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眠りたい夜の800字

悪夢の夜明け

作者: もも

 毎日、心臓が潰されたかのような感じがして、目が覚める。原因はわかっている。悪夢だ。どこまで行っても建物から出られない夢、空港で延々待っていてもスーツケースが出てこない夢、足の届かないプールにぶくぶくと沈んでいく夢。焦燥、動揺、絶望。眠る度に「どうか明日こそは、穏やかに目覚めますように」と祈るけれど、その祈りが届くことはない。

 なぜ悪夢を見るのか。考えられる原因をあげていくことにした。

 一つ目、大事に残していた、昔放送されたドラマの最終回のデータを誤って消去したこと。連続ドラマの最終回だけなくなるなんて、そこに至るまでの全てのエピソードの存在価値がほぼゼロに等しくなってしまった。

 二つ目、無職になったこと。仕事に費やすハズだった膨大な時間が目の前に無駄に広がるばかりで、どうすれば良いのかがわからない。

 三つ目、母親に作り笑いをされたこと。あの人の頭の中にいるのはニコニコとよく笑い、頭を撫でられては嬉しそうな顔を浮かべる幼い頃の我が子であって、いい年齢で無職になり、昼まで起きてこないようなだらしない人間ではない。なのに「そんな子どもでも私は優しく受け入れる」と言わんばかりの表情を向けてくるのだ。一体、誰に何を取り繕うための顔なのだろうか。

 四つ目、と書きかけて気付いた。悪夢を見る原因がわかっているなら、ひとつずつ潰していけばいいのか。まず、ドラマはラストシーンが見られないのなら全ての話を消去して、初めからなかったことにすればいい。何をすればいいのかわからず時間を持て余しているのなら、目的を作るんだ。そうだな、とりあえずはもう見たくない母親のあの顔を消してしまおう。デスクに置かれていたハサミを手に部屋を出て、母親のもとに向かう。

 大丈夫だ。これでもう、悪夢は見ない。


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