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喫茶店のあの子  作者: K
8/9

 約束の日がきた。

 講義が終わると、滝谷は部室に寄り顔を出した。


「ついにデートに誘ったぞ、今日がその返事の日だ」


 滝谷は言った。

 きっと驚かれると思ったが、佐伯は妙な反応をした。


「今日は彼女に会えないぞ」


「え? どうして。店に行ったのか?」


「いや、あれだ。あれ。とにかく彼女のことは忘れた方がいい」


「よく分からないな。一応、店には行くよ」


「あ、待てよ!」


 妙な佐伯を残し、彼は喫茶店へ向かった。



 喫茶店に入り、エミを探す。


 しかし、彼女の姿はどこにもなかった。


「店長、エミさんはどこにいるんですか?」


 滝谷は店長に聞いた。

 店長は残念そうに口を開いた。


「彼女は不具合が見つかったから、工場の方に返品されたよ」


「工場?」


「あれ? もしかして知らなかったのかい。彼女がアンドロイドだって」


 アンドロイド?

 彼の頭の中でその言葉が何度も反芻された。


 あの彼女が? アンドロイドだって!?

 エミの笑顔を思い出す。

 

 そんなばかな。


「まさかからかっているわけじゃないですよね」


「ニュースを見ていないのかい? あの量産型アンドロイドが回収されてるのがニュースになっているはずだけど」


 彼はここ数年までニュースを見たことがなかった。

 もちろんネットも見たことがない。


 だから彼は驚いた。

 その時、喫茶店のドアが開き、佐伯がやってきた。


「おい、佐伯。初めっからアンドロイドだって気付いていたのか?」


「悪い。お前の反応が面白くてずっと黙ってた。ごめんよ」


「嘘だろ?」


 だが、彼女がアンドロイドなら納得のいくことも多々ある。

 あの雨の日にすれ違ったエミは、別の量産型アンドロイドだったのだ。そして、彼女が映画を今までに一度も見ていないと言ったのも、なぜこの街にきたのかも納得できた。


「ほら、ネットニュースにもなってる」


 佐伯はスマホの画面を見せてきた。

 その画面には、写真が載っていた。工場に大量に並べられたそのアンドロイドの姿は、まさしく彼が恋に落ちていたエミそのものだった。


 彼は気が遠くなるのを感じた。




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