかとも思いましたが、すぐに原因が分かりました。

 D先輩の部屋には、R先輩とM先輩、それに私の知らない女の人が2人いました。

 M先輩と女の人たちは部屋の真ん中に置いてある小さなテーブルの周りに座って、右手を伸ばしていました。

 「実験って、何をしてるのですか?」

 そう言って覗き込むと、テーブルの上には、文字が書かれた四つ切り画用紙が置いてありました。そして、そこに置かれた5円玉に3人の人差し指が触れていました。

『あ、やばいことやってる』

 私は先輩たちがやっている実験というものが、コックリさんだとすぐに気付きました。どおりで部屋の空気が淀んでいるはずです。

 先輩たちは5円玉が質問に合わせて動くのが面白いようでした。

「次はRの番だな。合沢もやる?」

 D先輩に訊かれて、私は、「怖いからイヤです」と応えました。

 幸いにもD先輩はそれ以上は私にコックリさんを勧めませんでした。

「飲み会だけと思ったから来たのに。かったるいなあ」

 そう言いながら、R先輩はコックリさんをやり始めました。

 しかし、お酒も入っていたのか、R先輩は5円玉が動くたびに、「おまえが動かしてるだろ」と他の2人に悪態をついていました。そしてとうとう、「面白くない」と言って5円玉から指を離しました。

「だめよ、Rくん。急に指を離したら、コックリさんに帰ってもらえなくなる」

 女の人がそう言うと、「俺は信じない。帰る」と怒ったように部屋を出て行きました。 女の人は、困ったように、「ふう」と息を吐き、「一応除霊しておくね」と言って念仏を唱え始めました。私は除霊できる人を初めて見ました。部屋の淀んだ空気が少しずつ晴れていくのが感じられました。

 しかし、除霊は完璧ではなかったのです。

 その日から2週間。私は大学でR先輩のことを全く見かけませんでした。同じサークルでしたので、それまでは会う機会も多かったのですが、あの日以来全く見ないのです。

「R先輩、どうしたのかな?」

 他のみんなも心配していました。

 2週間後、げっそりやつれたR先輩が部室に来て、ことの顛末を話してくれました。 あの日の夜から金縛りにあうようになり、目を開けるとずらっと並んだ生首が、ジッと自分のことを睨みつけているのだそうです。最初は夢だと思ったようですが、それが翌日も続いたので夢じゃないと気付いたそうです。そして何故か食欲もなくなり、外に出る気力も無くなっていたのだそうです。

 学校に来なくなったR先輩のことを心配したD先輩が、R先輩のアパートを訪れ、憔悴しきっているR先輩を助けてくれたのだそうです。

 後日、私がR先輩のアパートに用事で行ったときにR先輩の部屋の中の異様な光景を見たとき、R先輩が話したことは本当だったのだなと確信しました。

 R先輩の部屋の四方の壁と天井には、D先輩がお寺から貰ってきてくれたという御札が、びっしりと貼られていたのです。


残り96本


コックリさんについては別の話もあります。その時に、降霊術に関しての私の思いも述べたいと思っています。

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