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咲き誇れ!満開の色  作者: 白い飴
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第一話 引越し

例年よりも遅い桜シーズン


大和町立撫子中学の終業式が終わった。

別れを惜しむ者、泣きながら友達と写真を撮る者

また遊ぼうなと大声で叫ぶ者


「青春ですなぁ...」

彼等と同じ学校に通っていたのかと思うほど、達観している者


それが私、桜千鶴(さくら ちづる)


本当はもう家に帰りたいのだが、最後に皆で写真を撮ろうと泣き虫な担任が言いやがったせいで帰るに帰れない。


別に友達が居ないわけじゃないのだ。

中学生活3年間、紆余曲折あったがそこそこ楽しかった。

ただ、正直壁があるように思っている。


「そりゃ、お前が作ってるんだよ。」


「そんなことないよ!」


終業式の帰り道、幼なじみの岩本(いわもと) 蒼太(そうた)

は不安そうな顔でそう言った。


「千鶴はさ、空気が読めないじゃん。皆と壁を感じるって言うのはそのせいだよ。」


「何それ!?空気が読めないのは関係ないじゃん!」


私は少し苛立ちながら言い返した。


「その調子で高校で友達出来るのか...、俺は心配だよ。」


そう言いながら少し先の街灯の光を見つめる蒼太の横顔に見覚えがあった。


「私はね、選んでるの!上辺だけで友達になっても窮屈なだけでしょ!」


「人なんてね、絶対に分かり合えないの!共感するフリしても楽しくないでしょー!」


「私はありのままの私で居られる友達が欲しいの!」


「だから、作ろうと思えば友達作れるよ!?上辺だけだけどね!」


捲し立てるように私は蒼太の言葉を否定した。


蒼太はポカンとした表情でこちらを見ている。


「えーと、じゃあ俺はありのままのお前で居られるいい...友達?」


右頬を右人差し指で掻きながら蒼太は私に聞いてきた。


「そうだよ、当たり前じゃん。蒼太は私の数少ない友達だよ!」


「...そっか。」


蒼太は残念そうな顔をしていた。


...なんで残念そうなんだ?

思ってた反応と違って少し戸惑った。


蒼太の事だからいつものように右手の親指と人差し指を擦り合わせて照れ隠しをすると思っていた。

それに対して 何照れてんだよ! って、いじってやろうと思っていたのに...。


「あ、あのさ!」


「ん、どした?」


後ろから蒼太の声が聞こえて、振り向いた。

どうやら少し前に立ち止まっていたらしい。

緊張しているのだろうか、肩に力が入ってるように見えた。


「えーと、公園寄ってかないか?」


━━━━━━━━━━━━━━━


この公園に来たのは小学5年生が最後だったか。


あれから4年程経過したがあの頃とあまり変わっていないように思える。


滑っても楽しくなさそうな滑り台


小学校低学年の頃、必死に逆上がりを練習した錆びれた鉄棒


緑色のペンキの剥がれた木製ベンチ


そして、今私達が座っている藍色のブランコ...


静寂と共に聞こえるブランコの軋む音


「久しぶりだねー、この公園。」


謎の沈黙に耐えられず私は重い口を開いた。


「...うん。」


素っ気ない返事が来た。

呼んだのは蒼太でしょうが!


「で?何この沈黙。」


黙りこくっている蒼太に苛立ちを覚え、少し棘のある言い方をしてしまった。


「俺...引っ越すんだ。」


「...マジ?」


「うん。」


唐突過ぎて淡白な返しをしてしまった。


「どこに引っ越すの?」


「東京...。」


「東京!?めっちゃいいじゃん!」


日本人が1度は行ってみたい場所ランキング(私調べ)圧倒的第一位に輝く東京


「急だね、いつ引っ越すの?」


「1週間後...、親が仕事で東京行くから。」


「へー、そんなに急に決まっちゃったんだ。」


「...急じゃないよ、半年前から決まってた。」


「え?」


てっきり数日前に決まったことだと思っていた。

だって、半年前からなら...


「何で...その時言ってくれなかったの?」


雲で満月が隠れ、公園の街灯のみが公園を照らしている。


...どれぐらい時間がたっただろうか。

やがて、雲が晴れ満月が見え始めた頃


「他の皆には伝えてた。伝えてなかったのは...お前だけだ。」


「答えになってなくない?何で教えてくれなかったのか聞いてるの。」


「...怖かったんだ。」


ブランコから立ち上がりながら蒼太はこちらを向いた。


キィ...キィ...とブランコの軋む音があたりに響く


「お前が...どんな反応するのかが、怖かったんだ。」


口を震わせながら蒼太はそう言った。


「...意味わかんない。何が怖い訳!?」


私はそう言いながら勢いよく立ち上がった。

その反動でブランコがギシギシと音を立てながら揺れていた。


「お前が俺と同じ気持ちだったら良いなって思ってたんだ。

でも、もし違ったらって思うと...ダメだった。」


蒼太は私から藍色の瞳を逸らし、右手で髪の毛を弄りながらため息をついた。


「話がイマイチ見えてこないんだけど...同じ気持ちって何?」


私は、この時の自分の選択を今でも後悔している。


「千鶴...お前の事が好きだ!」


私はこの日を一生忘れることはないだろう。















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