止まない雨はない。だが、晴れるとは言っていない2
あれから数年―― 学園の休みの日や長期休みの時、レナスはレインを連れて私のもとへと良く訪れるようになった。そういう時は必ずシアンを連れてくる。
レナスは私から魔法の理を学ぶようになってから、魔法の威力と魔法を相殺する力が増したという。
現状ではレイフォンより抜きん出ている。
それはそれとして、レナスが私のもとで魔法を学び、レインの為に解決策や魔導具を作ろうとしているのに、当の本人は魔力を持たない者からの知識も道具などいらない、と頑なに拒否し続けている。
時に罵倒され、貶されたりもして、その度にレナスは泣きながら申し訳ありません、と頭を下げて私に謝って来た。
アリシアがレインに見せる怒りは凄まじく、射殺さんばかりに睨み付けていた。私はアリシアを宥め、怒ってくれたことに感謝する。それよりもアリシアを馬鹿にすることが許せない。
そんな私を逆に宥める。自分の出自と育ちを考えると、とアリシアは笑うけれど……。その笑みが困ったような私に申し訳ないって笑み。だからそんな笑みをさせるレインにお灸を据えようかと考えて、どういったお灸を、と考えて「一度痛い目に遭わなければ人の痛みが解らないようね。解らぬなら、解らせて見せようホトトギス」と呟き、笑みが零れてしまったのを偶然に目撃された。
そう、セバスチャンに。
顔面を真っ白にしてひきつり、血相を変えて走り去った。
とある日、レナスが私のもとに一人で魔法を学びに来ていたが、後から護衛だとレインが訪れ、何故無能に魔法を学ぶのか、と始まり、罵倒に蔑みが酷くなった頃、セバスチャンがクロードを連れてきた。
他人を見下し、思い上がり粋がる。だが、己の研鑽をしようとしないレインに対してクロードの堪忍袋の緒がぶちギレた。
主の顔に泥を塗る行為、恥をかかせる行為。それはレナスが頭を下げ、教えを乞う私に対してもだ。私には本来レインに対して教えてやる義理はない。魔法研究は秘匿され、国家試験で研究成果を発表し、合格した後、世に広められる。言わば魔法研究者の切り札でもある。
それを教わりながらなんということだ、と、魔法騎士を目指す者が取る態度では無いこと。
それはもう、しばらくお待ち下さいの画面の後にモザイクが入るくらい、フルボッコにされ、ノックアウトさせられて気を失ったレインだったものがあった。クロードはレインの襟首を掴むと引き摺り、雨空の下に放り捨てた。
「主に恥をかかせた僕何ぞに存在価値はありませんから」
それだけ私たちに言い残して、お父様への報告書を纏めていた。
その日、レインは勘当され、何処にも居場所がなくなった。
この時の私には人狼のランとユナ、ハーフアールヴのラファーガが護衛に居た。