第五話 恋バナしよ?
「私のどこが好きなの?」
そう言うと、私はそっと春野くんを見た。
春野くんは、おずおずと口を開いて・・・こう言った。
「全部」
一気に、ブワッと体が熱くなった。
まるで大輪の花が咲くように、私の心の中のなにかが咲いた。
それはきっと、愛と呼ばれる花で・・・私が、今まで咲かせられなかった花のような気がする。
「・・・本当に?」
私の問いに、春野くんは頷く。
「全部好き。明るいところも、優しいところも、周りをよく見れているところも・・・そして、笑顔も」
「笑顔?」
「瑠璃はさ、笑うと・・・大輪の花が咲くように笑うよね。それが、すごく綺麗で大好きなんだ」
頬を赤く染めながら、春野くんは続ける。
「円城寺さんが、言ってたよね。瑠璃の良さは顔だけじゃない。それは、僕もそう思う。瑠璃は顔も可愛いけど、それだけじゃない。すごく・・・良いところがたくさんあるんだ」
そこで、一度言葉を切り春野くんは私をまっすぐに見つめた。
「きっと、僕のまだ知らない瑠璃の良さがあると思う。それを・・・これから、知っていきたい」
私は、その言葉を飲み込むように、こくんと頷いた。
「・・・私も、春野くんの良さを全部知らない。ねぇ、春野くん・・・これから、お互いを知っていこうよ」
春野くんは嬉しそうに頷いた。
「だからー」
私がそう言いかけると、春野くんは首を横に振って、言う。
「そこから先は、僕に言わせて?」
私が頷くと、春野くんは嬉しそうに次の言葉を言った。
「瑠璃の周りを明るくさせてしまうところや、周りをよく見て優しくー」
「ー春野くん」
私は、春野くんの言葉を急かすように名前を言った。
だって、これ以上何かを言われたら恥ずかしくて、家に帰れないし・・・それに、たくさんの言葉はいらない。
春野くんは、深呼吸をしてこう言った。
「付き合ってください」
たくさんの言葉はいらない。その言葉だけで、私は十分なんだ。
「付き合うことになったんだね!」
「瑠璃姉ちゃんも、とうとう良い人を見つけたんだね!!」
家に帰るなりして、瑠衣と瑠美が私のところへ迫ってきた。
「私、何も言ってないよね?」
私がそう言うと、瑠衣はスンスンと鼻を鳴らして、瑠美はドヤッと胸を張り口を揃えてこう言った。
「妹の勘!!」
「そうですか〜」
「ちょっと、お姉ちゃん」
「無視しないでよ、瑠璃姉ちゃん〜〜」
スタスタと歩きながら、私の後ろに瑠衣と瑠美がひっついてきた。
「なんで、ついてくるのよ」
くるっと私が振り返って言うと、瑠衣は二カッと笑って言った。
「恋バナ、聞こうと思って」
「なんでよ」
すると、今度は瑠美がキリッと笑って言った。
「瑠璃姉ちゃん、なかなか恋バナ話してくれないから」
「そうだよね〜!!いつも、こういう人のことが好きになったっていう相談はしてくれるけどさ〜どうなったかは、毎回毎回教えてくれないよね」
そりゃ教えるわけ無いでしょ。恥ずかしい。
「だからー」
瑠衣がそう言って、瑠美は続ける。
「恋バナしよ?」