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2話 恥じらいの匂い

「え? 痛みが……」


 白い霧の中から男性の声が聞こえると酸による痛みが弱くなった。


 例えるなら熱めのお風呂に足を入れた時くらいに。


「デバフはレベルを段階的に重ねていくことで、消耗する魔力を大きく減らすことができる。本当は《スキルレベルダウン》に関しても同じようにしたかったが……」


 白い霧から姿を現した男性。その声は今さっき聞いたものと同じ。


 きっとこの人が助けてくれたのだろうけど……。


「あなたは……誰?」


「……。自己紹介……。俺は魔法使いの、いや、デバッファーのアオだ。……。そんなことよりこれに乗れ。一応熱に強いフレアボアの毛皮で作られている。弱まった酸、《アシッドアーマー》程度なら完全に遮断できる」


 男性、アオは声の低さとは裏腹に華奢な腕で羽織っていたローブを地面に向かって放り投げた。


 そして私は痛みから、その言葉を信じてローブの上へ。確かに酸は完全に遮断されていて、痛みも感じなくなった。


「感謝するわ。でも、アオ……。あなたの名前は今回の作戦のリストにはなかったはず……。それにそもそもA級冒険者としてあなたの名前を聞いたことが――」


「A級に昇格が完了したのは最近。そもそも移住してきたばかりということもあって、こっちの冒険者ギルド所属となったことを知っているのはまだギルド職員と直接対話をした副官、それにその時周りにいた奴らくらい。リストに関しては滑り込みだったことが原因だろうな」


「移住……。最近A級に上がった……。もしかして……。ねえ、あなたが移住してきたのは『ルタ王国』――」


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 アオに質問を投げかけようとした瞬間白い霧の中からヨルムンガンドの鳴き声が響いてきた。


 この絶叫ともとれる鳴き声は勿論悲鳴ではなく……。


「折角の獲物に逃げられて怒り心頭、か。ということはテリトリー内にいるのは俺を含めて2人。……この場合ダメージ報酬、討伐報酬は半分。勿体ないがその程度なら許容範囲だ」


「何言ってるの! あれだけの人数がいてダメージ報酬分すら無理だったのよ! それなのに2人でどうにかなるわけないでしょ! 《ホワイトブロウ》の効果が切れる前に逃げ――」


「ぐおぉぉぉ……」


「最、悪……」


 ヨルムンガンドは私の期待を裏切るように低く唸り白い霧の中から顔を出した。


「似た形容のモンスターは視覚、聴覚が弱い代わりに嗅覚が強い……。きっと原因はそれだな」


 アオが指差した先は私の足元。


 匂いって、それって……。というかそうだ私……。


「こ、このことは絶対に言わないで! こ、この歳で漏らしたなんてバレたら私……」


「もじもじしているだけなら少し離れてろ、アンモニア」


「ア、アンモニア!? その呼び方だけは絶対止め――」


「《アタックダウンⅢ》《マジックレジストブレイクⅢ》《ガードブレイクⅠ》《ガードブレイクⅡ》《スキルウィーキングⅠ》《スキルウィーキングⅡ》――」


「ぐあっ!!」


 アオがヨルムンガンドに対してデバフ魔法を発動。


 立て続けに付与されるデバフにヨルムンガンドは焦りを感じたのか、その巨大な尻尾を私たちに向かって振り下ろし始める。


 それは巨体からは想像できないほどの速さ。私はとにかく急いで回避に専念。だけど……。

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