田村と川島と平本と
証券マン川島の2日目。百戦錬磨の部長田村から指示が飛ぶ。川島はいかに行動するのか。
2日目の前場が始まった。
11時を回った頃、
「川島ぁ。」
田村は川島を呼んだ。
「昨日の数字、どないなっとるんや。」
田村は問う。
「はい。現状500万のうち、300万は予約が入りました。残り200万は午後詰めていきます。」
田村は続けて問う。
「お前、平本さんとこ行ったんか?」
平本とは、川島の大口顧客である。
「はい、すでに電話ではお声がけしました。
結果は検討するとのことです。」
田村の目が見開いた。
「ドあほう!平本さんこそ一番に直接提案せんとあかん先ちゃうんか!今すぐアポ取って行ってこい!」
川島は田村の威圧に半ば圧倒されるように、
「承知いたしました。すぐに向かいます。」
そう答えた。
(平本さんは先月1,000万出してくれたばっかりですよ…汗そこに大口で提案なんて…バカげてる。)
内心ではそう思っていた。
(それに平本さんは電話に出ない時もあるし、どうすっかな…)
川島は少し考えを巡らせたのち、
(アポ無しで行くかぁ〜…平本さん、多分ご自宅にいらっしゃるだろうし。)
完全に腹を括ったわけでは無いが、川島は平本の家に行くことを決めた。
最も部長から行けと言われているので、最悪平本がいなくても、行ったことだけは報告すればいいかな、と川島は考えていた。