第1首
7年前に投稿していたホラー短歌をブラッシュアップしました。短歌の背景となった出来事も短歌解説として書いています。
100首を目指して投稿していきますので、よろしくお願いします。
第1首
バンガロー
肝試し前の
怪談話
その時起こった
怪異現象
短歌解説
私自身の実話です。
まず、この先品解説をする前に、私合沢のことに少し触れさせていただきます。
私の母親は霊能力があったようで、ある朝、叔父が別れの挨拶に来た夢を見たということを母親が言っていたら電話が鳴り、叔父が今し方亡くなったという知らせがありました。夢枕に立つという現象でしょうか。
そんな母親の力を私も受け継いだのか、私も不思議な経験を何度かしました。
私が小3の頃、3階建てのスーパーが街中に出来ました。私が住んでいた市は盆地の中の田舎だったので、3階建てのスーパーで、エスカレーターがある建物は画期的でした。そんな物珍しさもあってか、市民がこぞって開店セールに赴きました。スーパーの駐車場はすぐに満車になり、私たち親子はスーパーから少し離れた市の公園の駐車場に車を止め、そこから歩いてスーパーに向かいました。
歩いている途中、私にはある光景が見えました。スーパーの屋上で大勢の子供たちが、楽しそうにゲーム機や遊具で遊んでいるのです。ただ、それは実際に見えたわけではなく、私の脳裏にうかんだものでした。「僕も屋上で遊びたい」と父親に言ったとき、父親は何を言っているんだこの子はと思ったようですが、スーパーに着くと、屋上遊園地があることが分かって驚いていました。
この歌は、そんな私が高校1年生の時の話です。
高校1年の夏、クラスでF山のキャンプ場にキャンプに行きました。クラスで30名ほどの参加者がありました。そのキャンプ場はバンガローが完備されていて、テント不要でした。食材さえ持っていけば、調理道具も全て揃っていて、何の心配も無く泊まれるところでした。しかし、私はそのキャンプ場に着いた途端、言いようのない不安感に襲われました。『何か気味悪いなあ…』、そう思ったのです。
食事も終わり、キャンプで行う予定の次のプログラムが肝試しでした。肝試しの前にみんなで集まって、怖い話をしてから肝試しをやろうということになっていたので、集会ができる一番大きなバンガローに全員が集まりました。車座になり、一人一人が怖い話を始めました。
私は、みんなを震え上がらすような怖い話は持っていなかったので、自分の番が回ってくる間、絵を描いていました。
私が描いていたのは、悪魔っぽい顔の絵で、自分の番が回ってくると、「こんなのが出てきたら怖いよね」とみんなに見せました。
「怖い話は無いのかよ」
「でも、合沢くんの絵怖い」
「合沢、絵うまいな」
何人かがそんな感想を言った後、私が描いた絵を誰かが車座の中心に置き、再び怖い話が始まりました。
私はクラスメイトの話を聞きながら、ふと窓の方を見たのです。窓は大きなサッシガラスで、バンガローから漏れる光で少し先の方まで見えていました。そちらの方は笹藪になっていて、人は絶対に移動できないほどに密集していました。するとそこを、白い人型の何かが通っていったのです。その瞬間ゾクッと鳥肌が立ちました。すると、「きゃあ」とか「うおっ」とか悲鳴が上がりました。
『よかった。見たの僕だけじゃなかった』
他の者も見たのなら怖さが共有できるので、少しは安心できると思ったのです。
しかし、僕が振り返ると、みんなの視線は違うところを見ていました。
私が描いた絵を見ていたのです。
「どうしたの?」
私が尋ねると、「え、絵の目が光った」と女子が震える声で言いました。
みんなは、私が見た窓の外のものではなく、私が描いた顔の目が光ったことに悲鳴をあげていたのです。
その後、予定通りに行われた肝試しはガクブルものでした。
え? そんな状況で肝試しが中止にならなかった理由ですか?
肝試しは、くじで男女がカップルになって、バンガローから少し離れたお堂に置いてある札をとってくるという企画だったので、女子に良いところを見せようという男子たちのスケベ心が勝っていたからでしょうね。何人かの中止にしようと言う提案は却下されました。
今考えると、あんな恐怖体験をしたにもかかわらず、他の男子に同調して肝試しの中止に反対した、スケベ心に満ちあふれていた当時の自分が一番怖いですね。
残り 99本
1首めは私の実話でした。私は見えるというより、気配がわかるといったていどの者です。