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罪人
「起きろ。305番」
そういって制服に身を包んだ看守がいつものように僕を牢の外から呼びつける。
ー305番。それが僕のここでの名前。ここでは人は名前ではなく番号で管理される。
罪人に名前など無い。看守に先導されて大きな食堂に着き、たいして美味くもない朝食をたべる。
それが終われば警務作業だ。毎日奴隷の如く働かせられる。作業といってもなにかを作ったりする訳じゃない。
質の悪い剣を一本持たされてモンスターのいる森の中に駆り出されるのだ。
魔法を使うことは出来ない。僕らの手に付けられた腕輪がそれを妨げる。毎日の如く死人がでる。文字通り命をかけて罪を償う場所。
それがここ。『エアルアナ刑務所』。
この異世界で最大級の規模の刑務所である。
死ぬわけにはいかない。絶対に元の世界に帰る。僕の刑期は5年。既に3年と2ヶ月が経った。
なんとしても生きてここをでる。
そんな思いを抱きつつ、僕は剣を振るった。