冬の精霊
ある2月の寒い朝のこと
湖の桟橋まで出かけて行くと
冬が独りで遊んでいた
きみ、だれ?
どこから来たの?
話しかけてみると
冬は驚いたようにこちらを見た
一緒に舟遊びする?
そう言って小舟を揺らしたら
冬は嬉しそうに笑っていた
一週間経った
今度は晴れた空の下
雪道を歩いていると
向こうからやってきた冬とすれ違った
雪合戦してみる?
そう言って雪玉を作ってみせたら
冬は瞳を輝かせてうなずいた
その日は夕方まで外にいて
空に一番星が輝く頃まで遊んだ
また週末になった
雪まつりの日だった
広場には雪だるまがたくさん並んで
おとなもこどももにこにこしながら
あちこちを眺めたり歩いたりしていた
冬はこどもたちに混ざって楽しそうに
赤いマフラーの雪だるまを眺めていた
ねえ!
来ていたんだね!
一緒に見てまわろうよ!
遠くから頑張って声をかけていたら
冬はこちらを見ながら笑っていた
僕らは並んで雪だるまの品評会をした
きみはどこから来たの?
僕はそれまで疑問だったことを
思いきって尋ねてみた
冬は北を指して言った
あっちから北風に乗ってきたの
時が来たら戻るんだよ
それから僕らは
いろいろなことを話し合った
2月最後の週になった
だんだんと日が高くなって
寒くない日が増えてきた
雪の溶けてなくなった広場で
今年最初の朝市を眺めていると
遠くに冬の後ろ姿を見つけた
声をかけようとしたけれど
知らない少女と一緒だったから
何も言わないでそっと見送った
少女の薔薇色の頬には微笑みが浮かび
柔らかそうな髪が
陽射しにあたたかく照らされていた
寒さが振り返したある雪の日
夜になると、雪も雨も降り止んで
雲が晴れてきた
外の様子を見に出てみると
夜空には星あかりが満ちていた
雪原には冬がいつかの少女と踊っていた
きれいだと思った
でも僕は、冬が僕だけの冬じゃなくなるような気がして、なんだか苦しくなった
そうして3月になったある日
最後の日陰に残っていた雪が
透きとおった氷になって
今にも溶けようとしていた
冬は輪郭が消えそうになりながら
雪のところに立っていた
もう、いかなくちゃ
そう言って、冬は静かに笑った
とても悲しくなった
引き止めようとしたら
冬は笑顔を残して消えていった
もうすぐ春が来るよ
遊んでくれてありがとう
そう言い残して




