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4話 玉の輿

「ぐ、あああああああっ!!」


「《ファイア》、《ファイア》、《ファイア》、《ファイア》」


「レイドボスを……本当に1人で倒しちゃうっていうの?」


 ヨルムンガンドはアオの手元から連続で放たれ続ける業火に絶叫。危機感からかアオと距離をとるため周囲に蔓延り残る業火の中に自ら突っ込んでいった。


 困ったことにそのせいあっという間に姿を見失ったけど……。まさかあんなに苦戦していたのが馬鹿に思えるほど一方的な状況になるなんてね。


 彼は、アオは一体何者? これだけ強かったら最初から……。そう、最初から本気で戦ってくれていたら怪我人も出なかったのに。


「アオ、あなたは味方? それとも――」


『ダメージ100000000超え。欲深い人間たちの身に報酬を分配付与。……。より高価、或いは希少な報酬を得たいならばヨルムンガンドを含む各場所に存在する特殊なモンスターの討伐に挑め。期限も報酬も有限だ』


 私の声を遮ってテリトリー内にこだました無機質な声。


 アオが私たちにとって味方かどうかは不明だけどきっとこの声の主、『舞姫』と呼ばれる存在からすれば動機はどうであれ自分の目的を達成してくれそうアオは味方、それどころか救世主にでも映るんだろうな。


「100000000でダメージ報酬か。攻撃はさほどだが『ルタ王国』にいた奴よりも生命力は高そうだな。最悪の場合1000000000以上の生命力を残している可能性も……。テリトリー内に踏み入るための条件を満たすのは面倒だが一度撤退することも考慮しなければな」


 テリトリー内に入る条件……。なるほどね。私たちはアオにとってその駒で、初めから共闘なんてするつもりはなかったってこと。


 でもだったら私だってアオのことを利用したっていいんじゃないかしら?


「……。ヨルムンガンドの生命力はあなたからすればそこまで多くないわ。残りは大体200000000ないくらい」


「!? お前、ステータスを覗き見れるスキルを保有しているのか? アンモニア臭いくせに」


「だからそれやめなさいってば! はぁ……。とにかくこれは私にとってもより多く報酬を受け取れる思いがけないチャンス。もしここで踏ん張ってくれるならあなたが最初から本気を出して戦っていなかったことに対して目を瞑ってあげるし、冒険者ギルドや撤退していった冒険者に対して一緒に言い訳してあげる」


「言い訳……。確かに俺は報酬を独占するため敢えてレイドボスや冒険者たちを泳がせたが、お前も含め死人が出ないように行動をしていた。冒険者ギルドや冒険者たちから批判されることはな――」


「あなたそれマジで言ってるの? ぶっきら棒な人だとは思ったけどまさかそこまでズレているなんて……」


「ズレている? まさか同じ冒険者に……。型にはまった人生を諦めた奴にそんなことを言われるとは」


「冒険者だって三者三葉。私まであなたと一緒にしないで欲しいわ。いい? 利益や理屈だけで人は繋がっていない。あなたが異常に強いのは分かったけど……。それだけじゃあ他のレイドボスに挑むことは難しいんじゃないかしら?」


「それは……」


「図星って感じね。……これも何かの縁。そこにいるレイドボスを倒してくれたなら今回の言い訳だけじゃなくて、あなたが今後レイドボスに挑戦する際私がパートナーとしてサポートをしてあげる。勿論レイドボスの情報を覗き見れるから戦闘にも参加はするわよ」


「パートナーとして一緒にレイドボスに挑戦……。偉そうなこと言っておいてお前も利益のことばかり――」


「私が受け取った報酬は全て開示、そこから得られる利益の8割をあなたに手渡す、いえ、その割合はあなたが勝手に決めてくれて構わないわ」


「なん、だと? お前良からぬことでも考えているんじゃ――」


「なんだかんだ命を助けてもらったんだもの、少しでも命の恩人にお返しをしたいと思うのが人間ってもんよ。それにこんな風に助けてもらった存在、命の恩人のことが気にならない女なんて……いないわけないじゃない」


「……。本当にこっちで取り分を決めてもいいんだな?」


「勿論よ」


「分かった。今後はお前にもろもろのサポートをしてもらう。交渉は成立だ」


 ……。やっっっっった!!! ちょっっっっっろいわ!!! ダメージ報酬は莫大らしいし、2割程度しか利益を受け取れないといっても元々数十人規模で分配されるものなんだからむしろプラスよ!


 ふふ……。私ももうすぐ30歳。あんな小芝居で可愛い初心な反応をしてくれるなら……。この際玉の輿を――


「うぐああああああああ……」


「ヨルムンガンドの鳴き声……。ってあれは……」

お読みいただきありがとうございます。

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