第三話 性格が大好きです!!
あのあと、授業が始まる前にはみーさんは戻ってきた。
次の休み時間に、みーさんは私に言ってきた。
「るーさん、もうアイツと仲良くするのはやめときなよ」
アイツというのは、おそらく春野くんのことだろう。
「なんで?」
私がそう聞くと、みーさんは嫌そうにため息をついてこう言った。
「るーさんにあんなこと言うなんて、許せない。顔が何?顔だけで人を選ぶしか能がないの?」
みーさんは嫌だという感情をあらわにしながら、言い続ける。
「るーさんの良さは顔だけじゃない。それを分かってない奴と付き合う必要ないよ」
分かっている。
みーさんの言っていることは、正しい。それに、私のことを思って言ってくれているということも分かっている。
「まだ話すようになって短いんだよ?お互いが、お互いの良いところを全部知らないのは当たり前じゃない?」
私の言葉に、みーさんはうぐっと言って、黙った。
「だから、まだ信じてみるのもいいと思うんだ。だからさ、もう少しだけ・・・待ってくれない?」
「でもー」
「でもじゃない」
みーさんはふぅっと息を吐きだして、私を見た。
そこには、完全に気持ちを切り替えたみーさんがいた。
「そう言って、何人の男に騙されてきたの?」
「三人ぐらいかな〜」
「みんな、るーさんの顔目当てだったよね?」
「そうだったけ〜〜」
みーさんの厳しい追求には、冷や汗しか出ない。
「なんで、性懲りもなく顔目当ての男に恋しちゃってるわけ?」
みーさんは、白谷くんの顔目当てではないらしい。私だって、春野くんの顔目当てではない。
「みーさん、恋を知ってからは・・・容赦ないよね」
「何に?」
「私の恋に関して」
そう言うと、みーさんは私を睨みつけてきた。
「ちょ、ちょっとなんで睨んでいるのよ」
私の言葉にみーさんは、さらに睨んできた。
「論点をずらさない」
低い声で、みーさんはそう言った。
「いい?るーさん。三人の男に騙されてるんだから、少しは疑ってかかりなさいよ。いつまでアホったらしく騙され続けなきゃいけないわけ?私が、何人の男をぶっ潰してきたと思ってるわけ?」
「え?そうなの?」
「そうよ。るーさんに言い寄ろうとした顔目当ての男どもを、私が何人も何人も潰してきたのよ?」
それは、知らなかった。みーさんに、そんな努力させてたなんて・・・。
「ごめんなさい。次から気をつけます」
素直に頭を下げた私に、みーさんは満足そうに頷いた。
「よろしい」
睨まなくなったみーさんは、ふと気付いたように、私に言ってきた。
「それにしても・・・春野さん、るーさんの顔目当てじゃないかもよ」
「え?どういうこと?」
私の問いに、みーさんは先程の休み時間の出来事を教えてくれた。
「ふざけないでくれる?」
私ー円城寺美華の言葉に、春野さんとその友人はこちらを向いた。
「何?君」
「同じクラスの円城寺美華です。春野さん、少しお話があるのですが・・・」
私がそう言うと、春野さんは友人を一瞥して遠ざけた。
「それで?話って何?」
「竹宮瑠璃に近づいているのは、顔目当て?」
「・・・そうだよ」
目をわかりやすく泳がせながら、春野さんはそう言った。
「嘘はいけないと思いますが?」
「嘘じゃないっ!」
そう、春野さんは吠えた。
「大声出さないでくれます?私、なるべくるーさん・・・瑠璃には、内緒にしたいんですよ」
私は面倒くさそうにため息をつきながら、そう言う。
「だから、嘘じゃない」
それでもなお吠えてくる春野さんを見ながら、私はぐっと一歩踏み出しながらこう続ける。
「あの、くだらない嘘のために私はあなたなんかに近づいたわけではありません。瑠璃にとって、あなたはふさわしい人かどうかを見極めるために、近づいているんですよ。だから、早く本当のことを言っていただけますか?」
春野さんは、目を泳がせながら苦し紛れに言った。
「あ、まさか・・・お前アレだな!僕のこと、好きなんだろ??」
え、意味が分からない。この人は、何を言っているんだろう。
・・・あ、論点を戻さなきゃ。
「私には、白谷涼さんという最高の彼氏がいます。あなたなんかに、惚れるわけないでしょう?」
私の後ろで大量に咳き込んでいる人がいた。その直後に、私の頭をポンポンと撫でる手が現れた。
「美華・・・ありがと」
涼さんだ・・・。私はそっと笑いながら春野さんに向かって告げた。
「ですので、早く本当のことを言っていただけます?」
私がそう言うと、春野さんは観念したように言った。
「僕は、竹宮瑠璃さんの・・・」
しゅんとした態度と、恋をしている瞳を宿しながら春野さんは続ける。
「性格が大好きです!!」




