正しいの?
世界は不平等だ。何処まで行っても、どんなものを手にしようとも、有るものと無いものを見比べて、羨み、妬めば、平等なんてものは在りはしない。
そうして見てみると、そこに在るものは差別。貧富、文化、人種、美醜、才能、etc……。上げれば切りがない。
ただ、それは無くせはしないとしても、差はある程度埋められるし、程度差を認め、長所を認め、文化をリスペクトすれば、ある程度は抑止出来るはず。
たがしかし、自分たちと比べて下に見る者は常に存在する。それが現実だ。
――まぁ、私の前世がリスペクトから負けん気を発揮して、遂には魔改造して、その果に独自の技術を生み出すに至り、発展してきた国で育った故の価値観なんだろうけど。
それでも、差別は在ったのだけれど。
そして行き着いた答えが『ありのまま』という、長所や努力を否定するという歪な正義。
『ありのまま』で、なんて普通は居られないのだ。
『ありのまま』というのなら、やはり生まれ持った
貧富、文化、人種、美醜、才能で結局は差別が生まれて、『ありのまま』と『差別』は何処まで行っても平行線で交わることも、重なり合うことも無い。
『ありのまま』が認められた世界でどれ程の人間が理性的で善性を保てるだろうか。
『ありのまま』で何処まで清潔感を保てるのだろうか。
世界とは様々な努力の結果、成り立っているのだ。
――だけど、炎上を恐れて歪みを受け入れてしまったり、忖度した作品作りがされたりしてしまっていたのよね。
だからと言って努力と根性が全ての悩みを解決するとは思ってはいない。往々にして努力では解決しない理不尽さに満ちている。
――その現実が余りにも辛いのは理解出来るのだけれど……。
あくまでも私が言いたい事は『ありのまま』と言うのを怠惰の免罪符にはしてはいけない、ということだ。
――気を張っていたら疲れちゃうでしょう、とか、周りに合わせてたら疲れちゃうでしょう、ということじゃないかしら。
「非魔法士が魔法士に全てを押し付ける理由にはならない、か……」
「それ故の市井の子供たちの学舎か……」
「はい。知識が貴族や商人、技術者のものというのは重々承知しております。ですが、それでは先細りしてしまいます。伝統は伝統のまま、その先の可能性へと至ることが出来ず、何処かで他所の国や領地で生まれた技術によって駆逐されてしまうかもしれません。文明、文化とはある意味で侵略と同じなのですから」
まぁ、転生者の私が言えた義理では無いのだけれど。
と、言っても材料と、それを揃える資金集めが大変なんだけれど、そう簡単に知識チートツエーは出来ません。
市井の者は貴族様、魔法士様は何をしている、と酒場で言っていたりする。日々の溜まった鬱憤を愚痴ることで晴らす。
変わらない、と嘆く。
だったら変えるチャンスの場を創ろう。それを活かすも殺すも彼等次第。子を通わすかどうかは親次第。




